メキシコの金か、ジンバブエのダイヤモンドか:暴力により分断された採掘とビジネスの加担

鉱物取引は、中央アフリカ共和国やメキシコ、ミャンマーにおいて暴力を長引かせています。何もしないことに弁解の余地はありません。

【2016年2月29日 マイケル・ギブ(ガーディアン)】

中央アフリカ共和国の東部を流れる川に沿って、手掘り採掘労働者はダイヤモンドや金を探し求めています。彼らは、採掘のためのライセンス料を支払わなければなりません。しかし、そのライセンスは政府から発行されるわけではなく、武装勢力がこれらの川を支配し、隠れた富の恩恵を受けているのです。

紛争や不安定さにさらされている多くの国々でこのような状況が繰り返されています。中央アフリカ共和国やジンバブエにはダイヤモンドが、アフガニスタンやミャンマーには貴重な鉱石が存在します。コロンビアはタングステンメキシコは金コンゴ民主共和国には金の他にもタンタル、タングステンやコバルトも豊富です。

鉱石は金属となり、金属はパーツや部品へと変わり、携帯電話や車、コンピュータといった製品へと組み立てられていきます。量としてはごくわずかのように感じるかもしれませんが、何十兆ポンドもの価値のある国際取引へと積み重なっていくのです。

 

紛争の代償

世界で最も貧しい国々であるにもかかわらず、過激な武装勢力がどのように戦闘員を養い武装させているのか不思議に思ったことがあるなら、その答えの少なくとも一部はこれらの採掘現場やその周辺にあります。武装勢力は、強奪した鉱山を自ら運営しますが、採掘できるかどうかはあてになりません。そこで多くの場合、選択の余地なく生計を立てるために危険をおかすことをものともしない手掘り採掘労働者をゆすったり、違法に課税したりします。その他にも政府の保護がほとんどない地域の主要輸送路の通行料を徴収したりします。

違法取引は、表に出ない既存の市場へのルートがあるため、繁栄することができます。EU(欧州連合)などの主要市場へとつながる多くのグローバルサプライチェーンは、機密性が高いうえに規制が乏しいため、違法に採掘・取引された商品を正当なサプライチェーンに混入させ、そのような多くの鉱石を市場にもたらしています。

 

企業ができること

昨年、スイスのNGOベルン デクラレーションは、スイスの企業はほとんど金を保有していないトーゴ由来の金を何千キロも購入している、と発表しています。実際には、金の大半は、危険な状況で採掘されるブルキナファソ由来の金だとされています。そのようなリスクが浮かび上がると、企業は答えを求め変化を生み出す責任と機会を。

鉱物の供給源がリスクの高い状況下にある場合、企業も消費者も、十分な配慮を施すことと、ビジネス(供給源)を他の場所へ移すことを混同してはなりません。もし誰かがあなたの事務所に侵入したら、事務所を閉鎖し、従業員を解雇し、より安全な街に移るのではなく、少なくとも他の選択肢がなくなるまでは、警報機を設置することが責務なのです。

企業や政府が責任ある行動をとれば、鉱物取引は雇用の機会や投資をもたらし、国際取引に素晴らしい将来を約束します。しかしながら、このような将来をもたらすためには、サプライチェーンの両者が取引に応じなければならないのです。一方で恩恵を受ける人々は、もう一方でも同じように人々が恩恵を受けられるようにしなければなりません。見て見ぬふりをすることに言い訳はできないのです。

 

“Courtesy of Guardian News & Media Ltd”
※本記事は英国メディア「Guardian」ホームページに掲載されたものをDFPにて一部翻訳・抜粋・要約したものです。
原文:「Whether it’s Mexico’s gold or Zimbabwe’s diamonds, mining is riven with violence and business is complicit」
https://www.theguardian.com/sustainable-business/2016/feb/29/mexico-gold-zimbabwe-diamond-mining-conflict-business-complicit (2016年10月11日閲覧)
冒頭写真:リベリア共和国のダイヤモンド採掘現場(ダイヤモンド・フォー・ピース所有)