はじめに
バーマ村はリベリア共和国のバポル州に位置する人口約2,500人の村です。村の生計はダイヤモンドの手掘り採掘と小規模農業が主ですが、村人は極度の貧困の中で生活しています。そこで、村の一部の住民(採掘者や農家)は、自分たちに影響を及ぼしている多くの問題の解決策を見つけるため、さまざまな目的に取り組む組合を組織しようとしています。ダイヤモンド・フォー・ピース(DFP)はこの取り組みを支援しています。
ダイヤモンド手掘り採掘者たちは、ダイヤモンド採掘では安定した収入を得られないと感じています。ダイヤモンド採掘は多くの人の収入源ですが、ダイヤモンドが見つかるかどうかまたいつ見つかるのかも分かりません。見つかったとしても、家族が暮らしていくには十分な量ではないことが多いです。そのためダイヤモンド採掘で生計を立てることはとても難しいです。こうした背景から、新規組合の組合員は副収入源として養蜂に関心を示しました。養蜂は効率的なビジネスであることから、ダイヤモンド採掘者を含め多くの採掘地域の住民にとって新たな収入源であることが判明しています。

ダイヤモンド・フォー・ピースは2024年6月にウィズアの養蜂普及員の指導能力の向上を図り、バーマ新規組合に養蜂を導入するため、養蜂基礎研修を開催しました。参加者は13名で、そのうち2名は同一州内にある別の村(キャンプアルファ村)からの参加者でした。キャンプアルファ村もまたバポル州に位置する手掘りダイヤモンド採掘村の1つで、採掘者たちは組合を組織しており、DFPが支援を行っています。

研修内容
この研修では養蜂の基礎に重点を置きました。養蜂が効果的かつ効率的に収入を得られる活動である一方で、期待するほど必ずしも簡単ではなく忍耐が必要であることを、参加者は理解しました。ハチは刺すこともありますし、予測不能であることを認識しなければなりません。初めて養蜂をする人の多くは、養蜂に対して非常に楽観的で、巣箱を設置してから数ヵ月でハチミツを収穫し収益を上げるという大きすぎる期待を持っています。研修では、養蜂はそのような自動的に収益を得られる活動ではなく、成功のためには忍耐と努力が必要だと理解してもらいました。
ハチの種類
参加者は、巣の中に女王バチ、雄バチ、働きバチの3種類のハチがいることを学びました。ハチは種類によって役割が違います。巣の中で女王バチはすべての産卵を行う母バチであり、働きバチに指令を出します。雄バチの主な役割は女王バチと交尾することです。そして働きバチはそれ以外のすべての仕事を行います。
巣箱作り
巣箱作りは養蜂の重要で基本的な工程であるため、参加者は巣箱の作り方を実践的に学びました。巣箱は、側面2枚、正面と裏面の2枚、底面1枚、巣枠でできています。養蜂家の好みで巣箱の大きさを決められますが、巣箱には標準的なサイズがあります。そのサイズで作れば、1つの巣箱から別の巣箱へ簡単かつ便利にハチの巣を移すことができます。そのため、参加者は標準的なサイズで巣箱作りを習い、実際に作成しました。


巣箱の設置
巣箱の設置とは、巣箱を平地や低木に配置する作業であると学びました。巣箱は、腐ったりシロアリに食べられたりすることを防ぐため、地面ではなく棒で作った脚の上に設置します。養蜂家は巣箱を安全な場所に設置し、壊されたり頻繁に場所を移したりしないようにしなければなりません。巣箱の破壊や頻繁な移動によりハチが巣箱から逃げ、養蜂家が養蜂への興味を失う原因になりかねないからです。巣箱を設置したら、その管理が始まります。

巣箱の管理
巣箱の管理とは、巣箱を設置したその日から養蜂を止める決断をするまで続く作業であり、養蜂家が養蜂をするうえで必ずやらなければならない作業です。養蜂家は、巣箱の周りをいつも掃除し、脚に巣箱を維持する十分な強度を持たせ、ハチが敵から襲われないようにしなければなりません。養蜂家の成功は、巣箱の設置後にいかにうまく巣箱を管理するかで決まります。

