ブロックチェーンは手掘りダイヤモンドサプライチェーンの解決策になりえるか

ここ数年で“ブロックチェーン”という言葉が世界的に広く知られるようになりました。ブロックチェーンと聞くと、ビットコインのような仮想通貨を想像する方が多いと思いますが、実はブロックチェーン技術には様々な使い方があるのです。

ブロックチェーン技術とは?

“ブロックチェーンとは、経済取引を記録する永続的な電子台帳で、金銭取引だけでなく、ほぼすべての有価物を記録するようにプログラムされているものです。”(『Blockchain Revolution』ドン&アレックス・タプスコット,2016年)

ブロックチェーンは不正・改ざん防止のため、勝手に開封することができません。データは分散型電子台帳に記録され、またそのデータはシステム上の関係者との合意をもって更新されます。異なる場所にある複数のコンピュータに情報が登録されるため、改ざんがほぼ不可能という特性を持っています。
下の動画はブロックチェーン技術を解説したものです。

サプライチェーンマネジメントに変革を

ブロックチェーンはサプライチェーン上の透明性やトレーサビリティ構築などの分野でも活用することができます。特定の商品のサプライチェーン上における関係者は、その商品情報や取引を記録、蓄積、譲渡、確認、そして共有することができます。これにより、より効率的なマネジメントを実現できるとともに、記録の際の人為的ミスも減らすことができるのです。実際にこの技術を既に導入している農産物等のサプライチェーンも存在します。

ダイヤモンドのサプライチェーンにおける活用

ブロックチェーンは、不透明なサプライチェーンが問題視されているダイヤモンド産業においても活用することができます。エシカルジュエラー(倫理的な宝石商)や消費者がダイヤモンドの起源を知りたいと思っても、現在はそれを明らかにすることはほぼ不可能です。下の動画は、ダイヤモンド産業におけるブロックチェーンの活用を説明したものです(英語)。

ダイヤモンドのサプライチェーン問題がブロックチェーンによって解決できれば、素晴らしいことです。ブロックチェーン技術が変革をもたらすことができれば、まさに奇跡的な解決策となるでしょう。果たしてその現実はどうなのでしょうか。

手掘りダイヤモンド採掘現場におけるブロックチェーン活用の可能性

ダイヤモンドを誰がどこで採掘したのか、誰がどこで加工し、誰がそのダイヤモンドを使って商品にしたのか。これらを知ることにより、初めてそのダイヤモンドが紛争やテロ活動の資金源になっていないか、人道的・環境的配慮の下で作られたものなのかを知ることができます。採掘されたダイヤモンドがどのような過程を経てやってきたのかを知ることができるため、ブロックチェーン技術がこのような形でダイヤモンド産業に応用されることには賛成です。

一方で、電子台帳に誤った情報が記録される可能性がないとは言いきれません。他の鉱山で採掘されたダイヤモンドと混ざらないよう、セキュリティ対策が講じられた大規模な鉱山もあります。そのような場所においては、正確な情報(採掘された鉱山)を記録することは可能であるかもしれません。

しかし、柵や防犯カメラのない、また監視員もいない手掘りダイヤモンド鉱山ではどうでしょう。例えば、採掘者がダイヤモンドを外部で購入し持ち込み、あたかも彼の鉱山で採掘したものであると虚偽の報告をしたとします。この場合、電子台帳には事実とは異なる情報が記録されることになります。このように、サプライチェーン上の何者かによってサプライチェーン自体の信用性が失われてしまうことも考えられるのです。

リベリアの手堀りダイヤモンド鉱山

ダイヤモンド・フォー・ピースが活動しているリベリアでは手掘り採掘者は貧困状態にあるため、それがたとえ不正だとしても、利益を得るためなら手段を選ばない可能性もあります。しかし、生きるために必死な彼らを責めるつもりはありません。私たちはまず、誤った情報が台帳に更新されないためのシステムを作り出す必要があります。低コストでこのシステムを作り出し、持続的に運用していくためにはどうしたらよいのでしょうか。

リベリアの手掘りダイヤモンド採掘地域にある家
リベリアの手掘りダイヤモンド採掘地域にある共用水浴び場

監視カメラを鉱山に設置すればよいと言う人もいます。しかし、リベリアの手掘りダイヤモンド採掘地域には電気が通っておらず、電気を使うにはガソリンや発電機を持ち込んで常時運用する必要があります。さらに手掘り鉱山はそれぞれが離れた場所にあるため、各鉱山に発電機や監視カメラを設置しなければなりません。そもそもその費用を誰が払うのかという課題の他、ガソリンがなくなり補給するまでの間、発電機が使えなくなることを容易に予想できます。

ブロックチェーンを用いたサプライチェーンの運営には、多くのコンピュータを必要とするため、多くの電力エネルギーを使用し環境によくないという声もあります。さらに、ブロックチェーンの提供企業によっては高額な使用料がかかるので、手掘り採掘者や彼らを支援する団体が支払えるのかという課題もあります。

ブロックチェーンはまだ新しい技術のため、サプライチェーン透明化に使用するには課題もありますが、アナログでの解決方法と合わせ、今後さらに発展していくでしょう。また、ブロックチェーンではないがサプライチェーン透明化に資する類似技術もあります。手掘りダイヤモンドのサプライチェーン透明化において、ブロックチェーン技術が決定打になるとは現時点では言えませんが、推移を見守っていこうと思います。