リベリアからこんにちは。理事の相田です。
2016年10月25日から約1ヵ月間、ダイヤモンド採掘労働者自立支援プロジェクトを設計するためにリベリアで調査をしています。調査では、採掘労働者から話を聞くだけではなく、労働者の家族やダイヤモンド採掘地域の人々にもインタビューをしています。
さて、今日11月20日は「世界子どもの日」です。1954年に「子どもの権利条約」が国連によって採択されたことを祝し、制定されました。
今回は、「世界子どもの日」にちなんで、調査で垣間見たリベリアの子どもたちの日常についてお伝えします。
子どもたちは何を食べている?
労働者の家族や採掘地域の人々に、「毎日何を食べていますか」と質問すると、ほぼ全員がなぜか笑いながら「米!」と答えます。リベリア人は大人も子どもも米が大好きです。海外からの輸入米が広く流通していますが、リベリアでも米を栽培しています。米を主食に、キャッサバの葉と一緒に肉や魚を煮込んだシチューをかけて食べます(キャッサバの葉が、さつまいもの葉やオクラに変わるなど様々なバリエーションがあります)。1日の食事の回数は1~2回、調理は薪や炭を使って行います。食事の支度は女性の仕事です。10歳くらいになると、女の子たちは働く母親に変わり食事を作ることも多いです。時に、家計の懐事情が苦しくなると、自分の食事は抜いて、子どもたちに食べさせているという母親の言葉が印象的でした。
子どもたちはどのようなところに住んでいる?
今回訪問した地域では、コンクリートの家に住んでいる家族は少なく、ほとんどが土壁の家に住んでいました。日本のように電線を通じて電気を入手している家はなく(首都モンロビアなど都市の一部でのみ配電されています)、少し裕福な家庭は自家用発電機を使っています。しかし、ほとんどの家庭には発電機もなく、夜は懐中電灯を使って過ごします。また水道が自宅にひかれている家庭はなく、井戸水や川の水を使っています。入浴は、屋外に設置されたシャワールームを使います。バケツに水を汲んでシャワールームまで運び、水浴びをします。寒い時には、お湯を沸かします。また、近くの川で水浴びをする人も多いです。トイレが自宅にある家庭は少なく、家から少し離れた屋外で排泄をする人がほとんどです。
部屋の内部も見せてもらいました。一つのマットレスを両親と子どもたち(多いときには5~6人!)が使います。夜はマラリア対策として、蚊帳の中で眠ります(写真では、洋服がかけてある白いものが蚊帳)。
学校の様子
リベリアの教育制度は、日本と同じ6・3・3制です。小学1年生になる前に、幼稚園相当のクラスに3年間ほど通うことも多いです。幼稚園の1年目にあたる「ABC」クラスへの入学基準は言葉を話し始めていればOKということで、早い時には1歳半から通う場合もあるそうです。
リベリアの就学率に関する統計によると、初等教育の就学率は92%[1]、中等教育の就学率は78%[2]です。多くの子どもが途中で学校を辞めており、中退の理由として、地元の町に小学校はあっても、中学校、さらには高校がなく、通学のための交通費が払えない、別の町で面倒を見てくれる知り合いがいない、遠方への通学が危険なため親が通わせたくないということが挙げられます。
訪問した町のある学校は、幼稚園(3学年)、小学校(6学年)の全9クラス、全校児童135人がいますが、教員の数は二人だけでした。また別の村では、村に小学校はなく、昼間子どもたちは行くところもなく、遊んでいます。そんな状況を見て、「村に学校がないなら自分が作ろう」と立ち上がった女性に出会いました。彼女は毎晩2時間、村の子どもたちを集めてボランティアで「ABC」クラスを開いています。まずは学校に通えること、そして教育の質の改善が重要です。
薄明りの下で、学校のない村の子どもたちを集めた夜の「ABC」クラスの様子。写真右手の女性がボランティアで教えています。椅子は自宅から持ってきます。
保健医療の様子
リベリアでは、1,000 人中71人[3]が、5歳の誕生日を迎える前に命を落としています。日本と比較すると、約23倍の数です。主な死因は、マラリアや肺炎などの急性呼吸器感染症です。調査において「病気にかかった時に医療機関に行きますか」と質問したところ、多くの人が「行く」と答えていました。2014年にエボラウイルス病が大流行したリベリアですが、その際に自宅療養ではなく、体調が悪い時は医療機関を受診するという行動が広く推奨されたことも、高い医療機関受診(という回答)に影響しているのかもしれません。医療機関にかかるお金は基本的に無料ですが、手術などにはお金がかかります。医療機関を受診したものの、「手術を受けるお金がない」といって、治療を受けることができないという母親にも出会いました。
リベリアの子どもたちから学ぶこと
学校もない、電気もない、きれいな飲み水もない、トイレもない、、。持っているのは、穴のあいたボロボロの服と壊れたサンダル、、、。このような過酷な状況の中でも、リベリアの子どもたちはたくましく生きています。大量消費社会に生きる自分の生活を見つめ直し、便利だからといって使い捨てるのではなく、持っているものを大切に使うことの重要性を教えてくれます。
輝く笑顔を向けてくれる子どもたちの未来に少しでも貢献できるよう、リベリアでのDFPの活動を進めていきたいと思います。
冒頭写真:村で採れたオレンジをわけてくれました。
[1] 初等教育総就学率:年齢に関わらず、初等学校に就学する子どもの人数が、公式の初等学校就学年齢に相当する子どもの総人口に占める割合、世界子供白書 2016
[2] 中等教育総就学率:年齢に関わらず、中等学校に就学する子どもの人数が、公式の中等学校就学年齢に相当する子どもの総人口に占める割合、世界子供白書 2016
[3] Liberia: WHO statistical profile, http://www.who.int/gho/countries/lbr.pdf?ua=1 (2016年11月17日閲覧)