ハワさん、ウィズア村の女性採掘権所有者

はじめに

リベリア共和国西部における主要な収入源は、農業と採掘業です。そこでは、何千人ものリベリア人が家族の食費や子どもの教育費、その他さまざまな支払いをするために、採掘権所有者や採掘労働者として働いています。採掘権所有者や採掘労働者に対して手掘りダイヤモンド採掘運営で利益を上げるために、財政的・物質的投資をする人々もいます。

手掘り採掘権所有者とは、政府から「クラスC」の採掘権を取得している人々のことです。彼らは採掘現場を所有し、採掘権に応じてダイヤモンドや金を採掘して、地元で販売することができます。彼らが使用を許可されているのは、ナタやシャベル、斧やディガー(手掘り採掘のために現地で使われる道具)といった簡素な道具のみで、大型の機械を採掘活動で使用することは、法律で禁止されています。

ちなみに、ダイヤモンドの採掘作業を行う採掘労働者は、そのほとんどが男性です。資金提供者とは、採掘プロジェクトにおいて、採掘労働者や採掘権所有者に出資する人々のことをいい、採掘権所有者とは、政府の発行する採掘権を有し採掘現場を管理する人のことをいいます。

 

 ハワさん、ウィズア村の女性採掘権所有者

リベリアには、ダイヤモンドの手掘り採掘権所有者として働く女性が数多くいますが、今回はその中でも、ウィズア村の女性採掘権所有者、ハワさんを紹介したいと思います。ハワさんは40歳、イスラム教徒です。リベリア共和国グランドケープマウント州マノリバー村の貧しい家庭に生まれましたが、現在は、ダイヤモンド・フォー・ピースの活動対象地域であるウィズア村に住んでいます。ダイヤモンド採掘労働者と結婚し、5人の子ども(息子2人、娘3人)がいます。ハワさんは読み書きができません。学校教育を受けたいと願っていましたが、その機会には恵まれませんでした。幼い頃、ハワさんは叔母に引き取られました。叔母はハワさんを愛し、大切に育ててくれました。食べ物と衣服は十分に与えられていましたし、友達と遊びに出かけるだけの余裕もあり、ハワさんは幸せでした。しかし、叔母はハワさんの教育については重視しておらず、叔母の子どもたちが学校に行っている間、ハワさんは店の手伝いをしなければなりませんでした。ハワさんは7歳の時に学校に通い始めましたが、ABCを習ったところで終わってしまいました。両親は貧しい農民と採掘労働者で、ハワさんを学校へ行かせるだけの余裕はありませんでしたので、残念でしたがハワさんにはどうしようもなかったのです。大人になって、農業と商売が収入を得るための主要な手段であることを知り、ハワさんは農業と小さな商売を始めましたが、叔母から多くを学んでいたこともあり、主に零細商売を生業としていました。

 

写真:ダイヤモンド・フォー・ピース・リベリアのコーディネーターが、ウィズア村の女性採掘権所有者ハワさんを取材する様子 撮影:ダイヤモンド・フォー・ピース

掘権所有者としての人生

ハワさんは採掘権所有者となる前から、家計を支えるため野菜や惣菜の販売を行ってきました。ある時期には、いくつかのダイヤモンド採掘プロジェクトで、資金提供者として採掘労働者を支援したこともありました。しかし、ダイヤモンド採掘への出資は利益にならないこと、資金提供者や採掘労働者よりも採掘権所有者の方が儲けていることに気付き、採掘権所有者になることを決めました。分析してみたところ、採掘権所有者は年1回の採掘権料を支払う以外はダイヤモンド採掘プロジェクトへの支出がないにも関わらず、所有地から採掘されたダイヤモンドの50%を分け前として手に入れることができるのです。

他方、資金提供者はダイヤモンド採掘で出資金を失うリスクを負い、また採掘労働者については作業も多く、無駄な徒労に終わることも多くあります。資金提供者は、採掘権所有者や採掘労働者からダイヤモンドを買い取り、それらを売ることで出費を回収し儲けられる、という算段でダイヤモンド採掘に出資をします。しかし、ダイヤモンドが見つからなければ、出資金を回収することはできません。一方で採掘権所有者は、資金についても労働についても無駄にするリスクをそれほど負わず、余裕を持っていられます。こういった理由で、ハワさんは2010年に採掘権所有者になり、それ以降、ダイヤモンド採掘権所有者として働きながら夫と共に家計を支えてきました。

