リベリア スミスタウンでのチームビルディング研修

執筆者:ダイヤモンド・フォー・ピース リベリアスタッフ

 

ダイヤモンド手堀り採掘権所有者たちは、チームを組んで仕事をすることがほとんどありませんが、手掘り採掘労働者はたいてい3人から5人の小さなグループで仕事をしています。彼らはチームで作業をしなければ、ダイヤモンドを採掘することがとても難しいということをわかっています。なぜなら手堀り作業は、簡単な道具(シャベル、カットラス(短い刀のようなもの)、ディガーと呼ばれる現地特有の道具など)しか使用できないため、一人だけで働くのは大変困難だからです。採掘を行っている地域では少人数の採掘労働者のグループがいくつかあり、グループのメンバーは協力して作業を行い、利益を分け合っています。しかし、ここでの課題は、採掘権所有者および採掘労働者が1つのチームとして共に働き、より大きな成果を効果的に上げるための基本的なスキルを持っていないことです。

研修参加者たちが2019年7月の研修に参加登録する様子  (撮影:ダイヤモンド・フォー・ピース、2019年、リベリア)

ダイヤモンド・フォー・ピースの活動の目的は、手堀り労働者(採掘権所有者および採掘労働者)の組合組織化を通じて、彼らの労働条件や社会的地位が向上することです。ダイヤモンド採掘作業において、手堀り労働者たちはお互いに協力して働くことに慣れていないため、共通の目的のために組合として他組合員と共に働くことが困難であると私たちは考えています。したがって、チームビルディング研修を実施することで、手堀り労働者をはじめとする関係者に一緒に働くことの意味や良さを理解してもらい、組合として効果的に働くために必要なスキルを習得できるよう支援しています。 

スミスタウンでチームビルディング研修を行う理由

スミスタウンは、ダイヤモンド・フォー・ピースの正式な活動対象地域ではありませんが、試験的にチームビルディング研修を実施しました。2019年5月にウィズア村で実施したチームビルディング研修(詳しくはニュースレター The Journey 第2号2019年8月発行をご覧ください)後、研修マニュアル最終化にあたり他村でも研修を実施することで得られることがあると考えました。同時に、組合が民主的に運営されていない、一人のリーダーがすべての事柄を決定している、一部のメンバーが組合の権利や活動参加に関して制限が加えられているなど、スミスタウンの関係者が組合運営に関して抱えている問題があることから、研修の必要性を感じていました。これらの理由からスミスタウンの組合は長年休眠状態にあるため、組合を再生するためには組合の関係者がチームビルディングのスキルを身につけ、互いに協力するための能力を向上させる必要がありました。

 研修プログラムの内容

チームビルディング研修では、楽しく有意義なゲームを数多く行います。参加者に求められるのは、ゲームのルールをしっかりと理解した上で積極的に参加し、ゲームの意義を話し合うことです。参加者は訓練中に何もメモを取る必要はありません。「トラストフォールゲーム」はその中の一つのゲームです。チームメンバーが成功を収めるためにはお互いを頼りにしなければならなりませんし、それによって互いに信頼関係を築くことができます。

研修の成果

スミスタウンでは組合自体は存在しています。2009 年から休眠状態の組合を再開させるための試みを現在行っていますが、まだ成功していません。

ダイヤモンド・フォー・ピースの支援を受けて設立した手堀り採掘労働者グループもあります。スミスタウンの研修は、1)組合員である手堀り採掘権所有者、2)手堀り採掘労働者グループのメンバーおよびメンバーでない採掘労働者、3)地域のリーダーの3グループを対象としました。彼らを対象とした理由は、採掘権所有者と採掘労働者が私たちの活動における主な対象者だからです。また地域のリーダーは、現地活動の目標達成にリーダーの協力や支援が不可欠であり、地域に住むすべての人々の生活によい影響を与えることが地域の発展につながると考えているからです。

