【2019年12月 キンバリープロセス市民社会連合ホームページ】
今日、キンバリープロセス認証制度の3年間の改革期間は意味ある変化を伴わずに終了しました。参加国が合意できたのは、制度の範囲とガバナンスに関する小さな変更点だけ。今回もまた、ダイヤモンド採掘地域で続いている人権侵害を効果的に防ぐことができなかったのです。この状態では、キンバリープロセス認証制度はいまだに、購入したダイヤモンドが「血塗られていない(注1)」ことを証明できません。
「議長国インドの下、ニューデリーで開催された2019年キンバリープロセス総会は、残念な理解しがたい光景でした」と、キンバリープロセス市民社会連合のジンバブエ拠点のコーディネーター、シャミソ・ムティシ氏は言います。「82の参加国は、規則や手続き、些細なことに関する苦痛な議論の中で自分たちを見失っていました。唯一合意できたことは、重要なことについては何も合意できないということだったのです。」
最大の問題は、認証制度の範囲を広げ現代の人権侵害を含む課題をとらえようとした試みが、これまで何度も失敗してきたことです。その結果、キンバリープロセスは、政府の転覆を企む反政府勢力から国家の利益を守ることしかできていないのです。
「参加国が具体的な行動や計画策定への努力を拒否したため、他の重要な改革も棚上げされてしまいました」とシャミソ・ムティシ氏は説明します。他の重要な改革には常設事務局やマルチドナー基金の設立が含まれ、いずれもキンバリープロセスの専門性、技術的能力、三者参加(注2)に関する重大な欠点を補うことを目指したものでした。
キンバリープロセスの参加者が、沈みゆくタイタニック号の上でデッキチェアを並べ替えるかのように、無意味なことで忙しくしている間も、市民社会連合に属する市民団体の支援を受けるアフリカの地域は、ダイヤモンドの富がもたらす負の側面に苦しみ続けています。人々の生計や環境への損害、そして、キンバリープロセスが紛争を予防するための制度であるにも関わらず、しばしば暴力や虐待も含みます。今回の総会では、キンバリープロセスがそのような問題を気にかけているという安心感を、被害に苦しむ地域に与えることができませんでした。同様に、人工ダイヤモンドは天然ダイヤモンドの購入よりも倫理的に優れた選択肢であると主張するマーケティング手法に対し、参加国は何も答えを示せませんでした。
ニューデリーで合意に至った数少ない重要な取り決めの一つは、中央アフリカ共和国におけるキンバリープロセスの規則を遵守しない地帯からの紛争ダイヤモンドの禁輸に焦点を当てたものでした。キンバリープロセスと中央アフリカ共和国政府は、中央アフリカ共和国における合法なダイヤモンド取引の促進を図るため、より柔軟なモニタリングの枠組みを構築することで合意しました。「市民社会連合として私たちは、中央アフリカ共和国当局に対し、この実験的取り組みを成功させ、詐欺やダイヤモンドの密輸を防ぐために内部統制を強化するよう求めます」とムティシ氏は強調します。
「この総会で至った結論は、深い失望を抱かせるものでした」とシャミソ・ムティシ氏は結論付けます。キンバリープロセスは理論上は三者(注2)で構成された制度ですが、実際には政府のみが発言力を持ち、経済的利益を超越することができないのです。
市民社会連合として私たちは、実際より制度の範囲が広く効果的なものであるかのように装う傾向のある、往々にして不透明なこの制度に引き続き注視していきます。しかし、キンバリープロセスが妥当性と信頼性を失い続ける中、ダイヤモンドをめぐるガバナンスを改善し、ダイヤモンド採掘地域の利益(注3)を守る真の解決策を見つけるためには、この硬直した制度の外に目を向けなければならないことはこれまで以上に明白です。
お問い合わせ先
キンバリープロセス市民社会連合コーディネーター(ジンバブエ環境法協会) シャミソ・ムティシ +263 7 742 169 56
DFP編集部追記
注1:血塗られたダイヤモンドとは、販売された収益が紛争・テロ・組織犯罪の資金源になったり、採掘の過程で人権侵害や環境破壊を伴うダイヤモンドのこと
注2:政府、市民社会、ダイヤモンド業界の三者
注3:経済的利益のみでなく、人権・環境保護の側面を含む利益
冒頭写真:2019年キンバリープロセス認証制度総会の様子
※本記事は「キンバリープロセス市民社会連合」ホームページに掲載されたものを、許諾を得た上でDFPにて翻訳したものです。
原文:「Conflict diamond certification scheme unable and unwilling to reform」https://www.kpcivilsociety.org/press/conflict-diamond-certification-scheme-unable-and-unwilling-to-reform/ (2020年7月24日閲覧)