ダイヤモンド・フォー・ピースの新たな挑戦「コーチングプログラム」の開発・実施

こんにちは。ダイヤモンド・フォー・ピース(DFP)代表理事の村上です。

私達はリベリアで極度の貧困に苦しむ手掘りダイヤモンド採掘者達を対象に自立支援活動を開始しました。その一環として、コーチング・プログラムを開発・実施するために必要な資金150万円を集めるため、クラウドファンディングを行っています。
クラウドファンディングページ https://camp-fire.jp/projects/view/125234

手掘りダイヤモンド採掘の実態

私達は、2016年から2017年にかけ、手掘りダイヤモンド採掘の実態を把握するための詳細な調査を行いました(報告書はこちら)。その結果主に以下のことが判明しました。

採掘権保有者の年収の中央値は1044米ドル、採掘労働者の年収の中央値は300米ドル
・採掘権保有者、採掘労働者共に、ダイヤモンドを見つけ販売した時のみ利益が分配される。過去1年間に1つもダイヤモンドを発見できなかったと答えた者もいた。
・過半数の採掘者は、「サポーター」と言われる投資家に採掘費用の一部を支援してもらっている。ダイヤモンドが見つかった際、自分を支援するサポーターが提示する低い言い値で彼らにダイヤモンドを販売しなくてはならない。そのため、適正な利益を得ることができず、サポーターへの依存から抜け出すことができない貧困の悪循環に陥っている。
・各人が個別に働いており組織化されていない。そのためサポーター等の利害関係者と団体交渉をすることができない。
・ダイヤモンドの価値を評価することができない。そのため自分が発見したダイヤモンドをいくらで販売するべきかがわからない。
・1日の食事の回数は2回が最も多く、次いで1回。3回と回答した者はいなかった。
・訪問した6村のうち2村には小学校がない。

リベリアの手掘りダイヤモンド採掘の様子(DFP撮影)

採掘者と実際に話した中で最も頻繁に聞いたのが、「サポーターとの関係を断ちたい」「ダイヤモンドの価値を自分で判断できるようになりたい」つまり、そうすればダイヤモンドの販売価格を上げることができ、人間らしい暮らしができるという声でした。

惨状を訴える採掘者たち(DFP撮影)

ダイヤモンド・フォー・ピース(DFP)が考える解決策とめざす姿

下の図は、採掘者が陥っている上述の悪循環と価格交渉ができない主な理由を示したものです。

DFP作成
DFP作成

以下は私達が介入し解決を支援しようと考えている活動です。サポーターへの依存を断ち切ることを目標に、収入を上げるための効率的な採掘手法の研修、効率的な副業の研修の他、採掘者たちが組合として組織化し組織としての能力を向上させるための一連の研修を計画しています。最初の研修として、現在チームビルディング研修を開発しているところです。

DFP作成

DFPの介入案が成功した暁には、採掘者の収入が向上し、サポーターへの依存を断ち切り、法に則った採掘を行い、彼らが採掘したダイヤモンドを正規国際市場に流通できるようになります。

DFP作成

最終的に将来フェアなダイヤモンドを実現するには、採掘者たちが民主的かつ透明性のある組合運営を行えるようになる必要があります。言うのは簡単ですが、実際にこれを実現するのは大変なことです。実現には単に研修を開発・実施するだけではなく、日々の活動に寄り添うコーチングを通して彼らを勇気付け、継続して取り組んでいける土壌を醸成していく必要があります。

採掘者が自立することで、彼らの子ども達が学校に通えるようになります。(DFP撮影)

採掘者組合の運営を支援するコーチング・プログラム

ダイヤモンド・フォー・ピースのリベリア人スタッフがコーチとなり、毎月対象村を訪問し、彼らの組合活動の進捗を確認します。現在重点的に取り組んでいるのは、会合を行った時に話し合った内容を記録するための議事録を作成することです。採掘者たちは議事録等の記録を作成する習慣がありません。また、内戦があった影響で大人の半数以上は読み書きができません。そこで、なぜ議事録を作成する必要があるのか、誰が作成するのか、担当者がいない場合はどうするのか、どのように議事録を作成するかということをコーチしています。少しずつ彼らの技術は向上していますが、きちんとできるようになるには、まだまだ時間が必要です。また、少しでも進歩があった場合には評価し、彼らのやる気を高めるきっかけとするようにしています。