一つのグループが「ヒューマンノット(人間結び目)ゲーム」を行っている間、他のグループはその様子を観察します (撮影:ダイヤモンド・フォー・ピース、2019年、リベリア)

研修のメリット

このチームビルディング研修は、すべての関係者にとって意味がありますが、組合にとっては特に重要です。現在スミスタウンの組合は、組合員が打ち合わせに出席しない、期限までに組合費を支払わない、多くの組合員が出資金を支払っていない、といった深刻な運営上の問題に直面しています。実際、その意義を理解していないために、組合員の中には出資金や組合費を払わないケースが多くみられます。また、組合のリーダーたちは、組合員たちが組合活動に積極的に参加しないのは、組合の活動に関心がないからだと考えていましたが、実際には組合員や組合に参加していない採掘権所有者は組合の活動について何も知らされていなかったために、組合の活動の意味がわからず、組合活動に参加する気になれなかったことが原因であることが判明しました。

研修参加者が「完璧な正方形ゲーム」を行う様子  (撮影:ダイヤモンド・フォー・ピース、2019年、リベリア)

研修では、一連のチームビルディングゲームをとおして、チームワークにはメンバーがお互いの意見をしっかりと聞くこと、意見を尊重しあうこと、綿密にコミュニケーションを取りながら作戦を練っていくこと、信頼を構築することが大切であることを参加者が理解するようになりました。「真実の輪のゲーム」が行われたとき、特にリーダーとリーダーでない参加者の間でぎくしゃくした感情が生じましたが、講師がすぐにみんなの気持ちをなだめました。

講師は、このゲームの目的は、お互いが反論しあうことではなく、メンバーがもっている課題に耳を傾けることの大切さを学ぶことだと繰り返し伝えました。リーダーは、メンバーの主張に注意深く耳を傾け、彼らと対話をして友好的に問題に対処する必要があります。研修の最後に、組合のリーダーたちは自分たちの落ち度(組合員同士でチームワークがとれていないこと)を認め、組合に参加していない採掘権所有者も含め、全組合員を集めて毎月の定例会議を開催し、活動計画を決めていくことが必要であることに気が付きました。組合に参加していない採掘権所有者にも組合員登録をしてもらい、組合員全員に対して会費の支払いおよび出資金の目的と重要性を明確に説明し、組合費と出資金をどう管理していくべきかを話し合うための計画を立てました。また会計記録をつけることもその計画に加えられました。

参加者はゲームを楽しみながら積極的に研修に参加しました。ゲームの中で多くの質問をしたり、質問に答えたりしながら議論に夢中になっていました。参加者はこのゲームで得た結果に興味を示し、研修で得た知識を実践に生かしていくことを約束しました。

研修参加者の声

– この研修に参加できて大変良かったと思います。この研修を受けることで今まで知らなかった多くのことを理解することができましたし、今ではチームメイトと協力しながらさまざまな課題を改善していけると信じています。

– この研修は非常に役に立ちました。私たちと異なるグループや地域社会全体に影響を及ぼす課題について話し合い、解決策を見つけるスキルを身につけることができました。

– この研修では、チームを成功に導くためのコミュニケーションの力を理解することができました。

– トレーニングの恩恵を受けた今、私たちはこのスキルを使って組合や組合に参加していない他の採掘労働者の人たちと協力して仕事をするスキルを高めていきたいと思います。私たちは定期的なミーティングを開催して彼らに出席してもらえるようにしたいと思います。まだ組合に参加していない人たちがメンバーになるように働きかけていきます。

チームで達成するということ

「どんなときでも二人で動くほうが一人よりも優れている」とよく現地で言われるように、個人で仕事をするよりも、他の人と一緒にチームで仕事をする方が効果的です。これは、チームのメンバーがチームとしての目的を明確に理解し、責任分担をすることで効果的に作業することが可能になります。チームは個人よりも非常に大きな成果を達成することができるのです。

 

 

冒頭写真:研修参加者がトラストフォールゲームをする様子(撮影:ダイヤモンド・フォー・ピース、2019年、リベリア)