はじめに
ウィズア村のダイヤモンド手掘り採掘権所有者や採掘労働者は何十年もの間、貧困の罠に陥ってきました。彼らはダイヤモンドを採掘・販売していますが、生活は一向に改善されていません。彼らは劣悪な労働環境をずいぶん前から認識し、改善しようとしてきましたが、うまくいきませんでした。労働環境を改善できなかった理由の1つは、彼らが個々で行動していたためです。
2018年にダイヤモンド・フォー・ピース(DFP)は、ウィズア村の採掘権所有者や採掘労働者がともに協力し合い、共通課題を解決できるようにするため組合設立に向けて支援し始めました。彼らは多目的組合を結成し、ウィズア村採掘・農業組合(WECMACOS)と名付けました。
2019年1月にリベリア政府(鉱物・エネルギー省(MME)、森林開発庁(FDA)、組合開発庁(CDA))は世界銀行から資金を得て、ウィズア村や他の採掘地域で組合化するための必須研修を実施しました。研修後、組合開発庁から「プレ組合」の資格を取得したウィズア村採掘・農業組合は、正式な組合資格の取得を目指します。正式な組合資格の取得には、1)事務所の設立、2)3つの看板の設置、3)組合名での銀行口座の開設、4)定款の作成、5)民主的な役員選挙の実施が必要でした。ウィズア村採掘・農業組合は、DFPの手ほどきを受けながら、正式な組合資格を得るために必要な条件を満たすための活動を行ってきました。
正式な組合資格取得までには紆余曲折ありましたが、2021年8月4日にウィズア村採掘・農業組合は組合開発庁からその資格を取得することができました。DFPは、組合開発庁によるウィズア村採掘・農業組合への資格授与の式典開催を支援しました。
授与式の出席者は、ウィズア村採掘・農業組合の役員と組合員、採掘労働者グループ、女性グループ、地域の人々、村長、村の行政官、DFP、組合開発庁の職員等でした。
組合開発庁の概要
授与式では、組合開発庁の現場サービス局長が組合開発庁について簡単に紹介し、スピーチの冒頭で「みなさんの、みなさんの組合」というスローガンを唱え、出席者が「みんなの組合」と答えました。
~現場サービス局長のスピーチ~
リベリアでの組合活動の始まりは1936年に遡ります。これまで私たちはリベリアで組合の重要性を理解していなかった多くの市民にその重要性を理解してもらうため、何度も情熱をもって組合開発庁の取り組みを話してきました。ダイヤモンド採掘が盛んなウィズア村はこの国の経済的支柱であり、ようやく組合設立に至りました。
組合開発庁は、農業だけでなくすべての分野において、国の組合活動を支援します。たとえば組合研修を実施し、専門的スキルや組合運営のノウハウを教えます。組合開発庁が条件を満たした組合に正式な組合資格を授与すると、その組合はリベリアの組合法に基づいて法的に組合となります。その後も組合開発庁は、組合活動が組合法に沿って機能し、組合員や地域社会の人々の生活を向上させているかを確認するために追跡調査・監査します。
ウィズア村採掘・農業組合の概要
ウィズア村採掘・農業組合の組合長がスピーチを行いました。
~組合長のスピーチ~
DFPの支援のもと、ウィズア村採掘・農業組合は2018年末に設立されました。現在、組合員は39名(男性26名、女性13名)です。私たちは2019年の組合設立のための必須研修後に、定款を作成し、民主的な役員選挙を実施し、有効期間6ヵ月の「プレ組合」の資格を取得しました。組合の重要性を理解していない採掘権所有者が多かったことや、新型コロナウイルス感染症の影響で、当初の期限内に正式な組合資格取得のための条件を満たすことができませんでしたが、ウィズア村採掘・農業組合はDFPの手ほどきも受けながら、最終的に必要条件をすべて満たし、正式な組合資格を取得しました。DFP、組合開発庁、鉱物・エネルギー省、森林開発庁のご支援に深く感謝します。手掘り採掘権所有者や採掘労働者、村民のみなさん、ウィズア村採掘・労働組合は組合員になりたいすべての人を歓迎します。ウィズア村発展のために、村民は採掘・農業組合に参加すべきです。
DFPの支援
続いてリベリア事務所のコーディネーターがスピーチを行いました。
~コーディネーターのスピーチ~
私たちは、人道・環境配慮の上でダイヤモンドが採掘・カット・製造される社会の実現を目指して活動しています。ダイヤモンドは愛の象徴ですが、一部の地域では紛争の動機や資金源となっています。ダイヤモンド手掘り採掘労働者が適正に採掘作業の報酬を得ていないという事実もあります。私たちはウィズア村採掘・農業組合と協力して、採掘権所有者や採掘労働者が自立し、自らの採掘活動の資金を賄えるようにするために支援しています。私たちは、養蜂、養殖業、石けんの製造・販売、米や油の販売などの所得向上活動のノウハウを組合を通して伝授しています。
正式な組合資格の授与
組合開発庁初の女性長官がウィズア村採掘・農業組合に正式な組合資格を授与しました。
長官はスピーチとともに、「男性と女性が寄り添って歩けば、実際に起こっている事実が見えるようになる」という意味の歌を歌いました。歌詞の「私たちのことを私たち抜きで決めないで」というフレーズは、組合員や村民への励ましの言葉となりました。
ウィズア村のダイヤモンド採掘の歴史は1956年に遡ります。ウィズア村のダイヤモンドはリベリア国内外の人々を豊かにしてきましたが、ウィズア村自体は発展途上のままです。長官は、村の発展が村民と組合員の共通の利益であり、個々人ではなく協力して取り組むことが重要だと強調し、「望むものを決めなければ、何も得ることはできません。誰かが手を差し伸べてくれているときほど、人は自分で努力しようとします。みんなが忠誠を誓えるような組合にしてください。最初は組合に参加しているだけという認識の人もいると思いますが、徐々にその意義を理解し成果をあげることができるようになるでしょう」と述べました。
ウィズア村採掘・農業組合の役員が就任の宣誓を行い、長官が組合長に正式な組合資格証書を授与しました。
おわりに
正式な組合資格の取得は、ウィズア村採掘・農業組合、DFP、すべての関係者にとって重要な出来事であり、ウィズア村採掘・農業組合の正式な始まりを示します。組合員は、目標達成と村の発展のために一致団結していきます。DFPも同組合が成功するため、支援を継続していきます。
冒頭写真:ウィズア村採掘・農業組合の役員達が組合資格認定証を掲げる様子(ダイヤモンド・フォー・ピース撮影)