「キリスト教子ども学校」へのインタビュー
リベリアでは、私立学校での質の高い教育にかかる費用が高くなっているため、公立の学校から遠く離れたところに住む家族にとって、子どもたちを学校へ行かせることがとても難しくなっています。こうした子どもたちのため、コミュニティスクールが設立されるところもありますが、劣悪な状況下におかれています。モンセラード州コンゴタウン地区のピースアイランドにある「キリスト教子ども学校(Christ-In Me Childhood Foundation)」はそうしたコミュニティスクールのひとつです。
ダイヤモンド・フォー・ピース(DFP)は、リベリアのエボラウイルス病緊急支援活動の中で、首都モンロビア近郊にある9つの学校へ、体温計や石けんなどの衛生用品の配布を行ってきました。「キリスト教子ども学校」は、DFPが支援した学校のひとつです。
2016年3月、DFPの現地コーディネーターが、校長と生徒にインタビューを行いました。
校長先生へのインタビュー
DFPコーディネーター:この学校はどのような経緯で設立されたのでしょうか?
タシヤェ校長: ご覧いただければお分かりのように、この地域では、ほとんどの人々の暮らしは困窮しており、子どもを学校へ行かせることよりも、日々生きるために食べ物を見つけることの方が重要な関心事であり、学校に行くべき時間帯に多くの子どもたちが地域をうろついていました。
そこで、教育の必要性について調べるため2014年に無料の授業を始めてみたところ、子どもたちは積極的に参加してくれたのです。私は、子どもたちについて同じ考えを持っている地域の人々と理念を共有し、2015年に学校を設立することを決めました。そして、神の恩恵によって、幼稚園から6年生までの生徒を受け入れることが叶いました。
DFPコーディネーター:この学校の設立以来、成し遂げられたことは何でしょうか?
タシヤェ校長: 学校は今年で設立2年目です。ご存知だと思いますが、2015年、リベリアでエボラウイルス病が流行しました。そのような深刻な状況の中、我々が成し遂げたことは、なんとか子どもたちを学校に通わせたことです。こうした子どもたちは地域やリベリアにとって負債となる可能性もありましたが、教育の助けによって、将来はよき市民となると信じています。
DFPコーディネーター:学校職員への支払いや、学校運営の費用はどのようにまかなわれているのでしょうか?
タシヤェ校長: 職員は、「子どもを学校に行かせるのに十分なお金を持たない両親、保護者の下にいる子どもたちを助ける」という学校の理念を理解しているので、今のところ、教師への給与の支払いについては問題となっておりません。しかしながら、彼らには、毎月、とても少ない額しか支払われていません。学校の名簿に子どもを登録するためにかかる費用(一人あたり5.5米ドル)や、その登録料が払えない場合は、支援者が保護者の代わりに支払い、それを用いて学校運営にあてています。
DFPコーディネーター:学校を維持する上で、困難なことは何でしょうか?
タシヤェ校長: どんな世界でも、事を成すのは大変なことです。ご覧のとおり、座席の収容人数は十分でなく、トイレもなければ、建物の構造も現代的ではありません。雨季になると、地下から建物内に水が流れ込んできますので、床を高くするためにセメントが必要です。それにもかかわらず、いまのところはあるものでなんとかやり繰りしていますが、より多くの支援を求めています。
DFPコーディネーター:最後に一言お願いします。
タシヤェ校長: 「キリスト教子ども学校」に関心を持っていただきありがとうございます。多くの方々に、我々の取り組みに対する支援の必要性を感じていただき、いつの日か、状況が改善することを望んでいます。子どもたちを教育する我々の取り組みを支援してくださる、いかなる個人、組織にも神のご加護がありますように。
ボス君へのインタビュー
DFPコーディネーター:今何年生で、何歳ですか?
ボス君: 今、5年生、14歳です。
DFPコーディネーター: 学校は好きですか?
ボス君: はい、この学校が好きです。学校のおかげで、将来、よい人になれると思います。
DFPコーディネーター:誰と一緒に住んでいますか?
ボス君: 両親と一緒に住んでいます。
DFPコーディネーター:兄弟、姉妹はいますか?
ボス君: 4人兄弟と4人姉妹がいますが、学校に行っているのは私だけです。2人の兄弟と2人の姉妹は、別の家族と一緒に地方に住んでいます。
DFPコーディネーター:将来はどんな仕事をしたいですか?