コーチング・プログラムで取り組む主な活動として、以下を考えています。

・組合の定期会合開催の習慣化
・組合員同士の信頼関係の醸成
・議事録作成の習慣化
・組合員会費納入記録作成の習慣化
・サポーター等、誰かの支援を受ける場合の条件の事前確認及び交渉と契約書作成
・ダイヤモンド販売記録作成の習慣化
・組合内の民主的な選挙の実施とリーダー層の任命
・組合の事業計画の策定
・組合開発庁への組合申請と必要条件のクリア

彼らにとって決して簡単な取組みではありませんが、組合として活動していくには欠かせない活動です。これらの活動を通して、組合運営に必須の能力を向上し、民主的な組合運営につなげていくことを目的としています。

対象村について

私達は、リベリア西部にあるウィズア村を対象に活動を開始しました。上述した実態調査後、候補村を4村抽出し、各村の個別の状況を調べ、ダイヤモンド・フォー・ピースの介入について採掘者や村人達と合意形成を図ってきました。その結果、私達の介入を望んでおり、かつ自主的に会合を開き自分達である程度の事を進められるウィズア村を対象村として選定しました。

ウィズア村で自主的に会合を開く採掘者たち(DFP撮影)

コーチング・プログラムを担当するリベリアのスタッフ

コーチング・プログラムは、ダイヤモンド・フォー・ピース・リベリアのウインストンが担当します。ウインストンはリベリアで複数のNGOのプロジェクトに従事後、2016年からダイヤモンド・フォー・ピース・リベリアに勤務しています。私達日本人スタッフと一緒に実態調査を行い、その後の候補村の調査や合意形成で大きな役割を果たしています。ウィズアの状況も熟知しており、採掘者や村人との信頼関係を作ってきましたので、コーチとして適任だと考えています。

ウインストン(DFP撮影)

費用について

今回協力をお願いしているコーチング・プログラム実施(1年間)にかかる150万円の内訳は以下のとおりです。

リベリア人担当スタッフ人件費 40万円
リベリア国内 首都から対象村への移動費用・宿泊日当 30万円
コーチング・プログラム マニュアル作成 10万円
日本人専門家の渡航費用 30万円
モニタリング及びプログラム改善にかかる費用 15万円
本クラウドファンディングにかかる費用(CAMPFIRE手数料、リターン等) 25万円

クラウドファンディングページ https://camp-fire.jp/projects/view/125234

リターンには、缶バッヂ、エコバッグ、DFPが今年公開する日本語字幕付短編映画の上映会チケット、チャリティコンサートチケット等をご用意しています。

さいごに

平和とはどのような状態のことを言うのでしょう?単に戦争が起こっていない状態のことでしょうか?私達ダイヤモンド・フォー・ピースは、平和とは「人が人としての尊厳を保っている状態」のことだと考えています。つまり、物理的に戦争や内戦が起こっていない状態のことではなく、誇りを持てる仕事をし、家族を養い、子どもに教育を受けさせることができ、自らの自己実現を追求できる状態が「平和」であると考えています。

私達がダイヤモンド・フォー・ピースの活動を始めた頃、多くの人々に「そんな難しいことできるわけない」と言われました。また、ダイヤモンド業界の方には「ダイヤモンドにはそんな問題は存在しない。何を言っているんだ!」と怒られたこともあります。

私達は自分達ができることを一つずつ積み重ねてきました。その結果、最近はそのようなことを言う人はおらず、逆に私達の活動に可能性を見出してくださる方が少しずつ増えてきたと感じます。これからも小さな歩みを一つずつ積み重ね、フェアなダイヤモンドが国際正規市場に流通する日を目指して努力して参ります。

応援の程、どうぞよろしくお願い申し上げます!

クラウドファンディングページ https://camp-fire.jp/projects/view/125234

 

冒頭写真:ウィズア村の手掘りダイヤモンド採掘労働者とその家族(DFP撮影)