ダイヤモンド・フォー・ピースは、リベリアのウィズアというダイヤモンド手掘り採掘地域で、2018年末から活動してきました。この記事では、ウィズアについて紹介します。
歴史
ウィズアは田舎にあり、リベリア西部のバポル州バーマ地区に位置し、リベリアの首都モンロビアから約150 km離れています。ウィズアはその中心であるウィズア村とその周りに点在する小さな16の衛星村からなります。歴史を紐解くと、1950年代初頭にリベリアのゴラ族の漁師がこの村を作りました。彼がこの地に来たとき、そこにはたくさんの川が集まっていたのです。川の近くに住むことで漁のために遠出する必要がなく、漁師にとって魅力的な環境でした。川と川の間に野営地を作り、その地を「ウィズア」と名付けました。「ウィズア」はゴラ民族の方言で「水に囲まれている」ことを意味しています。ウィズアは北側に突き出た半島に位置しており、西側はリベリアの六大河川の一つであるロファ川に接しています。この川はウィ・ベニー川と並行し北側から流れており、南側で合流します。ボトゥル川とウィ・ゲイ川は東側から西側に流れています。またウィ・マ・ウン川を始めとして、北側から流れ南側でボトゥル川と合流する小さな川もあります。
多くの川が集まっているこの地は漁に適した場所で、漁師とその家族は幸せに暮らしていました。他の人たちもこの地が暮らしやすいと知り、移り住むようになりました。こうして徐々に人が増えていきました。移住者には手掘り採掘労働者もいれば農民もいました。手掘り採掘労働者たちはすぐに、この地域は川があり魚が取れるから住みやすいということだけでなく、鉱物(主にダイヤモンドと金)の宝庫でもあることが分かりました。
採掘を始めてすぐに、採掘労働者たちは、この地域にダイヤモンドの鉱床があることを知りました。瞬く間にこの情報は広がり、分け前を得ようリベリアの15の州(すべての州)から人が殺到しました。採掘すればするほどダイヤモンドが出てきました。ウィズアにやって来た人々の多くは故郷に戻らず、ウィズアに永住することに決めました。この村は面積も人口も拡大し続け、現在では5,000人以上が定住しています。
住民の特徴
住民の大半はリベリアの別の地域から来ており、文化的背景もさまざまです。リベリア近隣諸国(ギニア、シエラレオネ、コートジボワール)出身の人もいます。ごくわずかですが、ガーナ、ナイジェリア、マリ、セネガル出身の人もいます。多くの人がダイヤモンド採掘のためにウィズアに住んでいます。
リベリアには15の州に16の部族がいますが、ウィズアにはそのすべての部族がいます。移住者はウィズアで人生の大半を過ごし、故郷に戻るつもりはありません。それにもかかわらず今でも、この地の最初の入植者であるゴラ族の中には彼らをよそ者と呼ぶ人もいます。移住者の子孫の多くはウィズア村で生まれ育ったため、もはやよそ者ではないと言い、ゴラ族の考え方を払拭しようとしています。
住民の識字率
1950年代後半からウィズア村には中学校がありますが、住民の大半は読み書きができません。ウィズアに限らず、リベリアの地方では読み書きできないのが一般的です。読み書きできない成人がダイヤモンド採掘のためにウィズアに移住してきたことと、その後の内戦により学校が閉校したことで、非識字率が高いのです。現在は、子どもたちの大半が学校に通い、識字率が向上してきています。
宗教
リベリアの2大宗教はキリスト教とイスラム教で、全国的に広がっています。しかし村によっては、一つの宗教(ほとんどがキリスト教)のみを信仰しているところもあります。ウィズアではキリスト教徒とイスラム教徒が半々の割合です。住民にとってはこの2つの宗教の平和的共存が重要です。住民は日常的に他の宗教に対して寛容な態度を取ることが習慣になっています。何かの会合で集まる際、その開始前後に神に祈る習慣があります。キリスト教徒とイスラム教徒の両方が集まるときは、集会の開始前か終了後のいずれかに、それぞれの宗教が交代でお祈りするようにし、互いに寛容な心を持ち、敬意を示しています。組合でも同じで、組合員の信仰する宗教の割合は、キリスト教とイスラム教が半々です。
住民の収入源と社会活動
