執筆者:ダイヤモンド・フォー・ピース・リベリアのスタッフ
リベリア共和国ウィズア村の手堀りダイヤモンド採掘権所有者達は、ダイヤモンド・フォー・ピースの支援を受け、多目的組合として組織され、「プレ組合」の資格を得ています。これまでに組合は、組合開発庁(CDA)による組合初期研修、ならびに鉱物・エネルギー省によるスマートマイニングの研修を受けました。
これらの研修は、世界銀行が主催するリベリア森林保全プロジェクトのもとで行われたものです。私たちもまた、組合に対して「チームビルディング」研修を行いました。これは彼らが強靭で成功できるチームをつくるためのスキルを身につけてもらうためです。
組合開発庁は、リベリアにおけるすべての組合の組織化と監督を担当する政府機関であり、組合に関連する必須研修を提供し、組合に組合資格証明書を授与します。組合が初期研修を受けると、組合開発庁はプレ組合許可証を授与します。この許可証の有効期間は6ヵ月で、組合が正式な組合資格を得るためにはその間に、看板を掲げた事務所の設立、事業計画の策定、銀行口座の開設が必要です。もし組合が6ヵ月たってもこれらの条件を満たせなければ、許可は失効し、組合として活動することはできなくなります。
ウィズア村の組合員は2018年はじめに、私たちの手ほどきを受けながら組合設立の手続きを開始しました。まだ正式な資格は得ていませんが、2019年1月に初期研修を受けた後、組織化されました。その際に加入と運営のための規則を定めた定款も作成しました。
組合員になるためには、18歳以上であり、少なくとも1つの有効な採掘権または1エーカーの農地を持っている必要があります(持つ予定でも可)。少なくとも1年に1株(50米ドル)を購入できることも条件です。
現在、組合員は28名(男性17名、女性11名)で、そのうち6名が農民、22名が採掘権所有者です。組合設立以来、組合員は組合の強化と活動の改善のため、さまざまな活動に取り組んできました。一定の進展はあったものの、多くの課題に直面しています。ダイヤモンド・フォー・ピースは現地のコーディネーターを通じて組合を訪問し、組合員の活動に指導・助言するなどの支援を行っています。
組合活動
プレ組合資格を持つ組合として、これまでの組合活動は、正式な組合資格を得るための条件を満たすことに重点を置いてきました。会議や議論を重ね、会費を拠出したり、株式を購入しています。正式な組合資格を取得するための条件となっている、事務所や看板の設置、事業計画書の策定、銀行口座の開設などの準備を進めています。また、資金調達し、組合の活動を支えるために、新規事業を開始しようとしています。
これまでの進捗
以下は、2019年末時点における、組合員が取り組んできた活動とその成果です。
定例会の開催
組合員は定期的な会議を開催することが重要だと考え、毎月2回の定例会を開催するよう努力しています。組合員全体会議のほかに、役員は必要に応じて会議を開いて問題を議論しています。
選挙
組合には、2019年1月に組合開発庁による初期研修を受けた後、民主的な選挙を経て就任した役員がいます。選出された役員は2年の任期を務め、その後新しい役員を選ぶため別の選挙が行われる予定です。役職は、1)組合長、2)副組合長、3)事務局長、4)財務局長、5)会計係、6)事業部長の6種類あり、役員の男女比は男性5人に対して女性1人です。
定款の作成
組合で許可されている行為と許可されていない行為を明記した法的文書を定款としています。組合の活動を導くようにできており、役員と組合員の役割や責任を説明し、組合加入の基準を設定しています。民主的な組織として、この定款が組合の統治手順で使われるよう、組合開発庁と協議しながら作成しました。作成した定款は組合開発庁によって認証されました。
事務所の場所探し
ウィズア村の支援により、組合は村の役場の中に事務所用の部屋を確保しました。しかし、部屋は不完全で改修工事が必要でした。組合は部屋の改修と清掃をしましたが、事務所としての使用開始前にペンキを塗って家具を設置したいと考えています。改修工事のために、組合は組合で積み立てた資金を使い必要な材料を購入し、組合員も一連の作業に参加し工事を行いました。
看板の設置
組合は、2枚の看板設置が義務付けられており、1枚はウィズア村に通じる交差点に、もう1枚は事務所前に設置します。看板を作成するためにウィズア村に住む地元の職人を雇いました。組合費と組合の株販売で集めた資金を使って、必要な材料を購入し、職人に支払いました。現在、1枚目の看板の印刷と設置は終わり、もう1枚については作業中ですが、資金調達が課題となっています。
直面している課題
組合はこれまである程度の進展を見ることができたものの、課題もあり、最大の課題は資金調達です。正式な組合資格を得るために事業計画を作成する必要がありますが、組合員の誰一人としてその計画を作成するための専門知識を持っていません。通常は、事業計画を作成するスキルを身に着けるために特別な訓練を受けますが、組合員の誰もその専門知識を持っていないため、事業計画の作成をしてもらうコンサルタントを雇おうとしています。何人かのコンサルタントと交渉をしましたが、なかなか予算内に収まる報酬で仕事をしてくれる相手が見つからず、難航しています。(注意:ダイヤモンド・フォー・ピースはこの状況を見て、組合が事業計画をつくれるよう支援を始めました。)
また、組合が正式な資格を得るためには、銀行口座を開設する必要があります。最寄りの銀行は遠く、車またはバイクで1時間半以上かかります。協同組合の定款、事業者登録証明書、認定証明書、公証された理事会決議書等の提出を求められました。銀行が組合の口座開設に慣れておらず、組合が持っていない書類を要求する場面もあり、なかなか話が通じないという場面もありました。
課題に直面する中での希望とは?
組合員は、正式な組合資格を得たいと強く願っているので、きっと取得できると信じています。個人個人で何かに取り組んでもうまくいかない経験があるので、組合というチームで取り組まなければ成功できないと思っています。仕事を成し遂げるために全力で取り組んではいます。決められた期間内に公式に組合として認められるための条件を満たすことはできないかもしれないと悩む一方、組合開発庁が期限を延ばしてもう少し時間をくれるのではないかと期待もしています。
おわりに
新しい組織を立ち上げるのは簡単なことではありません。ウィズア村の組合は多くの課題に直面しています。それは単に、まだ組織として強くなく、組合員の大半がビジョンを完全には把握していなかったり、組合が成功したら得られるだろう恩恵が見えていなかったりするからです。彼らのような人々に対しては、組合が完全に確立され、活動の実際の恩恵が見えるようになるまで、必要な技術支援をしていく必要があります。さもなければ、彼らはあきらめてしまうでしょう。ダイヤモンド・フォー・ピースは、組合と緊密に連携し、正式な組合資格が得られるよう技術的な支援を行っています。
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冒頭写真:組合の役員との会合の様子(ダイヤモンド・フォー・ピース撮影、2019年)