オンラインセミナー「誰もが幸せになるダイヤモンドの実現に向けて」開催報告

webinar report

特定非営利活動法人ダイヤモンド・フォー・ピース(DFP)は、2022年6月29日にオンラインセミナー「誰もが幸せになるダイヤモンドの実現に向けて」を開催し、24名の方に参加いただきました。ウェビナーの様子はこちらからご覧いただけます。

【セミナープログラム】

  • 短編映画の上映「ダイヤモンドについて語ろう~採掘の代償を払っているのは誰?」
  • DFP活動報告:リベリアにおけるダイヤモンド原石評価基礎研修事業
  • ラボグロウンダイヤモンドは本当に環境に優しいのか
  • ウクライナ侵攻とロシア産ダイヤモンドをめぐる現状とは
  • 質疑応答

「ダイヤモンドについて語ろう~採掘の代償を払っているのは誰?」

本セミナー冒頭では、キンバリー・プロセス市民社会連合が制作し、DFPが日本語字幕を付した短編ドキュメンタリー動画「ダイヤモンドについて語ろう(原題:We need to talk about diamonds)」(約8分)を上映しました。この映画では、アフリカのダイヤモンド採掘現場で実際に起こっている様々な問題について採掘労働者やその地域に住む人が経験したことを語り、それに対してダイヤモンドを取り扱っている研磨企業やジュエリーデザイナーがこの現状に対して見解を述べています。

動画はこちらからご覧いただけます。

DFP活動報告:リベリアにおけるダイヤモンド原石評価基礎研修事業

DFP代表理事の村上よりDFPの団体概要及び4月に実施したダイヤモンド原石評価基礎研修事業の報告を行いました。この事業は世界銀行EPGS信託基金からの助成と、英国宝石学協会(Gem-A)、東京真珠株式会社から支援を得て実施しました。

ダイヤモンド原石
代表理事村上によるプレゼンテーション(撮影:ダイヤモンド・フォー・ピース)

DFPが支援するリベリア共和国西部のウィズア村を含めた17村のダイヤモンド採掘者に対して、ダイヤモンドの成り立ちや原石価値の評価方法の基礎について研修を行いました。参加者のほとんどは、ダイヤモンドが高価な鉱物であることは理解していても、カット・研磨されジュエリーになることを知りませんでした。また、ダイヤモンドの中でも特に高価とされるカラーダイヤモンドには価値がない、透明度の高いダイヤモンドには「水が入っている」など、誤った知識や迷信を信じていました。バイヤーが安価にダイヤモンドを購入するため、ダイヤモンドの知識を持つことを否定されてきた採掘者にとって、ダイヤモンドの価値を正しく理解する本研修は、彼らにとって目が開かれる体験となりました。

リベリアで研修講師を担当したベス・ウエスト氏も、「フェアなダイヤモンドであるためには、すべてのサプライチェーンにおいて情報の偏りがないことが必要」、「ダイヤモンドの価値の正しい知識が、採掘労働者が貧困から抜け出す力になる」と言及しました。

研修の様子
原石評価基礎研修の講師を務めたベス・ウエスト氏による講演の様子(撮影:ダイヤモンド・フォー・ピース)

ラボグロウンダイヤモンドは本当に環境に優しいのか

続いて、DFP鈴木より近年天然ダイヤモンドに代わるものとして話題のラボグロウンダイヤモンドに関する当会の見解(https://diamondsforpeace.org/natural-labgrown-diamond/)を説明しました。

ラボグロウンダイヤモンドは、「サステナブル」で「環境にやさしい」「エシカル」な合成ダイヤモンドとして話題と人気を集めていますが、実はラボグロウンダイヤモンドの半分以上は中国で生産されています。また多くの場合、工場における人権問題や廃棄物処理等の環境負荷については十分な情報開示がなされておらず、一概に天然だから環境負荷が大きい、ラボグロウンだから人権侵害がない等とは言えません。

ラボグロウンダイヤモンドの工場
DFP鈴木によるラボグロウンダイヤモンドに関するプレゼンテーション(撮影:ダイヤモンド・フォー・ピース)

ウクライナ侵攻とロシア産ダイヤモンドをめぐる現状とは

ロシアによるウクライナ侵攻を受け、ロシア産ダイヤモンドに世界の注目が集まっています。国際平和情報サービス(IPIS)の報告書に基づくウクライナ侵攻後のロシア産ダイヤモンドの現状について、引き続き鈴木から発表を行いました。

世界のダイヤモンドの1/3を供給するロシア産ダイヤモンドは、その多くが世界中のダイヤモンドのカット・研磨を一手に担うインドに輸出され、インド産としてグローバル市場に流通しています。唯一、ロシア産ダイヤモンドの輸入を禁止するアメリカの経済制裁は、世界的に複雑化したダイヤモンドのサプライチェーンにより、抜け道があるものとなっています。ロシア産ダイヤモンドからの収益の一部は軍事費に使用されている可能性が指摘されており、これは広義の「紛争ダイヤモンド」と言えます。

ラボグロウンダイヤモンドと天然ダイヤモンドが抱えるこれらの課題が解決し、「責任ある調達と製造」が更に前進していくためには、消費者一人ひとりの声が力になります。ダイヤモンドを購入する際は、「そのダイヤモンドはどこで採掘(製造)されたのか」「生産過程において人権侵害は起こっていないか」、「環境負荷はどの程度か」などの質問をして、自分が納得のいくダイヤモンドを購入することの重要性についてお伝えしました。

最後の質疑応答では、採掘組合支援に関する具体的な方法や、ダイヤモンド・サプライチェーンの問題に関して多くの鋭い質問があり、参加者のみなさんの関心の高さがうかがえました。

DFPでは、引き続きみなさんにダイヤモンドの課題や私たちの取り組みについて知っていただくために、このようなセミナーを実施していく予定です。

本セミナーの録画はこちらからご覧いただけます。