参加者の反応と進歩
参加者は、自分たちの生計向上につながる大きな機会を与えてくれたダイヤモンド・フォー・ピースに感謝し、研修から実際の養蜂体験まで全力で取り組んでいました。養蜂の工程に献身的に取り組む姿勢は、養蜂を通じて成功したいという熱意を物語っています。研修中、バーマ村の新たな養蜂家11名が巣箱を作成し、早速11箱を新しい養蜂場に設置しました。養蜂家は設置した巣箱を熱心に管理し、2024年11月現在、早くも6つの巣にハチが棲み着いています。これはダイヤモンド・フォー・ピースの経験上最も早く、この意欲的な養蜂家たちの成功の見込みが高いことを示しています。
体験談
ジョセフ(組合員)
はちみつを収穫するためにハチを人間が世話することができると聞いてはいましたが、信じられませんでした。はちみつは野生でとるものだとしか知らなかったのです。養蜂基礎研修は素晴らしい機会でしたし、養蜂についてもっと知りたいと思っています。はちみつは食べるだけでなく、傷を治す薬としても使えることを研修で学びました。研修からこれまでの実践経験をとおして、巣箱の日常的な管理とは、定期的に巣箱を見に行き、巣箱の中や周辺を掃除してハチのすみかとして良い状態にすること、またハチを惹き付けるために定期的に巣箱にハチが好きな匂いをつけることだと学びました。私は、もっと頻繁に巣箱を見に行き世話をするほど成功の可能性が高まると信じていますし、この村で養蜂を新たに始めた私たちがこれほど早く6つのハチの巣を獲得できた理由であることは疑いようがありません。
ハチは刺すこともありますし、予測不能なことが多いですが、ハチと友だちになって、ハチを扱うときにもっと自信を持てるように取り組んでいます。
私の夢は、養蜂を爆発的に増やし収入を大幅にアップし、家計の負担を軽くすることです。そのために、巣箱を1つから10へ、20へ、30へと増やしていくつもりです。また近い将来、大きく前進し始めたときに、他の人たちに養蜂を教えられるようになりたいです。
最後になりますが、私が養蜂家になる機会を与えてくれたダイヤモンド・フォー・ピースに感謝しています。そして、今後も研修を継続して実施してくれることを期待しています。

バンドゥ(組合員)
養蜂についてまったく知らなかったので、やりたいかどうかも分かりませんでしたが、基礎研修のおかげでやる気が出てきました。講師の1人であるビクトリアは、養蜂を通じて家計を助けていると研修で話していました。素晴らしい!このことを聞いて、すぐに自分にも同じことができると気付きました。もし養蜂が女性に力を与え家族に有意義な貢献ができるのなら、私は養蜂に真剣に取り組まなければならないと自分に言い聞かせました。
研修をとおして巣箱作りと設置の仕方を学び、また日頃の巣箱管理として、定期的な確認や清掃、敵を追い払う手助け、巣箱がハチにとって安全な状態であるようにしておくことなどを学びました。
モチベーションは高いけれど、ハチに遭遇する恐怖は悪夢でした。初めてハチに出くわしたのは、ハチが私の巣箱に住み始めた後のことで、驚くべきことでした。私が防護服を着ると、私の周囲を飛び回ったハチが私を刺せなかったのを見ると、私のその恐怖はほんの数分で消え去りました。ハチは防護服の上から簡単に刺すことはできないので、正しく防護服を着用すれば、養蜂家がハチを扱う際の自信を高められることに気付きました。

養蜂で、ハチミツだけでなく、ボディークリームや靴磨き用クリームや、もしかしたら他にもある便利なものなど、ハチミツに関連した製品からもたくさんのお金を稼ぎたいです。だから自分の巣箱が1つから100以上へ増やせるように頑張って働くつもりです。この機会を与えてくれたダイヤモンド・フォー・ピースに感謝していますし、これからも楽しみにしています。
冒頭写真:研修でウィズア村養蜂普及員(再左)が参加者たちと巣箱を作成する様子(ダイヤモンド・フォー・ピース撮影)