こんにちは、理事の鈴木@リベリアです。
リベリアは乾季の真っ只中で、ちょっと外を歩くものなら5分もかからない内に汗だくになるくらい暑い日が続いています。
さて、2月17日(金)・18日(土)にリベリアの首都モンロビアとマギビ州ウェアラ(映画が実際に撮影された場所)でそれぞれ開催された日本大使館主催の文化交流イベント「リベリア×日本:Out of My Hand映画上映会」に参加してきました。リベリアで初の文化交流イベントとのことでしたが、二日間三会場での観客数は約350名(!)と大盛況で、一般のリベリア人のみならずリベリア政府関係者やリベリア在住外国人等多くの人々の参加がありました。
このOut of My Hand という映画は、NYを拠点に活躍する日本人映画監督である福永壮志氏の監督・脚本によるリベリアを題材にした映画で、海外では2015年に公開されています。リベリアで撮影された国際的な映画では史上二本目(!)で、数々の国際映画祭にも出品されている作品です。この映画の撮影に携わったキャストやスタッフ、多くのリベリア人に観てもらいたいという思いから、リベリア初公開の本上映会に福永監督も参加して下さいました。
この物語はリベリアの主要産業の一つであるゴムのプランテーションで働く男(シスコ)がゴムの樹液を採取するシーンから始まります。シスコと同じくゴム農園で働く男たちは自分たちの生活を変えるために組合化を望みストライキをしますが、結局ゴム農園の圧力に屈する結果に終わります。人生を変えるべく一大決心したシスコは、家族をリベリアに残してアメリカで働く従兄弟を頼ってNYでタクシードライバーとして新しい人生を始めます。異文化や違う国で働くことに戸惑いつつも環境に順応していったシスコですが、思いがけずリベリア内戦時の知り合いが現れ、シスコは彼にしつこく付きまとわれ、アメリカでの生活が揺るがされていく・・・という内容のストーリー。
映画上映会だからみんな静かに鑑賞するのかなという私の予想に反し、リベリア人は映画の最初から最後まで大盛り上がりで、笑いが絶えず、シスコがリベリアからニューヨークに渡るシーンではお客さんから拍手が沸き、ラブシーンでは「イエーイ、ヒュー!!」、昔の内戦時の仲間から付きまとわれるシーンでは「NOと言って、シスコ!」等、みんな映画の中に入り込んで主人公とともに反応している姿がとても新鮮でした。
終わった後もたくさんの観客の方々から「映画は本当に素晴らしくて面白かった」と興奮した様子で感想を伝えてくれて、この映画上映会がリベリアで実現し、リベリアの映画がリベリア人に届いた瞬間に立ち会えたことをとても嬉しく感じました。
個人的には、ゴムの樹液を採取する労働者からそのゴムから作られたタイヤを装着した車を運転するタクシードライバーとしてのトランスフォーメーション、シスコの子どもがゴムでできたサンダルを父親に自慢した時、シスコが「お父さんがいつも採取しているゴムの樹液からできているんだよ」と伝えるシーンが印象的でした。
世界はもの凄いスピードでグローバリーゼーションが進み、どんなところにいても何でも手に入る便利な(だけどとっても複雑な経路で手元に届く)時代になりました。
この映画に出てくるゴムだけではなくて、毎日飲んでいるコーヒーにおやつのチョコレート、毎日身につけている洋服に携帯電話、あなたのお気に入りのジュエリーetc.
これらの元を辿ったらどこの誰にたどり着くのでしょうか?
そこには必ずシスコのような一人一人のライフストーリーが詰まっているのではないでしょうか。
福永監督はこの映画を通して人間が生きる強さや尊厳、ネガティブなリベリアでなく、ポジティブなリベリアを描きたかったと仰っていました。
その言葉のとおり、映画にはリベリアの美しい風景やセリフの随所に「あーそうそう、これリベリアっぽいな」と思わずニヤリとしてしまう「リアルなリベリア」がちりばめられていて、内戦やエボラ、貧困というステレオタイプで「可哀想な」リベリアでなく、人生の様々な荒波にもまれる中でも自分をそこの環境に適用させ懸命に生きる一人の男性をリベリアを舞台に描いてくれたことが、リベリアの発展を願う一外国人としてとても嬉しかったです。
この映画を通して、リベリアという国をもっともっと色んな人に知ってもらいたいと思います。
海外では既に公開・ネットで配信されていますが、日本でも一日でも早く公開される日を待ち望んでいます。
※詳細をもっと知りたい方はぜひこちらのHPへアクセスしてみてください。
※映画の予告編はこちらから視聴可能です。
http://www.outofmyhand.com/new-page/