ダイヤモンドの世界において「本物が貴重」であるならば、信頼できる供給源はなおさら貴重である

【2016年6月17日(グローバル・ウィットネス)】

ダイヤモンド生産者協会が最近始めた「本物は貴重。本物はダイヤモンド」という新しい広告スローガンは、新世代の消費者であるいわゆる「ミレニアル世代」を取り込むことを新たに目指しています。しかし完全な見出しを求めるあまり、広告制作者はすぐ目の前にあるものを見逃しているようです。

スローガンは、ダイヤモンド生産者協会が、怖いもの知らずのミレニアル世代の新しい世界について調査した研究の成果であり、調査メンバーの中には最大のダイヤモンド企業の社員もいます。研究結果によると、移ろいやすく、仮想の世界に生きる世代であればあるほど、永続的かつ本物のつながりは、よりいっそう理解しにくく、同時に、魅力的なものとなることを示しています。スローガンが提案するところでは、ダイヤモンドは、このような誰しもが求める質を体現しています。しかし、最も社会的な意識を有するミレニアル世代が本当に貴重なものを求めるのであれば、ダイヤモンドが本物かどうかを問うのではなく、その供給源について問うべきです。

ダイヤモンドの価値の高さは、その入手可能性と密接に関係があります。実験室で生成された、いわゆる人工の合成ダイヤモンドの登場により、需要と供給の法則に則り、価値を最高レベルにまで高める手段として、供給を注意深く管理してきたダイヤモンド業界はかなり狼狽しています。ちょうど先月、ボツワナで採掘され「星座」と名付けられた原石が6,300万米ドルで売却されました。それでは実験室で生成されたダイヤモンドはどうでしょうか、そういったダイヤモンドが市場に溢れる可能性はあるのでしょうか? 経済の基本原則として、供給が増えれば価値は下がります。ダイヤモンドの希少性と価値が密接に関係しているという見方が、ダイヤモンドについての状況をより悪化させています。全てを考慮すると、ダイヤモンドの価値は下落するとジュエリー業界は考えています。

その結果、人工ダイヤモンドは採掘されたダイヤモンドと同じ成分の「本物」であるにもかかわらず、アメリカの宝石学会によって非自然的に作られたようなものは、そのほとんどが真正でなく二等級品とされました。そこには「本物は貴重。本物はダイヤモンドである」というスローガンの所以があります。採掘された「天然の」ダイヤモンドは、新興の人工ダイヤモンド業界で批判を受ける一方、より人工的な世界では本物として扱われます。

ダイヤモンド業界が何を目指しているのかはわかりますが、ミレニアル世代がユニークである特性、つまり社会的意識を強く持つ世代であることが最も際立った特徴の一つであることを広告制作者でさえ忘れているようです。これは、アフリカの残忍な紛争においてダイヤモンド売買が紛争継続の資金源になっていたという発表に対し、深刻な打撃を受けたダイヤモンド業界に対する特別な懸念です。グローバル・ウィットネスは、アンゴラの長期にわたる内戦へのダイヤモンドの役割について、世界に関心を向けさせた最初の組織の1つです。またそれから10年以上経ってから発生した、中央アフリカ共和国の内戦においても、対立する両組織はダイヤモンド取引から利益を得ていました。

ハリウッド映画「ブラッド・ダイヤモンド」により広く知られることとなった「紛争」ダイヤモンドの問題に対処するために設立されたキンバリープロセスは、ジンバブエのマランゲ鉱山と特定の反政府軍の結びつきについてのグローバル・ウィットネスの告発により、その信用への疑問が高まり、一般消費者に不快感をもたらしました。社会的な意識を持つミレニアル世代は、そのダイヤモンドが、採掘から商品化されるまでの間に無数の人権侵害をもたらす、腐敗したものではないとする保証を求めます。彼らは、実際に何かしら社会に貢献していると思いたいのです。

ダイヤモンド業界は、特にダイヤモンドが最も必要とされている所で、供給者に真の利益をもたらすことを保証できるでしょうか? 確かにそれは社会的意識を持つミレニアル世代をよりいっそう引きつけるものです。ダイヤモンドを購入することで、採掘に携わる地域コミュニティの持続的な生活の支援ができること、またダイヤモンドの採掘産業が基本的なサービスへのアクセスが保証されていない開発途上国において、健康や教育へ資金を供給していることがわかることは素晴らしいことではないでしょうか。これは、実験室で作られた人工ダイヤモンドにはできないことです。

例えばボツワナでは、ダイヤモンド産業がGDPの3分の1を占めており、国の開発を牽引しています。残念ながら、ダイヤモンドの取引は常に支援すべき原産国を支援しているわけではありません。業界の受け入れがたい面の一つですが、振替価格により、ダイヤモンドが本当の価値を付けられるのは、原産国を出てからであり、仲介業者に多くの利益をもたらし、正当かつ本当に必要な収入を原産国から奪っています。

ミレニアル世代や他世代の消費者が、より信頼できる取引への支援を望むのであれば、彼らは小売業者に対して紛争ダイヤモンドに対するポリシーを提示するよう求めるべきです。この一部として、小売業者は、サプライチェーンに人権侵害等が生じていないかをチェックするためのデューデリジェンスやリスクが生じた場合の対処手順について公開すべきです。業界団体はサプライチェーンから採掘業者を装った合成ダイヤモンド業者を淘汰する手段としてデューデリジェンスを推進するようにすべきです。人権侵害のリスクをチェックすることは、急激な変化を伴うような困難な取組みではありません。

責任を持って採掘されたダイヤモンドは、社会的意識を持つミレニアル世代にとって魅力的なものです。これは、Win-Winの関係になりますが、そこに到達するまでの道のりは長いです。本物は貴重だろうか? 信頼できる供給源は未だ貴重であり、言葉通り本当の意味でとても価値あるものです。

 

※本記事は、国際NGOグローバル・ウィットネス(global witness)ホームページに掲載されたものを、許諾を得てDFPにて翻訳したものです。日本語翻訳に関する表現や間違い等の責任はDFPにあることを申し添えます。

原文:「IF “REAL IS RARE” IN THE DIAMOND WORLD, RESPONSIBLY SOURCED IS RARER STILL」 https://www.globalwitness.org/en/blog/if-real-rare-diamond-world-responsibly-sourced-rarer-still/(2016年10月9日閲覧)

冒頭写真:リベリア国のダイヤモンド採掘の様子(ダイヤモンド・フォー・ピース撮影)