ダイヤモンド・フォー・ピース(DFP)は、2016年度、LUSH Japanのチャリティバンク助成を受け、リベリアでフェアなダイヤモンドを生み出すプロジェクトの内容を設計するための現地調査を行っています。
プロジェクトの内容を検討するには、まず現地の状況を正しく理解する必要があります。そのための調査を昨年夏から理事とリベリア人スタッフで進めてきました。昨年秋の訪問に続き、今年2月から3月にかけて再度リベリアを訪問してきましたので、今回の気づきを共有したいと思います。
◆リベリア政府のやる気
なぜリベリア?とよく聞かれるのですが、一番の理由はリベリア政府にやる気があるからです。もし政府にやる気がなく、DFPが単独で事を進めないといけないとしたら、特にアフリカでは色々な妨害にあったり、人々にやる気がなく全く物事が進まない可能性大なのです。
私が初めてリベリアに来た3年前、偶然か必然か、鉱山省のドーバー副大臣に会うことができました。フェアなダイヤモンドを生み出すプロジェクトをしたいと話したところ、フェアの条件とされている労働者の組合化をリベリア政府も進めたいと思っていること、自分達がしたいことはわかっているが、どうすればいいのかわからないので協力して欲しいという話になり、そこからDFPの挑戦が始まりました。
エボラウイルス病の危機を経て、鉱山省は昨年、手掘り採掘セクターを公式セクターにするための方向性を示すロードマップを策定(ということは、現在はかなりの部分が非公式であるという意味です)。その中に手掘り採掘労働者の組合化を図ること、ダイヤモンド等の資源のトレーサビリティ(追跡可能性)を確立するための施策を実行すること、職員の汚職を減らすための仕組みを導入すること等が記載されています。ドイツ援助機関の支援はありましたが、鉱山省が中心となり、手掘り採掘労働関係者との協議を何度も持ちこのようなロードマップを策定できたのは、なかなかすごいことだと思います。他の国でこのような事例は聞いたことがありません。
このロードマップができたおかげで、鉱山省の職員は省の今後の方向性を概ね理解することができています。そこに書かれている内容とDFPがしようとしていることが共通しているので、鉱山省が主体性・当事者意識を持ってプロジェクトを推進してくれそうな雰囲気です。プロジェクトの成功に鉱山省の主体性は欠かせないので、その点ではよい方向に進んでいると感じています。
◆村での聞き取り
一方、なかなかのチャレンジなのが、DFPのビジョン・ミッションやDFPがしようとしていることを手掘り採掘労働者や現地住民に理解してもらうことです。
現場の村では、必ずなぜここに来たのか主旨を説明してからインタビューを行います。聞き手である現地労働者・住民は「わかった」と言うのですが、インタビューが終わると「それでなぜ来たの?」と聞かれることがしばしばありました。
これは英語や言葉の問題ではないのです。リベリア人スタッフや鉱山省の職員が現地労働者・住民に説明しても、全く同じことが起こります。
理由として考えられるのは、
・ほとんどの人が初等教育を終えていない(全く学校に通ったことがない、または小学校を途中退学)ので、理解力に乏しい
・採掘地域にやってくるほとんどの人や団体は、ダイヤモンドやゴールドで儲けようとしている人・団体。DFPのようなNGOを見たことも聞いたこともありません。そのためDFPがダイヤモンドビジネスをしないで彼らの生活を改善しようとしていると言っても、その意味がわからないようです。
・多くの人々の妄想力がたくましいので、何か裏があるのではないか、DFPが何か別のことをたくらんでいるのでは?と疑っている人もいるように思いました。
村の中で数少ない、高校を卒業したエリートはだいたい私たちの話を理解し、賛同してくれますが、ほとんどの人はそう一筋縄ではいかないですね。
◆他人と協力するのが苦手
他人と協力して何かを行うことがリベリア人は大の苦手です。リベリア人自身が「みんなわがままだ。自分のことしか考えていない」と言う程。ほとんどの人々が極度の貧困にあり衣食住にさえ困っている状態なので、他人のことを気にかけたり協力する余裕がないのが一番の理由だと個人的には推測していますが、これから組合化を進めるとなると「他人と協力できない」と言っている場合ではないのです。
とはいえ、一部の村では村人がお金を出し合って小学校を建設したりしているところもあります。採掘地域を何カ所も訪問しましたが、村によって「外部の誰かが村にやってきて救ってくれることをただ待っている」村と「外部の人や政府はあてにできないから、自分達でなんとかしよう」としている一部の村のメンタリティーの差が激しいように思いました。
ただ待っている受け身な村でプロジェクトを成功させるのは困難なので、まずはやる気のある村でプロジェクトを行い、そのよい影響が他の村に伝播していくような仕組みにしたいなあと思っています。
◆女性蔑視
昨年秋にリベリアで採掘地域を訪問した時は、採掘現場に女性も入れたのですが、今回(2017年2月~3月)訪問した際、「女性はここから先立ち入り禁止」という現場があり、そこから先に行くことができませんでした。彼らの言い分では「昔からの慣習でそう決まっている」「女性が入るとダイヤモンドが見つからなくなるという教えを信じている」ということで、入れてくれるよう説得を試みたのですが、かなり強硬な態度で反発されました。
リベリアで採掘権を取得できるのはリベリア国民。その中には女性も含まれており、実際、女性で採掘権を持っている人も少数ながら存在します。女性が採掘現場に入ってはいけないと言う人達の説明では、「採掘権を持っていても女性は採掘現場に入れない。だから彼女の夫が現場に行って労働者の管理をしている」ということでした。
外国人である私が入れないだけならまだしも、採掘権を持っている女性が自分の採掘現場に入れないというのはおかしいと思います。また、違法採掘等を取り締まる鉱山省職員の中には女性の職員もいます。女性が採掘現場に入れない地域に配属されたら、彼女達は一体どのように仕事をするのでしょう?
この一連の事件?を観察したところ、女性が入れないと言う地域はダイヤモンドの想定産出量が多い地域と重なっているように思いました。リベリアでは夫婦がお互いにいくら稼いでいるのか言わないのが普通(配偶者に収入を知られたくないそう)だそうなので、「この現場はたくさんダイヤが見つかる」ということを他人(特に女性)に知られなくないという気持ちが裏にあるのではと思いました。
◆何度も会って話すことの重要性
現地の人からすれば、急に肌の色が違う人達がやって来て、色々なことを根ほり葉ほり聞かれるのは気持ちのよいものではないでしょう。初対面でざっくばらんに話してくれる人がいる一方、かなりの警戒心でなかなか質問に答えてくれない人もいました。
日本人同士でもそうだと思いますが、一度会っただけで心を開くのはそう簡単ではありません。何度も会い、時には一緒に食事をしたりお酒を飲んだりして地道に信頼関係を作っていくことが非常に重要だと改めて感じました。前回の出張で会い、今回再度会った人とは少しずつ信頼関係ができつつあるように思います。
今回の出張は前回とはまた違う発見がありました。
プロジェクトの内容も少しずつですが見えてきています。
現地調査結果については、報告書完成後公開予定ですので、お待ちください!
だんだんリベリアに愛着が湧いてきました。
早くリベリアに戻りたいです☆
冒頭写真:採掘権所有者たちによる採掘場所に関する争いを解決するため、鉱山省職員が測量をしている様子。この後無事に争いは解決されました。