宝飾業界団体、米連邦取引委員会に対して「持続可能」の使用について厳格な規制を要請

 

【2023年4月26日 ロブ・ベイツ(JCK)】

米国宝飾業界の複数の団体は米連邦取引委員会(FTC)に対し、「グリーンウォッシュ」(環境に配慮した取り組みを行っているとうたっているが、実態が伴っていないこと)が蔓延する現状に対処すべく、宣伝用語として広範に用いられている持続可能/サステナブル、リサイクルゴールド(金)、カーボンニュートラル(工程における温室効果ガス排出量がプラスマイナスしてゼロ)などの言葉について、意味を明確化するか、場合によっては使用禁止とするよう要請しました。

この要請は、米連邦取引委員会からその「グリーンガイド」への意見提供の求めがあったことに応えたものであり、このガイドは環境に配慮した活動の宣伝方法に関する規則を含むもので、現在、内容の見直しが進められているところです。米連邦取引委員会に届いた意見はこちらで確認できます。

そのうち最も詳細な文書がジュエラーズ・ビジランス委員会(JVC)から提出されました。全米宝飾品評議会(業界団体の連合体)、エシカルメタルスミス(Ethical Metalsmiths)、宝飾業界における黒人連合(the Black in Jewelry Coalition)、国際貴金属宝飾品連盟(CIBJO)の他、12の団体がその21頁に渡る推奨事項を支持するとして名を連ねています。

この文書に記載された推奨事項には次のようなものがあります。

・持続可能/サステナブルという用語の使用を禁止すること。

「持続可能/サステナブルや持続可能性という用語はこれまで多用されていて誤用も多いため、消費者にとっては無意味なものになってしまったようだ」と、ジュエラーズ・ビジランス委員会は述べています。「皮肉なことに、いくつかの事例では、事情に精通した消費者から、問題の多い事業姿勢を示す危険信号と見られるまでになっており、ほぼ自動的に『グリーンウォッシュ』を想起させる言葉になっている」といいます。

ジュエラーズ・ビジランス委員会は米連邦取引委員会に対し、持続可能/サステナブルの用語使用を「断固としてやめさせる」よう要請し、営業宣伝活動からこれらの用語の排除へ向けて努力するよう求めました。「責任ある」の方がより適切な用語だとしていますが、「責任ある」を使う場合にも用語の「本質を定義すること」が必要だと強調しています。

・貴金属と宝石用原石にはリサイクルという用語使用を避けること。

ジュエラーズ・ビジランス委員会は、リサイクルを宝飾品の文脈では使うべきではないとしています。その理由は、伝統的にリサイクルは廃棄が前提の物品に使われる用語であり、宝飾品では原素材の廃棄処分は滅多に行われないためとしています。

「彫金師の作業台に残る原材料は再利用され、メレダイヤモンド(小粒ダイヤ)はグレード再評価や再カット処理され再販売され、作業台で集められた金属くずですらも、再利用にまわされるのが普通だから」といいます。

米連邦取引委員会が定めるリサイクル素材の現行の定義では、リサイクルと堂々と言えるのは「電子機器廃棄物」に含まれる金のみだ、とジュエラーズ・ビジランス委員会は注釈し、「これは、リサイクル貴金属の再精錬に使われる素材のごく一部でしかない(DFP編集部注:つまりリサイクル貴金属をリサイクルというのは間違い、の意)」としています。

またリサイクルゴールドはしばしば出所の不透明さが明るみに出されてきた、と付け加えています。

推奨事項が記載された文書は「究極的に消費者は、可能な限り害の少ない製品を選ぶ決定をしたいのです。現行のリサイクルという用語の使用では、宝飾品購買時に消費者が害の少ない製品の購買決定を論理的に行えないのです」と締めくくっています。

・ラボグロウンダイヤモンドが環境に優しいという宣伝を容認しないこと。

ジュエラーズ・ビジランス委員会の文書によると、市場では「ラボグロウンダイヤモンドは持続可能/サステナブル・・・で、環境にとってよりよい」と宣伝されているが、このどちらも真実とは証明されておらず、消費者の判断を誤らせる」といいます。

