特定非営利活動法人ダイヤモンド・フォー・ピース(DFP)では、ダイヤモンドを取り巻く様々な問題に関して多くの人々に知っていただくため、2020年秋、4回連続のオンラインセミナーを開催しました。
第1回は2020年9月16日(水)20:00-21:00に「グローバル社会におけるダイヤモンドの問題とダイヤモンド・フォー・ピースの取り組み」と題して、代表の村上から紛争ダイヤモンド・人権・環境・貧困問題と、DFPがこれらの問題の解決に向けて取り組んでいる鉱山労働者の組合運営支援や生計向上のための養蜂プロジェクト等に関してプレゼンテーションを実施しました。
参加人数は44名で、鉱山セクターにおける組合化の事例、他ドナーによる支援状況、政府による資源管理の方法、店舗で販売しているダイヤモンドの信頼性など多岐にわたる質問が寄せられました。
第2回は2020年9月30日(水)20:00-21:30に「ボツワナ鉱山労働者組合の声」と題して、ボツワナ鉱山労働者組合事務局長のキツオ・ピリ氏を講師に迎え、ボツワナのダイヤモンドセクターの概要や、労働者が抱える低賃金や労働条件・労働環境などの課題に関するお話を伺いました。キツオ氏による英語のプレゼンテーションと村上から日本語による補足説明を行いました。
参加人数は36名で、ボツワナ鉱山労働者の労働状況改善のために日本からどのような支援ができるか、ボツワナ政府の国内産業育成・人材育成に対してどのような取り組みがあるか、鉱山企業における人権に関するデューデリジェンスはどの程度現場で実施されているのか等の興味深い質問が多数寄せられました。質疑応答の最中に、ボツワナ側の停電によりインターネットが遮断され、講師が質問に回答できないというハプニングがあり、参加者の皆様にはご迷惑をおかけしました。
第3回目は10月14日(水)20:00-21:30に「紛争ダイヤモンドとキンバリープロセス :その意義と限界」と題して、キンバリープロセス市民社会連合グローバル・コーディネーターおよびジンバブエ環境法協会副代表シャミソ・ムティシ氏とインターナショナル・ピース・インフォメーション・サービス(IPIS)研究員ハンス・メルケト氏の2名を講師に迎え、46名の参加者が参加しました。
前半ではシャミソ氏より、ジンバブエをはじめとするダイヤモンド鉱山における暴力やレイプ等の人権侵害、環境破壊、カット工場における低い労働基準など、現在ダイヤモンドは、これら新たな形の「紛争」によって汚されているが、キンバリープロセス(KP)によって正式に「紛争フリー(紛争とは無関係)」と認証されて国際市場に流通している現状について説明がありました。後半ではハンス氏から、KP認証制度により、紛争ダイヤモンドに関するグローバルな取り組みが成果をあげた一方で、制度の欠点として採掘国内における管理の甘さや透明性の欠如、「紛争ダイヤモンド」の狭い定義、人権問題を取り上げることへのタブー視などについて問題提起がありました。質疑応答では、日本をはじめとする参加国間ではどのような協力を実施しているか、宝石店において人権侵害を含む紛争フリーのダイヤモンドかどうかを見極める方法があるのか等多くの質問を頂戴し、活発なセッションとなりました。
第4回は2020年11月7日(土)9:00-10:30「ブロックチェーンを用いたダイヤモンドの「責任ある調達」の最前線」と題し、エバーレッジャー社サステナビリティー担当ヴァイスプレジデントのキャリー・ジョージ氏を講師にお迎えし31名が参加しました。
キャリー氏からは、同社のブロックチェーン技術を用いて、ダイヤモンド原石をはじめとする宝石や鉱物、アパレル等様々な製品のサプライチェーンに沿った原産地情報や、第三者認証、現地で活動するNGO等との連携による人権保護や環境保護等の情報を製品のパスポートとして集約し、顧客に提供する技術・サービスについてプレゼンテーションがありました。ブロックチェーンが活用されることで、複雑なサプライチェーンにおいて効率的かつ正確なデータ収集・管理が可能になり、透明性と信頼性の向上につながるという説明がありました。加えて、鉱物のトレーサビリティ(追跡可能性)に関して先進的な取り組みを行っているオランダのスマートフォン製造企業Fairphone(フェアフォン)とのインタビュー動画では、手掘り採掘労働者の関与について、現場における課題の把握と地域が主体となる継続的な改善の重要性、サプライチェーン全体への取り組みには、企業・国際機関・NGO等との協業が重要であるとの言及がありました。
DFPでは新型コロナウイルス感染拡大を受けて、初めてのオンラインのセミナー開催となりましたが、普段セミナーにご参加いただけない遠方の支援者の方や、本セミナーを通じてDFPのことを初めて知ってくださった方など、多くの方にDFPの取り組みを紹介する機会となりました。
また、オンラインだからこそできる取り組みとして、世界各国から様々なレベル・分野でダイヤモンドの問題に取り組んでいる講師をお呼びし、異なる角度からダイヤモンドの問題をより深く皆様に知っていただく機会を提供できたことも嬉しく思っています。
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