「ブラッド・ダイヤモンド~ダイヤモンドをめぐるアンゴラの腐敗と苦悩~」公開!

アンゴラの手掘りダイヤモンド採掘労働者

2017年7月27日

2016年4月から1年以上にわたり、DFPのボランティア8名の翻訳プロジェクトチームが取り組んだ、「Blood Diamonds : Corruption and Torture in Angola」の日本語版「ブラッド・ダイヤモンド~ダイヤモンドをめぐるアンゴラの腐敗と苦悩~」が完成しました。

本書の舞台アンゴラは南部アフリカに位置し、世界第4位のダイヤモンド産出国です。本書は、アンゴラ国内でも特にダイヤモンド産出量の多い北東部2州にある採掘現場における政府・軍関係者、民間警備会社によるダイヤモンド採掘労働者や地域住民への暴力や殺人、人権侵害について、被害者の証言とともにまとめた実話です。

著者のアンゴラ人ジャーナリスト、ラファエル・マルケス・デ・モライス氏は、アンゴラ政府高官らにより名誉毀損等9つの罪で起訴され、2015年5月28日に懲役6ヶ月執行猶予2年の判決を言い渡されました(詳細)。

日本語版発刊にあたり、ラファエル氏からメッセージをいただきましたので、その一部をご紹介します。

「本書の日本語版発刊に対する日本の団体の関心にとても興味を持ちました。なぜなら、日本の状況に比べ、多くのアンゴラ国民が天然資源が豊富な土地を有しながらも、国家にとって最も重要で価値ある資源が国民であることを未だに理解していないという矛盾の中にいるからです。私は現地の手に負えない状況の解決に憂鬱になり、挫折を感じることもあります。そこでは、ダイヤモンドのために人々が死に瀕していただけでなく、最も重大なことは、アンゴラ政府が人々を人間以下のものとして扱ったことです。ダイヤモンド採掘地域で非常に目立つ、アンゴラ軍、警察、国家保安組織、与党の政府関係者などの権力者による暴力行為は日常的に目撃されています。

(中略)

しかし、ダイヤモンドがアンゴラ国民の血で汚されていると単純に考えないでください。人々の何が「間違っている」のかを単純に考えないでください。むしろ、人々が最も苦しい環境においても、自らを奮い立たせて人道のために尽くしていること、人々が虐待され犯罪者と何ら大差のないリーダーたちが存在する状況の中でも、自らの声を届けようとしていることに注目してください。自分の体験談を話してくれた被害者・目撃者や苦境に耐えながらも生き抜いてきた人々は、非常に勇気があり、苦しい状況に陥っても立ち上がれる人々です。人々の言葉から、正義を求める叫びが伝わると思います。

(中略)

2015年、私はダイヤモンド採掘地域の住民への暴力行為の首謀者であり、受益者である将官を刑事告発したことで告訴され有罪判決を受けました。本書は裁判の内容ではないにもかかわらず、裁判官は本書の出版を禁じ、本書に関するインターネット上でのすべての引用の削除を求め、さらに本書の自主回収までも要求しました。ダイヤモンド・フォー・ピースから本書の日本語訳の出版を依頼されたとき、私には抵抗がありました。なぜなら、本書の議題を非常に遠い国で取り上げる意義がわからず、誰も関心がないと誤解していたからです。しかし目が覚めました。私は、この日本語訳の出版が公然たる反抗に別の機会を与え、将官たちや人権擁護者を黙らせたいすべての人々に対して、私たちの声を抑圧できないと言えると思いました。本書は、裁判や有罪判決が何も私たちを脅かさないという証であり、他方でアンゴラの人権尊重と尊厳を求める声にもう一度活力を与える機会でもあります。」

本書が、より多くの方がダイヤモンドを取り巻く課題について知るきっかになればと思います。

本書(PDF版)は以下からダウンロード頂けます。
「ブラッドダイヤモンド〜ダイヤモンドをめぐるアンゴラの腐敗と苦悩〜」 ラファエル・マルケス・デ・モライス著
特定非営利活動法人ダイヤモンド・フォー・ピース監修
2017年7月

 

冒頭写真:アンゴラの手掘りダイヤモンド採掘労働者(ラファエル・マルケス・デ・モライス氏からDFPに提供)