ラボグロウンダイヤモンドを採掘フリー(採掘をしないで製造された)とうたう企業もあり、その場合、「製品の製造に必要な部品や機材が採掘資源に由来することを知らずに」そうした宣伝をしている事例もあって、「そうした部品・機材に組み込まれる貴金属もまた採掘資源だ」と記載しています。

ジュエラーズ・ビジランス委員会がさらに求めたのは、「採掘が環境に対してどんな意味をもつのかの指針を設け、採掘された原料でできた製品を環境配慮の基準内でどう合法的に営業・宣伝したらよいかの指針を示すべき」ということです。

・カーボンニュートラルの宣伝に対しては十分な情報を要求すること。

「カーボンオフセット(排出量に見合った温室効果ガスの削減活動に投資することなどにより、排出される温室効果ガスを埋め合わせること)の中には全く無益なものがある。気候変動への対策やその低減をうたっていても実際には気候変動の増進に加担していることもある」といいます。「カーボンニュートラル認証の大半がオフセット(埋め合わせ)を基本としており、過去にサプライチェーン内で起きた現実を変えるものではなく、企業が排出削減しているかどうかを証明するものではない」としています。

「加えて、カーボンオフセットをうたっていても、中には、今後2年以上も実現できないような排出削減の埋め合わせを指して使われている事例もある。こうした宣伝は企業行動の実態からあまりにもかけ離れていて、消費者の購買決定における適切な情報ではない」。

同委員会はまた、2019年に米連邦取引委員会が8つの宝飾関連企業に送った警告文書が「業界への即時の影響」を及ぼしたことに着目し、「グリーンガイド」と「FTCジュエリーガイド」の双方を大幅に強化するよう求めています。

 

この他、グリーンガイドに関する意見を米連邦取引委員会へ提出したのは、アメリカ宝石取引協会(American Gem Trade Association, AGTA)、米国養殖真珠協会(Cultured Pearl Association of America, CPAA)、ブロガー「リサイクルゴールドのパラドックス(矛盾)」(Recycled Gold Paradox)、ウィスコンシン州の宝飾企業ハンナ・クック=ウォレス(Hanna Cook-Wallace)です。

アメリカ宝石取引協会の提出文書では、リサイクルという用語を貴金属や宝飾用原石に使うべきではないとしており、カーボンフリー(温室効果ガスを排出しない)、採掘フリー(採掘をしない)、無採掘、地元産などの用語に注意すべきとしています。ジュエラーズ・ビジランス委員会の提出文書との違いは、アメリカ宝石取引協会では、米連邦取引委員会に対し、国連ブルントラント委員会による持続可能性の定義に従うことを求めている点です。その定義とは「将来世代が将来の時点でのニーズを満たす可能性を損ねることなく、現世代のニーズを満たすこと」です。

米国養殖真珠協会は、「オーガニック原石」の例に見られるような非農業生産物をオーガニックと呼ぶことに関して、新たなガイドラインの構築を求めています。さらに、持続可能性という用語の新たな定義も要求しており、「唯一の生来的に持続可能な原石」と言えるのは真珠だと強調しています。

ブロガー「リサイクルゴールドのパラドックス」は、「リサイクルゴールド」の言葉がグリーンウォッシュに広範に使われている現状を指摘し、これを電化製品から再利用される金のみに限定すべきだと主張しています。提出文書によれば、それ以外はすべて、再加工された金と呼ぶべきとしています。

クック=ウォレスは、オーガニック原石の呼称を、骨、角、貝、サンゴ、真珠、ならびに、「宝飾品に使われる、直近まで生きていた生物体から製造ないし一部採取された生物体」を表す語として継続的に使用すべきだと求めています。持続可能/サステナブルの語はいかなる宝飾製品にも使うべきではないとしていますが、リサイクルについては、「中古宝飾品や相続品の目的変更、形式変更を表す」のであれば許容されるべきとしています。

 

 

※本記事は米国のメディア「JCK」ホームページに掲載されたものを、許諾を得た上でDFPにて翻訳したものです。

原文:「Industry Groups Ask FTC to Crack Down on Use of “Sustainable”」

https://www.jckonline.com/editorial-article/groups-ftc-ban-term-sustainable/(2023年6月5日閲覧)

 

冒頭写真:米連邦取引委員会(FTC)(フリー素材)