執筆:ダイヤモンド・フォー・ピース・リベリア スタッフ
概要
ダイヤモンド・フォー・ピース(DFP)は、ダイヤモンド手掘り採掘権所有者や採掘労働者が、地元投資家への依存と貧困の悪循環に陥っていることを突き止めました。採掘権所有者とは、採掘現場を所有、運営するための採掘権を持っている(あるいは持っているはずの)リベリア人男女です。採掘労働者は主に男性で、実際にダイヤモンドの採掘をする人です。一方地元投資家は、採掘活動に資金や道具などの支援を行い、出資者と呼ばれています。出資者は必ずしも仲買人の免許を持っているわけではありませんが、資金や道具の提供の見返りとして、採掘されたダイヤモンドを自分たちに都合のいい低価格で買い取ります。ですから、採掘権所有者と労働者にとって、自己資金で自分たちの採掘活動を運営し、そして採掘したダイヤモンドを自分たちで決めた買い手に売ることこそ最大の望みなのです。
そんな状況の中で、養蜂は、採掘権所有者と採掘労働者の収入を効率的に増やす副業となるのではないかと私たちは考えています。彼らが暮らしている森林を保護できるという利点もあります。私たちは、養蜂の研修を提供してくれるリベリアのNGO、ならびに採取したはちみつの全てを公正な価格で買い取ってくれる業者を探し出しました。そしてTOYO TYREグループ環境保護基金及びジュエリーデザイナー春高未欧氏の資金提供を受け、ダイヤモンド・フォー・ピースはリベリアのウイズア村の組合に養蜂活動を導入しています。
養蜂、あるいは蜂の飼育は、はちみつ作りのためにミツバチを飼い慣らすという農作業の一形態です。ダイヤモンド手掘り採掘労働者にとっても、その他の地域住民にとっても、地元で効果的かつ効率的に収入を得ることができる方法の一つです。米国開発庁(USAID)が行った調査によると、米国やヨーロッパにおけるはちみつ生産は減少しており、輸入はちみつの需要はあるということです。同時に、リベリア国内でもはちみつには高い需要があります。養蜂の研修を行うNGOのユニバーサル・アウトリーチ・ファンデーション(UOF)は、リベリア国内市場を満足させるには5年から10年程度かかるだろうと見込んでいます。はちみつ市場の効率性と有効性を考えれば、ダイヤモンド手掘り採掘労働者が養蜂に従事することによって収入を得て、仕事と生活を改善させることは実現可能なことなのです。
DFPとUOFの連携
組合員が養蜂研修をきちんと受けられるように、私たちはUOFを講師として迎え、研修を実施しました。UOFと私たちは連携して70名の参加者に対し、2020年9月、5日間の養蜂初級者研修を行いました。研修後も、UOFとDFPは毎月実務研修(OJT)を実施し、参加者が養蜂を習得するまで引き続きサポートを行っています。
研修参加者
研修は20人の公式参加者、50人のオブザーバー、計70人を対象としました。20人の公式参加者には、組合員7名、女性グループメンバー5名、採掘労働者グループメンバー4名、村のリーダーたち4名がいました。オブザーバーには組合員16名、採掘労働者グループメンバー9名、女性グループメンバー21名、そして村のリーダーたち4名がいました。さらにたくさんの研修参加希望者もおり、意気込みの大きさと研修への高い関心がうかがえました。
研修活動
研修は3つの活動で構成されました。クラスルームでの討論、実際にミツバチの巣箱を森に設置する野外活動、そして巣箱の作成です。クラスルームの討論では、蜂のライフサイクル、蜂の行動、蜂の種類や仕事、そしてどのように安全に養蜂を行うか、どう巣箱を管理するかなどを学びます。
研修の第1日目、講師はまず始めに、養蜂が収入を生む非常に重要な活動であり、村全体に経済的効果をもたらすものであることを話しました。参加者はこのセッションで一つ一つの群れに生息する3種類の蜂、つまり女王蜂、雄蜂、働き蜂について学びました。女王蜂はすべての産卵を行う母蜂で、毎日1000個もの卵を産みます。また、女王蜂は働き蜂の行動に指令を出します。雄蜂の唯一の仕事は、女王蜂と交尾し卵を作ることです。働き蜂は巣における作業すべてに携わっており、はちみつを作るために花粉と花のみつを収集します。
その後講師は参加者を野外に連れ出し、用地を選ばせました。この演習で参加者は、開花している木々や水に気をつけるよう教わりました。この2つが養蜂の成功を大きく支える要因だからです。参加者はさらにアリ、シロアリなどといった蜂の敵にも注意することを教わりました。シロアリは蜂の巣を食べつくしてしまいますし、アリは蜂を追い出してしまうのです。
2日目、参加者は1日目の活動を振り返り、蜂の巣の管理方法と蜂の飼育をいかに安全に行うかを学習しました。討論の後参加者は野外に移動し、トレーナーの監督のもと、既製の蜂の巣箱の設置演習を行い、現場に蜂の巣箱を設置する手法を学びました。
3日目、参加者は2日目の活動を振り返り、野外演習での経験について話し合い、引き続き蜂の巣箱の設置演習を行いました。
4日目、参加者は再び野外活動の経験を話し合った後、巣箱の設置作業を続けました。
そして5日目、講師は丸一日を使って、木の板で蜂の巣箱を作る方法を教えました。これは研修に参加している男女が一緒に取り組む興味深い実習でした。彼らは、のこぎりやかなづちを使い、木を切ったりつなぎ合わせたりして巣箱の型を作るために必要な技術や測量について学びました。
[謝辞]日本人ジュエリーデザイナー春高未欧氏の資金提供により、巣箱を作成するため150枚の厚板等を購入しました。研修参加者と私たちは心より感謝しています。
5日間の研修を終えて
参加者全員が研修に高い関心を示し演習を大いに楽しみました。研修期間中は非常に意欲的でした。参加者は、集合時間を守り、進んで課題をすべて仕上げようとしていました。研修終了後も彼らはもっと蜂の巣箱を作るため、追加の板や箱の上に置く棒、それに巣箱を雨から守る亜鉛板を私たちに頼んできたのでした。
彼らにとってこの研修は、極度の貧困から脱する経済的救済を探求する後押しなのです。組合、女性グループ、採掘労働者グループ、村のリーダーたちは、自分たちにこのような一歩を踏み出せる機会を与えてくれたことに対し、私たちや関係者たちに大変感謝してくれています。
冒頭写真:森に巣箱を設置する実習の後、カメラに向かってポーズをとる研修参加者たち(撮影:ダイヤモンド・フォー・ピース)