新型コロナウイルス感染症緊急支援 布マスクを製作した二人のリベリア人女性

執筆:ダイヤモンド・フォー・ピース・リベリアスタッフ

概要

リベリアにおける新型コロナウイルス感染症拡大予防を支援するため、ダイヤモンド・フォー・ピースは、マギビ州カカタ市マンディゴクォーターの70の貧困家庭及びバポル州ウィズア村の採掘労働者家庭等に、新型コロナイウルス感染症緊支援物資を届けました。緊急支援物資には、蛇口つきのバケツ、地元で作られた布マスクと石けんが入っていました。私たちはカカタ市の2人の仕立て屋に布マスクの製作を依頼しました。私たちは、女性にも男性同様の平等な機会を与えることを目的に、女性の仕立て屋に注文することにしました。女性が稼ぐお金は、子どもや家族のために直接使われ家族の生活に多大な影響を与えるので、女性の仕立て屋を優先し、彼女たちと布マスク製作の契約を結ぶことにしたのです。この記事ではその2名を紹介します。

 仕立て屋エスターの人生

エスターは、37歳の女性で、マギビ州にあるペイ村で生まれましたが彼女のルーツは両親の出身地でもあるボン州にあります。1997年にエスターは、彼女のおじの家に住むために、カカタ市に引っ越してきました。それ以来彼女はカカタ市に住んでいますが、現在は独立して暮らしています。エスターは、これまで非常に恥ずかしがり屋でした。彼女のおじが、学校に通う機会を与えてくれましたが、エスターが極度の恥ずかしがり屋だったために、その機会を生かすことができませんでした。彼女には、中学3年生になる15歳の息子がいます。夫が他の女性のところへ行ってしまったため、息子が生まれた時から一人で育ててきました。女性一人で息子を育てる事は、非常に大変なことです。エスターは息子のために低賃金の仕事もしましたし、新しい洋服や他のものを買うのを諦めなければなりませんでした。何も食べずに過ごした日も多くありました。そして、2006年に地元の仕立て屋で見習いとして働き始めました。2010年の後半には、仕立て技術を磨くために、ノルウェー難民評議会(NRC)の縫製技術研修に申込み、2年後その研修を修了することができました。現在エスターは、小さいながらも自分の店で仕立て業を営み、年375米ドル(約4万円)の賃料も払っています。場所によって違いはありますが、この賃料はエスターが営んでいるようなお店を借りる平均的な金額です。彼女がこのお店を営み始めて3年になりますが、当初は賃料を払うために借金をしなければなりませんでした。今ではお店の売上から家賃を払えるようになっています。しかし、現在新型コロナウイルス感染症の緊急状況下で、彼女の事業は深刻な状況にあります。クリスマスや新学期始め、学校祭、結婚式のお祝いの時期に多い仕立てから得ていた収入は、新型コロナウイルス感染症により多くのイベントが中止されてしまったからです。

エスターは、自分の事業を拡大することを夢みています。様々なスタイルのアフリカンドレスや日用食品などを販売したいと考えています。彼女は、お店に多くの商品があれば、収入が増え銀行口座を開設し、貯金をすることができると信じています。エスターの収入が向上すれば、彼女は家族のために自分の家を建てることもできます。

 

エスターのお店の様子(エスター以外3人のうち2人はお客様、そしてマスクを着ている1人は、DFPリベリアの臨時スタッフ)(ダイヤモンド・フォー・ピース撮影)

仕立て屋オレサの人生

オレサはロファ州のコラフン地区で産まれた17歳の女性で、現在カカタ市にあるおじの家で暮らしています。彼女は、カカタ市内にある公立高校に通う高校2年生です。オレサは、難しいけれど数学が好きだそうです。オレサは、仕立て屋の仕事に興味を持ち地元の仕立て店で見習いとして働きだしました。仕事は興味深くて、やりがいがあると感じています。見習いの仕事で得た賃金は、おじとおばに渡し、食費やオレサの学費に使われています。オレサは、一人前の仕立て屋になりたいと思っています。高校を卒業したら、さらに仕立ての技術を磨こうと考えています。

コロナ禍での雇用

リベリアにおける新型コロナウイルス感染症の流行は、さまざまな方法でリベリア人に影響を与えています。例えば、民間や公共セクターで働く多くの人たちには、もはや賃金が支払われていません。消費者の消費能力が落ちてしまったために、商業ビジネスの売り上げは、落ち込んでいます。農民たちは都市封鎖のため、農産物を農場から市場まで運んで行くことができません。皆、これまでのような日常生活を送ることが難しいと感じています。仕立て屋にとって、布マスクを発注するダイヤモンド・フォー・ピースとの契約を確保することには多くの意味があります。リベリアで仕立て屋は、美しいファッションのドレスを作る人気の職業で、年齢に関係なく多くの人がこの職業で生計を立てています。しかしながら、この仕立て業は新型コロナウイルス感染症によって深刻な影響を受けています。新しい服の購入の優先順位は低くなり、限られた資金は家族の食費になります。ですから、エスターとオレサ、そして彼女たちの家族にとって今回の布マスク製作の依頼は大きな意味のあるものだったのです。

カカタ市で見習いとして働く店内で布マスクを縫製するオレサ

エスター:ダイヤモンド・フォー・ピースとのこの業務で貰ったお金は、私のお店の家賃を払うために非常に役立っています。ダイヤモンド・フォー・ピースが私に発注してくれて本当に嬉しいし、将来また仕事ができる機会があったらいいなと願っています。

オレサ: ダイヤモンド・フォー・ピースからの依頼で得たお金は、2つの目的に使います。1つ目は、学校が再開した時に学費に充てるため。もう1つは、家の食費のためです。マスク製作を依頼してくれてありがとう。

 

女性の地位向上は国づくりの基本です。リベリアには有名なことわざがあります。「男性への教育は、ただの個人への教育、女性への教育は、国全体への教育になる」女性に色々な機会を与えると家族全体に波及します。

今後も状況に応じ、ダイヤモンド・フォー・ピースは女性への機会の提供に努めて参ります。

 

冒頭写真:カカタ市にある自分のお店で布マスクを製作するエスター(ダイヤモンド・フォー・ピース撮影)