執筆:ダイヤモンド・フォー・ピース・リベリア スタッフ
はじめに
新型コロナウイルス感染症は、感染した人が咳、くしゃみ、会話、食事をするときに飛ばす飛沫をとおして、人から人へ広がる死にも至る病気です。飛沫は近くにいる人々の口や鼻に入り、肺に吸入されることもあります。研究によって、人々がおよそ2m以内で密に他の人と接触があるときに、さらに感染が拡大することが分かっています。ウイルスが付いた表面や物に触り、その後、自分の口、鼻や目を触ることによって感染することもあります。
リベリアでは、2021年1月3日時点の統計によると、1,779人の感染が確認され、83人が亡くなり、1,406人が回復しています。リベリアでの感染は、世界の他の国々に比べれば、それほど危機的状況ではないものの、人々が気をつけなければウイルスが一気に拡大するため、責任をもって行動し、ウイルスを抑え込むことが重要です。ウイルスの根絶は、リベリア政府、ひいては世界の厳しい課題となっていることはみなさんがご存知のとおりです。医療の専門家はウイルスがまだしばらく存続するだろうと予測しています。リベリア政府は、昨年(2020年に)実施した厳しい規制を緩め緩和策にし、引き続き住民が責任をもち予防規則に従って行動するよう働きかけています。
リベリアでの当初の住民の反応
リベリアで新型コロナウイルス感染症が報告されたとき、ウィズア村を含む多くのリベリアの住民たちは、2014年から2016年にかけて起こったエボラウイルス感染症大流行のときのようにウイルスに感染し、病気になった人たちを見かけなかったため、ウイルスが本当に存在すると信じませんでした。その後、多くの人がウイルスが存在すると認めるようになったものの、白人のみが感染するウイルスであり、黒人が感染するウイルスではないと思っていました。彼らは、黒人の遺伝子は強く、ウイルスへの耐性があると思っていたのです。感染者がする咳やくしゃみで飛ばす飛沫をとおして、ウイルスが人から人へ感染するのだから、リベリアでもウイルスが存在すると主張する人もいました。政府はステイホームの命令を出し、国内の公共の場での集会を制限しました。しかし、人々はマスクを着けずに市場に密集していました。テレビやラジオの世界のニュースを聞き、他国の人々がどのように気をつけ、衛生指針に従っているか知っているのにです。世界では新型コロナウイルスにより何百万人もの人が病気になり、亡くなっています。そのような状況とは対照的なリベリア人の無責任な行動にも関わらず、感染者数や死者数が少ないことから、人々はウイルスが本当にリベリアに存在するのかと疑うようになりました。
新型コロナウイルス感染症に関する住民の考えの変化
保健省やNGO、市民団体、人道支援組織等が新型コロナウイルス感染症の現実、人類への危険性、予防策についての啓発活動を行なった結果、現在リベリア人の大半はウイルスに対する意識を変え、ウイルスが現実に存在しリベリアにも存在すると信じるようになりました。
寄付した衛生用品の使用状況
新型コロナウイルス感染症との戦いに貢献するため、ダイヤモンド・フォー・ピースは89個の蛇口付きバケツ、89ダースの石鹸、246枚の現地製布マスクをウィズア村の73の家族、ウィズア村に隣接する16の村々に、2020年8月に寄付しました。
私たちがモニタリングを行ったところ、蛇口付バケツを受け取った家族の大半が、適切に使用していることが分かりました。彼らは毎日家の正面・裏手や井戸など重要な場所に蛇口付きバケツを置き、住民たちが利用しやすく、日常的に手を洗い続けることができるようにしています。バケツと共にそれぞれの家族が1ダースの石鹸を受け取りましたが、これらの石鹸は既に使用され無くなっています。しかし、彼らは手洗いを当たり前の日常的な習慣にしていくために、自分たちで石鹸を用意して使用しています。村落では、新型コロナウイルス感染症の感染者は報告されていませんが、住民の多くはそれを当たり前とは考えておらず、手を洗うことを習慣にしようとしています。
リベリア事務所のコーディネーターが2020年12月に村落を訪れた際、共同井戸の世話人が、住人の一人が井戸を利用する前、設置された蛇口付きバケツの水を使って手を洗うことを拒否したことに対して村長に文句を言っていたのを目撃しました。井戸を利用する前に手を洗うことを拒否した男性は、今後拒否しないよう注意され、次回同じことをしたら罰金を払わなければいけないと警告されたのです。
結びに
人々は、手洗いが流行中の新型コロナウイルス感染症や他の大流行した感染症を防ぐためだけのものではないことを認識する必要があります。手洗いは腸チフス、下痢、インフルエンザなどの他の多くの病気を防ぐための、日常的な習慣であるべきです。
医療の専門家は、新型コロナウイルス感染症はまだしばらく存在すると予測しているものの、他の大流行した感染症のようにいつかは過去のことになるでしょう。私たちのこれまでの観察と経験によると、リベリアの人々は日常的な手洗いに慣れていません。本当に手を洗わないといけないときにしか洗わないのです。エボラウイルスの大流行のとき、人々は生き残るために、頻繁に手を洗わなければいけませんでした。しかし、エボラウイルスが根絶された途端、再び手を洗わない生活に戻ってしまいました。新型コロナウイルス感染症においても同じです。リベリアの多くの村落で、人々はもはや以前のように手を洗っていません。蛇口付きバケツをお風呂や料理など他の目的に使うようになった人もいます。しかし、ウィズア村では住民がしっかりと私たちの寄付した蛇口付きバケツを手洗い用に使い続けているため、状況が少し違います。彼らは手洗いを習慣付けようとしているのです。
冒頭写真:新型コロナウイルス感染症や他の病気を防ぐために手を洗うウィズア村の子どもたち。ダイヤモンド・フォー・ピース撮影