ボス君: 医者になるため、医学を勉強したいです。この国には、命を救うために、とてもよい医者が必要です。
DFPコーディネーター:この学校について人々に伝えたいことはありますか?
ボス君: この機会に皆さんに伝えたいことは、このような地域の学校を無視しないでほしいということです。建物は立派でなくても、他の大きな学校が使っているカリキュラムと同じものを使っています。私たちは、本、椅子、黒板を与えてくれる、そして、学校へ出資してくれる人々の助けが必要なだけです。
DFPコーディネーター:ありがとうございました。
ボス君: 私たちの学校に来てくれてありがとうございました。また会いましょう。
ジェシカさんへのインタビュー
DFPコーディネーター:今何年生ですか?
ジェシカさん:1年生です。
DFPコーディネーター:何歳ですか?
ジェシカさん:11歳です。
DFPコーディネーター:ご両親と住んでいますか?
ジェシカさん:いいえ、従兄弟と住んでいます。父と母は地方に住んでいます。
DFPコーディネーター:兄弟、姉妹はいますか?
ジェシカさん:兄弟が4人、姉妹が2人います。彼らは両親と一緒に住んでいます。
DFPコーディネーター:この学校は好きですか?
ジェシカさん:はい、授業は好きですが、学校の建物は好きではないです。
DFPコーディネーター:将来はどんな仕事をしたいですか?
ジェシカさん:お医者さんになりたいです。
DFPコーディネーター: ありがとうございました。
ジェシカさん:来てくれてありがとう。
インタビューを終えて、DFPコーディネーターからのコメント
「キリスト教子ども学校」は、コンゴタウン地区のピースアイランドにあります。学校はトタンで出来ており、快適さのかけらもありません。西側は大きな湿地、東、北、南は家々に隣接しています。学校の裏の湿地は、学校の生徒や地域の子どもたちに、しばしばトイレとして使われます。
学校の内部は床がむき出しになっており、屋根からの熱を遮る天井もありません。生徒たちは、家から持ってきたとても短いベンチと椅子を使っています。学校には制服がありますが、ごく一部の生徒しか制服を着ていませんでした。黒板はとても古く、くすんでいました。黒板の文字を読むために目を凝らさなければならないほどです。学校にある6つの小さな黒板は、幼稚園1、2年生、1年生と2年生、3年生と4年生、5年生と6年生の合同授業に使われています。つまり、5年生と6年生は同じ授業を受けています。
それに加え、学校には教室がひとつしかありません。驚く人もいるかもしれませんが、これはリベリアでは昔からある光景です。1980年代には、公立、私立の学校でも、今の「キリスト教子ども学校」のように、生徒の気が散らないよう、ついたてのようなもので区切って授業を行っているところもありました。
そのような状況ではありますが、「何もないよりまし」という人もいるでしょう。子どもたちにとっては、学校にいることが、地域をふらついているよりもよいのです。多くの生徒は学校にいることを楽しんでいるようでした。集合写真を撮った時など、生徒たちは、先生や校長先生の指示によく従っていました。
DFPからのコメント
2014年度及び2015年度、当団体はエボラウイルス病緊急支援活動の一環として、首都モンロビア周辺の学校のうち、国連/国際支援団体からの衛生消毒物資配布対象から漏れている学校のうち9校に、体温計や手洗い用石けん等を配布の上、手洗い方法の指導を行いました。その後、適切に配布物資が使用されているか、手洗いが実施されているかを確認するモニタリングを行いました。
今回インタビューした「キリスト教子ども学校」は、DFPが支援した9校のうち、最もきちんと物資を管理し、生徒たちに手洗い指導をしていた学校のうちの1校です。
この学校はDFPが支援した学校の中でも、最も恵まれない状況下にあります。特筆すべきは、トイレとして使用される沼に隣接しているという衛生的に劣悪な環境。リベリアの雨季(5月頃~10月頃)の雨は激しく、道路が冠水することは日常茶飯事です。そんな時に沼の下水が学校に流れてくることもあると言います。そのような状況の中でも、近隣の子ども達に教育の機会を提供するため、教員達が奮闘しています。
当団体のエボラウイルス病緊急支援活動は終了しますが、この学校に支援をしたい個人・団体・企業様がいらっしゃいましたら、当団体がコーディネートすることが可能です。ご興味のある方は、当団体までご連絡頂ければと思います。
(連絡先 info★diamondsforpeace.org ★を@に変えて送信ください)