カメルーンのダイヤモンド業界:小国の大きな課題

【2021年9月3日 ジャフ・バメーニョ、クリスチャン・アナング、ハンス・メルケト(国際平和情報サービス(IPIS)】

数十億ドル規模のダイヤモンド産業の中で、カメルーンはとても小さなプレーヤーです。平均年間生産量は約2,000カラット(26万米ドル相当)です。これは、世界全体での年間平均生産量である1億3,500万カラット(127億米ドル相当)の0.00002%にすぎません。それにもかかわらず、カメルーンのダイヤモンド産業はここ数年、重大な局面を迎えています。というのも、隣国の中央アフリカ共和国(CAR)から紛争ダイヤモンドがカメルーンに密輸されているからです。

 

紛争の絶えない隣国

2013年のクーデター以降、中央アフリカ共和国では内戦が続いています。同国はキンバリープロセス認証制度(KPCS)によりダイヤモンド原石の輸出禁止対象国となっていますが、反政府組織がダイヤモンド採掘や取引を支配し今でも活動資金を得ているという報告があります。紛争ダイヤモンド(※)がダイヤモンド原石の主要な商取引に入らないようにするため、KPCSは2003年に発足しましたが、現在、中央アフリカ共和国が唯一のダイヤモンド原石の輸出禁止対象国です。しかし、中央アフリカ共和国への禁輸措置にもかかわらず、同国でのダイヤモンドの採掘は継続しており、推定10~15万人の労働者とその家族の生計の糧となっています。

(※)紛争ダイヤモンドとは、反政府勢力などが合法政府を弱体化させるために、自身の活動の資金源として利用するダイヤモンド原石のことです。

 

実際のところ、禁輸措置によって、武装勢力や国際犯罪組織の関与の増加とともに密輸が横行し、中央アフリカ共和国のダイヤモンド取引において常態化するようになりました。2015年にKPCSは禁輸措置を部分解除しましたが、密輸の拡大は止まりませんでした。中央アフリカ共和国のダイヤモンド採掘の半分は、西部の8つの地域で行われていますが、毎年推定30万カラット(全ダイヤモンド原石の90%)が密輸されています。国連安保理の中央アフリカ共和国専門家パネルやNGOの報告では、カメルーンが中央アフリカ共和国産ダイヤモンドの密輸の主要拠点と言われています。

 

キンバリープロセスの統制

キンバリープロセス認証制度の構築・組織化・機能に関する制令No. 2011/3666/PMの採択後、カメルーンは2012年6月にキンバリープロセスに加盟しました。これは中央アフリカ共和国で内戦が勃発する少し前のことでした。カメルーンと中央アフリカ共和国の国境は729 kmにわたり、ダイヤモンド鉱脈は国境をまたいでいます。両国を隔てるボンベ川の両岸で、ダイヤモンドの手掘り採掘が行われています。このような観点から、2013年にキンバリープロセスが中央アフリカ共和国に対してダイヤモンドの禁輸措置を課したことで、カメルーンの国内統制がすぐに試されることになりました。

国内統制はキンバリープロセス認証制度の最低要件の1つであり、キンバリープロセス加盟国は、紛争ダイヤモンドが確実に輸出入されないように国内統制をする必要があります。キンバリープロセス認証制度が有効であるかどうかは、82ヵ国を代表とする56の加盟国・地域(欧州連合(EU)は1つの加盟国として数える)が実施する国内統制との相乗効果にかかっていますが、キンバリープロセスによって具体的な国内統制策が明確に定められているわけではありません。

残念ながら、カメルーンがまさにこの事例に当てはまっています。カメルーンのNGOであるRELUFAの最近の調査によると、カメルーンの国内統制は不十分とのことです。政府は、カメルーン東部に散在するダイヤモンド鉱山での手掘り採掘やダイヤモンド取引のモニタリングさえ十分に行えていません。さらに中央アフリカ共和国からの違法なダイヤモンドの流入を防ぐことができません。ダイヤモンド鉱山地域における政府関係者による管理・監視が特に不十分です。たとえばカメルーンの主要ダイヤモンド鉱山地域の1つであるブンバ・ンゴコ県では、3万km2に及ぶ地域を管轄するのに、キンバリープロセスの国内常設事務局スタッフがたったの3人しかいません。この3人で、すべての手掘りダイヤモンド鉱山における採掘量の収集やダイヤモンドの出所の確認などの基本的な業務を行っているようです。

不十分な法律や規則の施行により、ダイヤモンド業界が無秩序な状態になっています。手掘り採掘労働者や仲買人の多くが中央アフリカ共和国からの難民で、必要な免許を持たずひそかにカメルーンで仕事をしています。また、キンバリープロセス認証制度のもとで輸出される国内のダイヤモンド原産地を保証する重要な書類なのにも関わらず、手掘り採掘権所有者たちは、最後にキンバリープロセスの視察があった2016年以降、ダイヤモンド産出登録書を作成していません。

偽の原産地証明書の流通は、手掘りダイヤモンド業界を持つ国々にとって共通の課題です。対応策として、認可されたダイヤモンド取引所の数を制限して取引を集約し、地域に情報収集網を張ることで監視を強化することがありますが、カメルーンでは行われていません。そのため、採掘地域から離れたヤウンデやドゥアラに住む多くの投資家が、簿外でダイヤモンドを売買することができてしまうのです。

 

このように規制を徹底できないことがあらゆる汚職の温床となっており、カメルーンのダイヤモンド取引が密輸組織に悪用されやすいことを物語っています。

 

冒頭写真:RELUFA

※本記事は、国際平和情報サービス「IPIS」ホームページに掲載されたものを、国際平和情報サービスの許可を得て、DFPの責任の下、DFPにて翻訳し、編集したものです。

 

原文:「CAMEROON’S DIAMOND SECTOR: SMALL PLAYER, BIG CHALLENGES」

https://ipisresearch.be/weekly-briefing/ipis-briefing-august-2021-cameroons-diamond-sector-small-player-big-challenges/(2021年10月22日閲覧)