当初は漁業に適した環境のため、人々がウィズアに定住するようになりましたが、徐々にダイヤモンド採掘が主要な収入源となっていきました。現在はダイヤモンド産出量が減少しているため、採掘労働者の中には生計を立てる代替手段として農業に目を向け、リベリアの主食である米や野菜を栽培している人もいます。また採掘費用を賄うための小さな事業を営んでいる人もいます。漁業で生計を立てている人は、ごく一部です。住民は社交的で、多くの小さな社会的グループを作り、グループメンバー共通の利益のために協力しています。また若者(少年少女)はスポーツに打ち込んでいます。主に少年はサッカー、少女はキックボールに夢中です。たまに大人たちもスポーツをして、若い頃を思い出しながら体を動かしています。このような社会活動を通じて、社会的な絆を深めています。この絆が平和的共存に大きく貢献しています。
ウィズアの自治システム
住民の文化的背景はさまざまで、信仰や生活様式も違います。しかし同じ地域で、文化や宗教の違いに関係なく平和的に共存する必要があります。平和的共存を実現する方法として、部族ごとに部族長を決め、部族長が部族を治めています。つまり、何か問題が発生した場合、部族長が部族内の問題解決にあたります。部族長の手に負えない問題が発生した場合、村のすべての部族長たちの長である長老が解決にあたります。長老の手に負えない場合、村長が解決にあたります。ウィズアには総村長がおり、また衛星村を治める村長もいます。各村長がそれぞれの小さな村を治めていますが、自分の手に負えない問題は、総村長に報告します。また長く滞在している外国人も村に溶け込んでいます。外国人の中でリーダーを決め、リーダーが外国人グループを治めています。自治システムを強化するために、村の自治全般を監督するリーダーもいます。村長が村のトップであり、すべての小グループのリーダーを統率しています。性別や年齢ごとにグループリーダーがおり、そのリーダーたちが村長を助けています。例えば、青少年の問題を扱う青少年リーダー、高齢者の問題を扱う高齢者リーダー、女性の問題を扱う女性リーダーなどがいます。
以前、ウィズアの衛星村の一つで猟師が殺人を犯しました。その殺人は偶発的なものと思われましたが、調査し、適切な刑罰を科す必要がありました。殺人事件は州犯罪で、州裁判所が扱う事件です。州裁判所に報告する前に、まずは殺人現場の事態を収拾する必要がありました。事態を収拾するために衛星村の村長は殺人容疑者を拘束し、総村長に身柄を引き渡しました。総村長は部族長と協議し、裁判のために州都ボポル市の裁判所に事件を報告し、容疑者を引き渡しました。これがウィズアの自治システムであり、リーダーが状況に対処できない場合、次の上位者に対処を委ねます。
住民の紹介
アイザック(組合員、キリスト教徒)
私は鉱物・エネルギー省の職員でした。1999年に上級巡視員として働くためにここへ来ました。3年前に引退しましたが、ウィズアに住み続けています。ここにこれほど長く住むつもりはありませんでしたが、来てすぐに村に馴染み、妻とも出会いました。ウィズアは住みやすい場所です。住民同士の仲が良く、出身に関係なく誰もが尊重されます。また村の規則を破らず、他人の権利を侵さない限り、どんな生き方や働き方をするのも自由です。引退後にダイヤモンド採掘を始めましたが、最近は、ダイヤモンドを見つけるのが簡単ではありません。今の生活は本当に厳しいです。
アイーシャ(組合員、イスラム教徒)
私はウィズアで生まれ育ちました。この村は恵まれていると思います。神がさまざまな生計の糧を与えてくれているためです。例えば、川、森、ダイヤモンド、金です。これらすべてが、ウィズアを暮らしやすい素晴らしい場所にしています。ダイヤモンド採掘がウィズア村での主な生計を立てる手段ですが、それだけではありません。土壌が豊かなため、消費用や商業用にさまざまな作物を栽培し、森で生計を立てることもできます。川もまた、生計を立てるための有力な代替手段です。住民の中には漁業で生計を立てている人もいます。
もう一つ、ここは首都(モンロビア)に近い*です。住民にとっては、首都から物を運んでこれるという利点があります。
村の住民との付き合いは楽しいです。住民は穏やかで協力的です。私は本当にこの村と住民が好きです。
*首都からウィズア村までは未舗装の道を車で約6〜7時間かかりますので、「首都に近くない」と思うかもしれません。しかし首都に行くのに丸1日以上かかる村がリベリアには多いため、ウィズアは首都に近いと、彼女は言います。
まとめ
ウィズアは田舎の村ですが、リベリアの他の多くの農村とは異なり、その自治システムは複雑です。ウィズアの自治システムによって、住民は宗教や文化の違いを超えて平和的に共存できています。河川が多いため、住民は新鮮な魚を味わい、川の美しい風景を楽しんでいます。
冒頭写真:「ロファ川の眺め」(DFP撮影)