写真:商店にて惣菜を売るハワさん 撮影:ダイヤモンド・フォー・ピース

ハワさんの夢

ハワさんは、学校への夢を諦めてはいません。自分自身はその機会を得られませんでしたが、子どもたちには教育を受けてほしいと考えています。ハワさんの最大の夢は、子どもたちが質の高い教育を受けることなのです。

ハワさんの課題

ダイヤモンド採掘権所有者として生きていくには、たくさんの課題があります。その中でも主なものを取り上げてみましょう。

  • ハワさんには、ダイヤモンド原石の価値の評価方法に関する知識がなく、ダイヤモンドを安く買い上げられてしまいます。
  • 採掘作業のための資金を出資しているのは、資金提供者です。そのため、所有地からダイヤモンドが採掘されたら、ハワさんは必ず資金提供者にダイヤモンドを売り渡さなければなりません。資金提供者はハワさんからダイヤモンドを買い上げた後、さらに仲買人や輸出業者に売って出費を回収し、儲けを得るのです。このような仕組みにおいて、ハワさんには買い手(資金提供者)に対する価格交渉力がなく、安値で買い叩かれてしまいます。
  • ダイヤモンドを探し当てることができるかどうかは常に不確実であり、時間や労働力、資金を費やしても、見返りを得らえるかは分かりません。
  • ハワさんは現在、有効な採掘権を持っていません。なぜなら、採掘権関連費用(クラスC採掘権料150米ドル/年、調査費150米ドル、その他多額の非公式費用)はハワさんには高額で、申請手続きも煩雑だからです。採掘権申請のためには、ウィズア村から200㎞も離れた首都モンロビア市まで行かなければなりません。必要な費用を支払った後も行政上の手続に長い時間がかかるため、取得するために何度も行ったり来たりしなければなりません。これは大変なことですし、申請費用に加え交通費も必要となるため、非常にお金がかかります。
  • もし採掘プロジェクトに自ら出資できれば、ハワさんは、資金提供者との関係を断ち、自分が選んだ相手にダイヤモンドを売ることができるようになります。そうすれば、買い手の提示価格に満足できなくても、高値で買ってくれる別の買い手を探すことができるので、交渉において有利な立場となるでしょう。しかし、ハワさんには、採掘作業のために必要な資金を出資できるだけの経済力はありません。
  • 収入が低く不安定なので、
  •  ハワさんは、十分に家族を養うことができていません。
  •  ハワさん一家は生活必需品を買うことができません。
  •  ハワさん一家は1日に1回しか食事ができません。
  •  ハワさん一家は非常に粗末な家に住んでいます。
  •  ハワさん一家は、トイレ設備がないため、森や野原で用を足さなければなりません。
  •  ハワさんの子どもたちは全員学校へ行っていますが、全員分の授業料を払うことはできないので、親戚に頭を下げて、数人分の援助をしてもらっています。
  • 第一子:高校1年生
  • 第二子:小学3年生
  • 第三子:幼稚園生
  • 第四子:小学2年生
  • 第五子:幼稚園生

末っ子以外の4人の子どもたちは、親戚の家で暮らし、親戚の経済的援助を受けて学校に通っています。

写真:ハワさん一家の暮らす家 撮影:ダイヤモンド・フォー・ピース

一人ではなく同志と連携する未来

ダイヤモンド採掘はリベリア西部における主要な収入源の一つであり、ハワさんは、ダイヤモンド採掘権所有者として働く多くの女性たちの一人です。しかし、ハワさんは採掘労働には携わっておらず、採掘権所有者(現在は有効な採掘権を持ってはいませんが)にも関わらず、劣悪な条件下で働いています。搾取的な資金提供者に頼らざるを得ず、課題の多い仕事なのです。年中働きどおしですが、いつまでたっても貧しいままです。ハワさんは、このまま搾取的な資金提供者に依存していては、永遠に貧困から抜け出せないと思い、彼らとの関係を断ちたいと考えています。しかし、たった一人の採掘権所有者の力でそれを成し遂げることは不可能だとも思っています。これまで長年一人で働いてきても、利益を得ることはできなかったからです。そこで、彼女は組合に加入し、労働環境と生活環境の向上に向けて他の採掘権所有者たちと活動に取り組んでいます。その組合は、ダイヤモンド・フォー・ピース・リベリアの支援により、活動を進め、組合運営能力の強化にも取り組んでいます。

 

冒頭写真:ハワさんとその家族 (撮影:ダイヤモンド・フォー・ピース)