ウィズア村は、ダイヤモンド・フォー・ピースが最初に活動を開始した村です。ウィズア村には多くの小さなサテライト・ビレッジ(ウィズアが管轄する村)があり、その一つがブペです。住民は主に手掘りダイヤモンド採掘や稲作農業で生計を立てています。
ブペの歴史
ブペは、米とサトウキビ農家であったゴジさんと妻のパナさんという夫婦がつくった村だといわれています。夫婦は1960年代初頭からウィズア村に住み、1970年代後半に農業用の肥えた土地を求めて現在のブペに移住しました。当初、彼らはブペに永住するつもりはなく、数年間毎日ほぼ4時間かけて農地と家を行き来していました。しかし、その土地が農業に適していることが分かり、1970年代半ばにブペに定住することにしました。その地が豊かであることを知った他の人々も村に住み始め、次第に村の人口は増えていきました。
1982年後半、ロジャーさんが手掘りダイヤモンド採掘を始めました。彼は税徴収者であり、後にブペに定住する一人です。同年、彼は0.4カラットの最初のダイヤモンドを発見しました。この情報が広まると、多くの人々がブペに来て採掘を始め、多くのダイヤモンドを見つけるようになりました。1990年代に始まった内戦によりブペの人々は他地域に避難しましたが、2000年代初頭に村に戻り2004年に採掘活動を再開しました。それ以来、人々はブペに住み続け、ダイヤモンドを採掘し、人口は約500人まで増えています。農家がこの村をつくりましたが、ダイヤモンド採掘が住民の主な収入源になっています。
The Journey前号でお伝えしたように、ダイヤモンド・フォー・ピースは、米国の採掘専門家をウィズア村に講師として招き、2022年12月に第一回責任あるダイヤモンド採掘基礎研修を、2023年5月にフォローアップ基礎研修を行いました。採掘者たちがダイヤモンド採掘を事実や科学に基づいて理解し、責任をもって採掘に従事するよう、今回2023年12月にブペで実践基礎研修を開催しました。バポル州の3採掘地域(ウィズア村、バーマ村、キャンプアルファ村)から16人の採掘権所有者や採掘労働者(採掘権所有者は採掘免許所有者を意味し、採掘労働者はダイヤモンド採掘のために地面を掘る人を意味します)が3日間の実践研修に参加しました。ダイヤモンドの選鉱や地図作成に特に重点を置き、ダイヤモンド採掘の一連の流れについて学びました。
以下の内容を研修で特に重点的に取り上げました。
ダイヤモンドシュートを用いた選鉱
ダイヤモンドシュートは、ダイヤモンドの疎水性を利用し現地で利用可能な材料を使って講師が試作した簡素な機械です。砂利からダイヤモンドを選鉱する処理の際に使用します。私たちは、2023年5月の責任あるダイヤモンド採掘基礎研修で初めてこの機械を導入しました。また今回ブペで実地演習を行いました。
ダイヤモンドシュートについての説明をした後、参加者は選鉱済みの砂利を使って使い方を練習しました。また、ダイヤモンドシュートを使用することによって、選鉱済みの砂利の中から従来の方法では見つけられなかったダイヤモンドを見つけることができるかもしれません。講師は参加者たちに対して、研修後もシュートを使うよう勧めました。
採掘地図
参加者たちは地図作成の重要性を学びました。採掘地図を作成し、地形や過去にダイヤモンドを見つけた場所の特徴等、重要な情報を記録することは、探鉱や探査に役立ちます。また採掘者たちが次に掘る場所を検討するのにも有用です。地図作成の基礎を学んだ後、参加者は個々に地図を試作しました。講師は参加者たちに、研修後各自の鉱山の採掘地図を作成するよう勧めました。
DFPから見ると、リベリアの人々は普段地図を使用しておらず、地図に関する知識や理解はまだ非常に乏しいです。私たちは、彼らが地図の使用に慣れ、学んだことを実践できるよう支援していきます。
参加者の感想
ラファエル(ブペ村のダイヤモンド採掘労働者)
私はダイヤモンド採掘に関して新しいことを学び、自分の今の知識を向上させたいという思いで、この研修に参加しました。約5年間採掘労働者として働いていますが、自分の知識がまだ不十分であることを実感しました。トレンチ探鉱(溝を掘る手法)や、採掘地図作成について何も知りませんでした。探鉱についての自分の知識は探査と区別がついておらず、理解は乏しいものでした。この研修で、私は地図作成、トレンチ探鉱やそれらの重要性について学ぶことができました。また探鉱と探査の違いも学べ、両方の作業が採掘の一連の流れの重要な段階であることも学びました。私が学んで一番よかったと思うことは、トレンチ探鉱です。これはとても印象に残っています。
トレンチ探鉱によって、採掘労働者がダイヤモンド鉱床を賢く探鉱することができ、採掘作業の労力とコストを減らすのに役立つことを学びました。また土壌へのダメージを減らすことも学びました。ダイヤモンド・フォー・ピースがブペでこのような研修を行ってくれて嬉しいです。今後は、学んだ知識に自信を持ち、その知識を自分の仕事や人生に生かしたいです。また友人にもその知識を教えて、彼らも利益を得られるようにしたいです。
ファトゥマタ(ウィズア村の女性採掘予定者)
私はこの研修に参加できて嬉しいです。研修中に私が学んだことは、賢く責任をもって探鉱を行うと、少ない労力と費用で多くのダイヤモンドを見つける機会が増えるということです。私が採掘を始める際には、一緒に働くダイヤモンド採掘労働者に知識を教え、実際にその知識を活用してもらうようにします。今回の研修を含め多くの研修について、ダイヤモンド・フォー・ピースに感謝したいですし、私たちの地域でこのような研修をもっと実施してほしいです。
トミー(ブペ村の男性ダイヤモンド採掘労働者)
私は約10年間ダイヤモンド採掘労働者として働いていますが、採掘の知識が不足しています。この研修は自分の知識の向上にとって良い機会となりました。大地は多くの物理的な過程により、時間とともに移り変わるということを知りました。何百年も前は現在なかった場所に川があり、ダイヤモンドがいつも最後には川に行き着くことを考えると、採掘者は川がかつて存在していたという痕跡を示す場所でダイヤモンドを探すのが良いと思いました。また、採掘地図を作成したり、採掘現場の重要な地点に印を付けることで、採掘者は次に注目すべき地点の候補を記録することができることも学びました。最後に、あらゆる所に穴を掘ることは悪い採掘方法であることも理解しました。穴が埋められないまま放置されることは、土地に悪影響を与えます。だから、あらゆる所に穴を掘るのを防ぐために、小さな溝を掘り(トレンチ探鉱)、より多くのダイヤモンドを見つけられる兆候を探すことが大切です。溝を掘って集めた情報から、次に掘る場所を決めることができます。自分の採掘作業を改善するためにこの知識を活用したいです。
おわりに
参加者はこの研修をダイヤモンド採掘の知識を増やし、利益を最大限にする可能性を高めるための研修だと理解しました。彼らは研修前に思い描いていたように、講習や実践演習で教えられた内容にワクワクしていました。また実践演習がとても重要で、講習をより理解するのに役立つという声が聞かれました。参加者たちは積極的に研修に参加し、多くの質問をし、答えがすべて合っているわけではなかったのですが、多くの講師の問いにも答えました。彼らの様子や参加率から、内容をある程度理解できていることが分かりました。今後、彼らが研修で学んだことを実践することが重要なことです。
冒頭写真:採掘地図セッションの様子(ダイヤモンド・フォー・ピース撮影)