【2015年3月23日(月)アンゴラ=ラファエル・マルケス・デ・モライス(ガーディアン)】
~アンゴラでジャーナリストとして仕事をするのは困難だ。私は政治的腐敗と戦う。なぜなら腐敗は政府が社会を抑圧するための最も洗練された武器だからである。ラファエル・マルケス・デ・モライス~
私の名前はラファエル・マルケス・デ・モライス、アフリカ南西部に位置するアンゴラのジャーナリストです。
私は今週にも収監されるかもしれません。
それは私がアンゴラのルンダスというダイヤモンドが豊富に産出される地域における人権侵害を暴露する本を2011年に書いたからです。
9つの名誉毀損の容疑で私を審理する裁判の最初の公判で、国務大臣であり大統領府情報局長のコペリパ将軍を含む7人の強力な将官たちが、明日証言台に立ちます。
彼らは警備会社を共同所有しており、その会社の職員が多くの殺人や拷問を実行したことを私は著書に記しました。
彼らはまた、ダイヤモンドの利権を持つ、国も出資する合弁事業の大株主であり、そこではあらゆる悪事が行われました。
私は恐れてはいないし、自分の仕事を誇りに思っています。
私が最初に裁判所の被告席に座ったのは1999年、大統領を独裁者であり腐敗した男だと名指しした時でした。
彼は先ず私を投獄しました。そして私を釈放した日に私を告発しました。
収監されていた43日間、私は牢獄の中で行われる様々な虐待を目撃し、それらを内外に向けて発信し続けました。
その行為は私に人権の擁護者としての評判を与えました。
牢獄での体験は、私に人権とは何かということを教えてくれたのです。
昨年、13歳の息子がどうして私が仕事に就くことができないのか尋ねました。
私がキッチンでパソコンと多くの時間を費やしていることを彼は心配したのでしょう。
一方で、彼は私の作る料理を褒めてくれますが。
政府は、私のジャーナリストとしての能力を破壊するために、何年にも亘って私を自宅キッチンに閉じ込めたのです。
家の外で忘れることなく永遠に私を監視し、情報源から切り離し、私を社会的に孤立させようと通信手段を監視しているので、最近はキッチンが私の仕事場になっています。
玉ねぎを切ったりニンニクを潰したりしている間に、私はアンゴラの高官の腐敗や人権侵害を調査します。
これが私の仕事ですが、私が正直であること、貧困であったり社会的排除を受けていることについて、私が恥じるよう望む者もいます。
私の息子もそのような圧力を感じていたのでしょう。
腐敗と人権侵害の二つの問題がどうして非常に重要なのか説明しなければなりません。
人間の命がアンゴラではおとしめられています。もっともアンゴラの支配エリートの命ならば話は別ですが。
この国は2014年まで過去7年間世界で最も経済が急成長している10か国のうちの一つですが、一方で、今アンゴラは世界で幼児死亡率が最も高い国になりました。
豊富な石油やダイヤモンドによって得た潤沢な資金は、主に賄賂や政府の広報活動のために使われており、「高い経済成長率と高い幼児死亡率」という逆説は、国内でも海外でも問題視されていないようです。
政治的なリーダーや国民が人命を大切にしない国では、社会共通の利益/公共の利益といったことはほぼ実現することはできません。それは支配者と国民、現実の間の断絶を継続させ、支配者は権力を濫用し国の資源を分捕り、人びとを虐げる権利があるように感じてしまうのです。
私は政治的腐敗と戦います。
なぜなら腐敗は政府が社会を抑圧し市民を堕落させる最も洗練された武器だからです。
アンゴラでジャーナリストであることはいずれにせよ問題をはらんでいます。
ジャーナリストの大多数は国営メディアで働いており、彼らの仕事は政府の宣伝活動です。
政府は、それらのジャーナリストに寛大な報酬を与えます。しかしそのようなジャーナリストは一般の人びとから嫌われています。
他方、民間の小規模なメディアで働くジャーナリストもいますが、ほとんどはメディアの所有者と政府高官とのコネクションによって、間接的に政府の支配下に置かれています。そのようなジャーナリストは自己検閲をして政府の宣伝を報道し、裕福な生活を送ることができます。
これらのジャーナリストは、政府側に取り込まれる可能性が高いと批判されることが多く、また政府の動きに対しても無関心です。
そして、残るジャーナリストのカテゴリーは社会的な不適応者です。これらの人びとは公然と一貫して政府に立ち向かっている対極的な人物です。
アンゴラにおいては、メディアに報道される真実と虚構を見分ける努力を日常的にしなければなりません。
ジャーナリストは信用されていないのです。
しかしジャーナリズムのプロとしての基準を確立し、独立ジャーナリストの活動の場を創るために、私は調査をしながら報道する仕事に従事しています。
名誉毀損の罪に関わる9つの容疑に対応するに際して、私が巻き込まれている不条理な状況と取り組まなければなりません。
私が起訴されているのは、公式には自分の著書の内容が理由なのではなく、幾つかの出来事に関して将軍たちの道徳的な責任について私が苦情を呈したからであり、それはすなわち国家と私の対立なのです。
将軍たちは最初ポルトガルで私を告訴しましたが、その訴訟は2013年に棄却されました。
彼らはアンゴラで同じ内容で私を告訴していますが、アンゴラの憲法の下では同じ事実について、私を二度告訴することはできないことになっています(しかし、実際には告訴しています)。たとえ最初の告訴がポルトガルであったとしても同様のはずです。
息子は私が仕事を持っていることを今は理解しており、「どのようにしてこの状況を変えることができるの」と尋ねます。
彼はまた私が作る食事の見栄えを良くするよう望み、「グルメの食べ物のように」と彼は言います。
私は新しいレシピを持っています。それはキッチンでの料理とジャーナリスト活動の二つの仕事の技術を磨くことです。
ツイッター名@rafaelmdemoraisによってラファエル・マルケス・デ・モライスをフォローすることができます。
※本記事は英国の新聞「The Guardian」に掲載されたものをDFPにて翻訳したものです。
原文:「This week I may be jailed for writing a book on human rights abuses 」 Courtesy of Guardian News & Media Ltd.
http://www.theguardian.com/commentisfree/2015/mar/23/this-week-i-may-be-jailed-for-writing-a-book-on-human-rights-abuses
冒頭写真:アンゴラのダイヤモンド採掘場(Olivier Polet/Corbis)