婚約・結婚の証、誕生日・記念日のプレゼント、自分へのごほうびなど、私達の人生の幸せな時間を彩るダイヤモンドは愛と幸せの象徴です。
実はそのダイヤモンドの裏には、多くの問題が隠されています。ダイヤモンドを売った資金で武器等を購入し、内戦や紛争が激化…。鉱山で子どもが働いていたり、大人を含む労働者が強制労働させられていたり…。他に仕事がないので採掘を始めたが、1日数十円の極端な低賃金で生活が成り立たない…。鉱山開発のため森林は伐採され、採掘による環境破壊により鉱山跡地を使えない…。
これらは過去の問題ではなく、今、世界の裏側で実際に起こっていることです。
ダイヤモンドが抱える問題は数多くありますが、整理すると下の図のようになります。
ダイヤモンドにまつわる多くの問題の根本的な原因は、極度の貧困だと考えられます。そこで、当団体は、労働者の自立支援に重点を置いた活動「ダイヤモンド採掘者自立支援活動」を実施しています。
【採掘者自立支援活動対象国】
リベリア共和国(2020年現在)
【活動内容】
アフリカをはじめとする途上国における、 ダイヤモンド採掘・製造に関わる労働者の労働環境改善・社会的 地位向上の支援。当団体では、途上国で貧困に苦しむ手掘り採掘者(採掘権保有者及び採掘労働者)が自立する手段として、フェアトレード*の手法に着目しています。現地の採掘労働者に能力強化研修や組合の組織化・組合運営支援等を行う活動を通して、労働者の自立に貢献することを目指しています。
2014年にリベリアでのダイヤモンド採掘地域の基礎調査を行い、2016年から2017年にかけてリベリアで手掘りダイヤモンド採掘が盛んな西部地域で、採掘権保有者・採掘労働者・村人の労働状況及び生活状況の実態調査を行いました。
報告書はこちら:
リベリア手掘りダイヤモンド採掘労働者実態調査【和文】(2017年5月発表)
この調査結果を基に、手掘りダイヤモンド採掘者むけの能力強化研修の開発を行っています。最初の研修として、チームビルディング研修を開発し対象村にて2019年に実施しました(チームビルディング研修について詳しくは、ニュースレターThe Journey
第2号(2019年8月発行)
をご覧ください)。
現在、民主的かつ説明責任を果たすことができる組合運営を目標に、組合に対してコーチングを行い、活動進捗の確認、勇気づけ、記録作成指導を行っています。
【めざす姿への道筋】
下図はダイヤモンド・フォー・ピース(DFP)が分析した「貧困の連鎖とその影響」、ダイヤモンド採掘関係者の「資金不足と価格交渉ができない主要因を改善するための介入案」そして「めざす姿」を図示したものです。めざす姿を実現するには、多くの研修コンテンツの開発ときめ細かいサポートが必要になります。私たちは、一つ一つの活動を丁寧に行い結果を出していきたいと考えています。
【開発予定の研修】
・組合運営研修
・環境保護研修
・人権保護研修
・ダイヤモンドの価値評価基礎研修 など
【出資者への依存を断つための収入向上活動案】
・養蜂技術研修
・組合が決定するその他副業活動への支援 など
【環境保護活動】
・放棄された鉱山の回復(埋め戻し)
・鉱山回復後の植林 など
【組合が採掘するダイヤモンドを国際正規市場に流通させるための活動案】
・鉱山から消費者までの透明な(追跡可能な)サプライチェーンの構築
・CRAFT認証** など
【村の生活環境・衛生改善活動案】
・井戸の設置、修理
・公共トイレの設置 など
これら2つは対象村からの依頼によるものです。ダイヤモンド・フォー・ピース(DFP)の対象村ウィズアには、井戸が数箇所あるものの、数が十分でなく、安全な水を使えない村人がいます。また、壊れている井戸があり、修理を必要としています。
さらに深刻なのは、ウィズアには公共トイレがなく、ほとんどの村人は川や近くの森で用を足しています。川の水の汚染、森の汚染だけでなく、村人の健康にも深刻な影響がでています。
この分野で対象となる持続可能な開発目標(SDGs)
目標1
あらゆる場所で、あらゆる形態の貧困に終止符を打つ
目標5
ジェンダーの平等を達成し、すべての女性と女児のエンパワーメントを図る
目標6
すべての人々に水と衛生へのアクセスと持続可能な管理を確保する
目標8
すべての人々のための持続的、包摂的かつ持続可能な経済成長、生産的な完全雇用およびディーセント・ワーク(働きがいのある人間らしい仕事)を推進する
目標10
国内および国家間の不平等を是正する
目標12
持続可能な消費と生産のパターンを確保する
目標13
気候変動とその影響に立ち向かうため、緊急対策を取る
目標15
陸上生態系の保護、回復および持続可能な利用の推進、森林の持続可能な管理、砂漠化への対処、土地劣化の阻止および逆転、ならびに生物多様性損失の阻止を図る
目標17
持続可能な開発に向けて実施手段を強化し、グローバル・パートナーシップを活性化する
*フェアトレードとは、途上国の原料・製品を適正な価格で継続的に購入・消費することを通して、弱い立場に置かれている途上国の労働者の生活改善と自立を促す取り組みのこと。労働者が提供する産品が不当に安い価格で買い叩かれること、児童労働、貧困による乱開発や環境破壊を防ぎます。
フェアトレード産品として認証されるには、認証機関が定める産品毎の基準を守った上で認証を受ける必要があります。基本的な要件は、労働者組合が透明性のある民主的な活動をしていること、利益の一部が地域の社会発展事業に使用されること、強制労働や児童労働の禁止、生産地の環境保全の保証等です。
**CRAFT認証とは、Alliance for Responsible Mining (ARM)というNGOが開発した、OECDの「紛争地域および高リスク地域からの鉱物の責任あるサプライチェーンのためのデュー・ディリジェンス・ガイダンス」に基づく、ゴールドをはじめとする鉱物を対象とするデュー・ディリジェンスのこと。ARMはフェアマインド認証を行っているが、認証基準を満たす難易度が高いため、組合等のエントリーレベルの認証として用いられる。
関連リンク:
・DFPサポーターのご案内