はじめに
WECMACOS(ウィズア村採掘・農業組合)はバポル州バーマ地区ウィズア村を拠点とする組合です。組合員の収入増と生活条件の改善に向け、2021年10月、養殖池の活動を開始し、3つの池を造営しました。2024年3月、最初の収穫を迎えました。熱狂に包まれた収穫となるはずでしたが、収穫の前に池から魚が盗まれ不毛な収穫となってしまいました。当初の計画では収穫が終わるとすぐに池を洗い稚魚を補充する予定でしたが、収穫が壊滅的な結果となり、組合員には活動への不満や失望が生まれたため、活動が一旦停止しました。とはいえ、ダイヤモンド・フォー・ピース(DFP)主導で議論を繰り返したところ、組合員の中には、正しい方法で進めれば成功できるという希望が芽生え、活動継続へ向けて勇気を取り戻しました。2024年7月下旬、組合員は池の洗浄を行い、稚魚を補充しました。
稚魚の補充に向けた養殖池の準備作業
WECMACOSでは養殖技術研修を受け、養殖池を洗浄して魚が生息しやすい環境へと改善する必要があることを学びました。これはとりわけ収穫後の時期に重要な作業です。初回収穫の2024年3月には、池の洗浄をしませんでしたが、熱心な組合員が7月24日と25日に集まり、稚魚の補充に向けて池の準備作業を行いました。池の周囲の草刈り、池の排水に続き、きれいな水質維持のため、池を洗浄して泥を除去しました。当初の予定では、持続的な養殖活動に向けた準備として、池の洗浄と稚魚の補充までを済ませることになっていました。ところが、実際には魚の収穫が得られて組合員たちは大変驚きました。池には販売できる大きさの魚が数多く見つかったため、収穫したのです。推定で500匹の魚が収穫されました。この量は、豊作が期待されながらも期待外れに終わった3月の82匹を大幅に上回る数でした。組合員たちは、3月には大きいサイズの魚がすべて盗難被害に遭った同じ池で、比較的短い期間(およそ4ヶ月間)にこれほどの量の魚が収穫できたことに大変驚いていました。予期せぬことに驚きながらも、収穫に大変興奮していました。組合員にはさらなるモチベーションが芽生え、池の手入れをしっかり行って盗難を防止できれば有望な未来が開けているという確信が生まれました。
収穫した魚は大半をWECMACOSの組合員に販売し、一部を組合員自身の試食用に分配しました。この売り上げは15,250リベリアドル(78.60米ドル)にのぼり、WECMACOSの会計担当者が保管しましたが、すでに養殖活動への再投資を計画しています。
稚魚の補充作業
組合員たちは、養殖池の洗浄と収穫の作業を進めながら稚魚をかき集め、池の洗浄が終わってから元に戻すべく、安全な場所に一時保管しました。洗浄作業の終了後に数えた7000匹以上のティラピアの稚魚を確認し、3つの池に戻しました。数えたのは戻した稚魚の数を確認し、一日当たりの餌の量を決めるためです。ただし、稚魚の数が多すぎたのと、泥にまみれて選別が難しいものがあったため、全数を数えるのは、頑張ったものの無理でした。見積もりでは元々、池には五千匹以上の稚魚がいましたので、戻した分と合わせ、三つの池には12,000匹以上のティラピアの稚魚がいたことになります。
初回の失敗した収穫では池にほとんど魚が残っていなかったのに、4ヶ月程度でどこからこんなにたくさんの稚魚が出てきたのかと、まことに目を見張らされます。現在の状況から適切に稚魚の管理を続け、盗難を防ぐことができれば、6ヶ月後には大きな収穫になるでしょう。
WECMACOS組合員の感想
モリス(組合長)
魚の収穫に成功して興奮しています。2024年3月に実施した初回の収穫を振り返ると、大変大きな違いがあったのに気づきます。初回の収穫は酷い結果になりましたが、2回目は大変印象的なものでした。これほどの量の収穫は当初の予定になく、想定外でした。とても嬉しいですし、意欲を刺激されます。自分で立てた計画に集中して実行すれば、たとえ計画通りの時期に利益が得られなくても、素晴らしいことが起こると気づきがありました。集中力と忍耐があれば継続できますし、利益はいつか必ず自分たちの手元にやってきます。今回の養殖活動を通じ、養殖池の準備と維持、餌の準備、魚の収穫、稚魚の戻し方の技術を学ぶことができました。今後この技術を活かして組合活動に取り組み、養殖活動を成功させていきたいと思います。前向きに進みながら組合員を定期的に鼓舞し、共通の目標達成に向けて活動への参加を促していくつもりです。最後に、DFPには私たちの能力向上を通じた継続的な技術支援に感謝します。
テレサ(組合員)
2回目の収穫は初回の収穫に比べてサプライズとなり、素晴らしいものでした。その一員になれたことを嬉しく思っています。私が養殖池に関わったのは池の準備作業でした(池の洗浄と稚魚の補充)。組合にとって幸いなことに魚を収穫することができました。魚の販売で組合に収益が入って嬉しかったです。収穫作業を通じて大事だなと私が考えていたことがあります。それは、一度関わると決めたことをたやすく投げ出すのは良いことではない、一度の失敗が活動そのものの終了を意味するわけではない、ということです。失敗することで、個人やグループは再度取り組み、活動成功に向けて別の方法を戦略的に立てることを考えます。そこで、私もこの組合のメンバーとして、適正な収益に向けて取り組みの方法を改善し、養殖池の適切な管理ができるよう、他の組合員と協力して取り組もうと思います。また、今回、組合員との共同作業から学んだ知識を生かし、養殖魚の餌の量を増やせるようにしたいと思います。DFPには、私たち組合員に向けて数多くの研修機会を提供してくれたことにとても感謝しています。私たちの生活、私たちの村が変貌できる日まで、パートナーとして一緒に作業に取り組んでいけるよう祈っています。
エマニュエル(組合員)
まず最初に、私のことを継続的に鼓舞してくれたDFPに感謝します。組合員としては数ヶ月前の初回の収穫に失望しました。初回の収穫が酷いものでしたので、組合の養殖活動に関与するのはもうやめようかとまで考えました。ですが、稚魚の補充からスタートした2回目の活動サイクルで考えが変わりました。前よりも積極姿勢を強めてこの養殖活動に関わり、一生懸命作業して組合の養殖活動を成功させようと思い直しました。以前、養殖の研修で学んだ知識を活用しながら、この村の収益を増やせるよう組合との共同作業を続けていく決意をしました。最後に、組合員たちへの呼びかけです。私たちの活動に加わって一緒に作業し、生活を顕著なレベルにまで改善し、DFPの支援による養殖活動を通じて村の発展を手助けしませんか。
おわりに
失敗するのは全く悪いことではありませんが、大切なのは失敗から何かを学んで失敗を繰り返さないことです。失敗の原因とその理由を特定できれば、同じ間違いを繰り返さないようにするには、同じことを異なった方法でどのように再試行すべきか、考えることができます。WECMACOSでは3年近くも収穫の成功を夢見て作業してきましたが、初回の収穫は期待と反する結果に終わりました。全くもって酷い結果でしたので、不満が爆発して活動を放棄する寸前でしたが、養殖事業の成功に向けては盗難対策が重要であり、特に力を入れる必要があることを学びました。盗難対策が簡単でないことも理解していますが、一致結束して協働で取り組めば成功できると信じています。