バイク事故という社会問題と、薄れつつあるエボラウイルス予防の意識

エボラウイルスによる脅威から解放されつつあるリベリアですが、ウイルス出現以前から続く、ある社会問題が人々を苦しめています。それは、「バイク事故」です。経済活動において大きな助けになるバイクですが、事故による手足の切断や、時には命を奪うほどの大事故を引き起こしています。リベリアではあまりに危険なためにバイクに乗る人を「自爆者」と呼ぶほどですが、生計のためにバイクタクシーとして運転している人の多くは、14~34歳の若い世代です。

リベリア政府はこの問題の深刻さを受けて、首都モンロビアにおけるバイクタクシーの通行を禁止するという方策を取りましたが、これには賛否両論があります。反対派の市民の主張は「人口の多いモンロビアでは、通常のタクシーだけでは足りない」「バイクタクシーの通行禁止は、若者の雇用機会を減らし、犯罪を助長させる」というものでした。バイクタクシーの運転手は、低所得者の職業であり、雇用が失われることによる治安の悪化を懸念しているのです(リベリアでは多くの住民が強盗やギャングに命や財産を奪われてきました)。

一方で、政府の方策に賛成しているのは、主に通常のタクシー運転手たちです。リベリアでは、バイクタクシーはタクシーの倍の料金です。それでも興味深いことに人々はバイクタクシーを選びます。何故なら、ひどい渋滞のためタクシーは遅れる事が多く、より速く移動できるのはバイクタクシーの方だからです。こういった状況の中で、両運転手の間には緊張関係が生じています。バイクタクシー運転手を殺そうと計画したタクシー運転手が、逆に車両を燃やされたという話もあります。一般市民の中にも、政府の方策は必要とする声もあります。日々多くの若者が命を落としたり、障害が残るような事故に巻き込まれている現状があるからです。

この問題は、エボラウイルス問題にも繋がります。痛ましいバイク事故などの現場ではリベリアの人々は感情的になり、「人との接触を避ける」「大人数で集まる事を避ける」という感染予防意識が薄れてしまうのです。例えば写真のような衝突事故現場では大きな人だかりが出来ました。涙を流している女性もいる中で、警官は人だかりをコントロールできなくなるといった状況が、リベリアではよく起きる事なのです。

数ヶ月前、リベリアでは人々は互いに接触することを恐れていました。接触が原因となってエボラウイルスに感染し、人が蟻のように死ぬのを見たからです。しかし今、ウイルスの脅威が去りつつある中で、人々は以前のような生き方に戻ろうとしています。多くの人々は握手をし、抱き合い、挨拶のキスをします。どれも感染のリスクが高まる行動であるにもかかわらず…。エボラウイルスが以前、多くの国で突発しそして再発した歴史を忘れてしまったかのようです。

これは深刻な問題です。政府も国際的な支援団体も、エボラウイルス根絶までは、感染予防の啓蒙活動を続けなければなりません。さもなければこれまでのエボラウイルスとの戦いに費やしてきた努力は水の泡となることでしょう。エボラウイルスとは、たった1人の感染者の行動如何によって、リベリアや隣国をも恐ろしい状況に陥れる、極めて危険なウイルスだからです。

A scene of Motor bike accident
事故現場に集まる人々

写真:サミュエル・G・コリンズ