ウィズア村での養蜂事前調査

執筆:ダイヤモンド・フォー・ピース・リベリア スタッフ

採掘者の課題と養蜂活動

ダイヤモンド・フォー・ピースと、ユニバーサル・アウトリーチ・ファンデーション (UOF)は、ウィズア村のダイヤモンド採掘者や地域の住民の、所得の向上やより良い生活のために、養蜂基礎技術研修を開始します。

ダイヤモンド・フォー・ピースはウィズア村の組合や採掘労働者グループ、女性グループ、村のリーダーを通し、ダイヤモンド採掘者の仕事や生活環境を向上させるために技術支援を提供しています。

組合は、ダイヤモンド採掘権所有者(男女を問わない)と農民で構成されています。この他、ダイヤモンドを掘る労働者たちから成る採掘労働者グループや女性グループが、準組合員となっています。

ダイヤモンド採掘権所有者や採掘労働者は、彼らを搾取する出資者に永続的に依存せざるをえない悪循環に陥っています。出資者というのは、ほとんどがリベリア人で、採掘活動をするための資金の一部や道具を提供する見返りに、採掘されたダイヤモンドを買い取る人たちのことです。彼らは自分たちに都合のいい低価格でダイヤモンドを買い取るので、採掘者は適正利益を得ることができません。また、大半の出資者は仲買人の免許を持っておらず、ダイヤモンドを闇売買しています(リベリアで免許を持たずにダイヤモンド取引をするのは違法です)。

採掘権所有者や採掘労働者はその問題を理解しており、出資者との関係を解消したいのです。その方法の一つは、労働者が経済的に自立することです。

ダイヤモンド採掘者を支援するにあたり、ダイヤモンド・フォー・ピースは養蜂業が彼らの収入を効率的に向上し、自らの採掘事業を自分達の資金で実施することにつながる一つの方法だと考えています。

野生の蜂しか知らないウィズア村の人々

養蜂は、はちみつを採取するために人工の巣を作り、ミツバチの群衆を養うことです。しかし、ウィズア村の人たちにとって、蜂を育てるというのは奇妙に思えることです。おそらく多くのリベリア人にとってもそうでしょう。野生の蜂しか知らない人にとっては、蜂を飼い慣らせるなど思いもよらないことなのです。ほとんどのリベリア人にとって、蜂は人間に危害を加えたり命を奪うこともあるというイメージしかありません。ひと握りの勇敢な人だけが、勇気を出してはちみつを採るために野生の蜂の巣を探します。

養蜂はとても効率的です。養蜂農家の人たちは巣箱さえ設置出来れば、週に10分ほどきちんと巣箱の世話をすればよいだけで、そんなにたくさんの仕事はないのです。私たちがダイヤモンド採掘者の副業として効果的かつ効率的に収入を上げて生活環境を向上させる良い方法だと思った理由はそこにあります。

 

養蜂事業に関する地域の人々との事前打ち合わせ・調査

ダイヤモンド・フォー・ピースとUOFはウィズア村を訪ね、関係者とともに地域で会議を開き、その中で養蜂活動について説明しました。養蜂は効率的で、それほどのストレスもなく経済的な利益になり、熱帯雨林の保護*にもなり地域住民には好都合であること。そして蜂は危険ですが、専門の技術と設備があれば害なく飼い慣らせることです。

*リベリアは熱帯雨林を有する国ですが、採掘・木材販売等のため熱帯雨林が減少しています。より多くのはちみつを採取するには、より多くの木が必要なため、養蜂は熱帯雨林を保護するきっかけになります。

TOYO TIREグループ環境保護基金の助成金により、ダイヤモンド・フォー・ピースとUOFが11カ月に渡る初心者むけ研修およびOJTを実施し、彼らが養蜂の基礎技術を得られるよう運営していきます。ダイヤモンド・フォー・ピースは特に事業の管理・調整・モニタリングを行い、養蜂で使用する道具を組合に引き渡し、組合による道具の管理と適正な使用を指導します。

養蜂の利点を理解したウィズア地域の関係者は、本事業は良い結果を生み出してくれるだろうと期待しています。

ウィズア地域関係者たちとの打ち合わせの様子

 

養蜂事前調査

よりよい養蜂活動の運営にあたり、事前調査を実施し対象地域での成功の可能性を評価する必要がありました。チームはウィズア村を訪れ、主に下記について調査を行いました。

  1. 天然資源の量や知識:樹木数、水資源数、人々の蜂に関する知識量など
  2. 地域で伝統的に用いられている養蜂技術
  3. 営業環境:本事業で提供する販売方法以外のはちみつ市場へのアクセスの有無
  4. 地域の人口
  5. 雇用の機会

事前調査を行うにあたり、チームは地域の関係者たちと打ち合わせの場を設け、養蜂活動と養蜂事業を受け入れることについて話し合いました。ミツバチを飼い慣らすための自然環境や養蜂の知識や野生の蜂の捕獲の経験があるか、雇用主や事業者としての資質などを調べるために個人面談も行いました。

 

調査で明らかになったこと

調査の結果から、ウィズア村は養蜂活動に適する地域であることがわかりました。川やせせらぎ、森、果樹などの天然資源が豊富にあり、ミツバチを飼うには最適な環境であることが明らかになりました。地域の関係者たちは養蜂事業が利益を生み出し効率が良いことに喜び、参加したいとの気持ちを表明してくれました。本養蜂事業では、はちみつの買取も保証されています。リベリア・ピュア・ハニーというUOFと連携する団体が、将来彼らが作り出すはちみつを適正価格で買い取る予定だからです。

養蜂に有用な川のひとつ
森にある果樹(オレンジ、マンゴー、ライムなど)

新事業に向けて

リベリアの手掘りダイヤモンド採掘者たちは貧困の中で暮らしています。彼らは、搾取や権利の乱用などが横行する状況下に置かれているのです。それでもまともな生活を営むことを目標に、貧困から抜け出す努力をしています。ダイヤモンド・フォー・ピースは手掘りダイヤモンド産業の労働者たちが自立するまで支援し続けます。ウィズア村の人々は、地域に養蜂事業を根付かせようと取り組む私たち団体や協力者たちに感謝してくれています。人々は、新しい事業に強い期待を持ち、養蜂の開始と収穫の恵みが待ちきれないそうです。