はじめに
ダイヤモンド・フォー・ピース(DFP)は、リベリア西部地域にて人権・環境に配慮して採掘されるフェアなダイヤモンドを実現するための活動を始めます。活動の対象村を選定するにあたり、これまで約1年をかけて候補4村の詳細調査及び村の採掘関係者や村人と合意形成を図ってきました。候補村として挙げられた4村は、バポル州のウィズアとベレパラム、グランドケープマウント州のメイボン・ジンベクとゴンドータウンです。DFPが定めた選定基準と候補村の実績ややる気に基づいて、DFPはウィズアを活動対象村として選びました。ウィズアの採掘関係者が事業に向けてどの程度準備が出来ているのかと、これまでの進捗状況について、本記事でご紹介します。
組合組織について
DFPが支援する手掘りダイヤモンド採掘関係者は、主に以下のどちらかです。
・採掘権保有者:手掘りでダイヤモンドを採掘する権利を持つ人。
・採掘労働者:実際に採掘労働をする人。採掘権保有者または投資家に雇われていることが多い。
リベリア政府は、違法に採掘している人が多い手掘りダイヤモンド業界を正規化するため、採掘権保有者を組合化し、組合を政府に登録させようとしています。
全ての産品のフェアトレードの基本要件は生産者の組合化とその民主的な運営であることから、DFPがめざすフェアなダイヤモンドの実現においても、採掘権保有者の組合化を重要視し、リベリア政府の方針を支持しています。一方、採掘権保有者のみが組織化され、採掘労働者が組織化されない場合、サプライチェーンの末端で搾取に最も苦しむ採掘労働者が取り残されることになってしまいます。そのような事態を避けるため、DFPは採掘労働者も自らを組織化し、その組織を組合の下部組織とし、下部組織のリーダー達が組合の中で労働者の声を代弁することを提唱しています(下図参照)。
DFPの活動対象村選定にあたっては、採掘労働者が自らを組織化することに採掘権保有者や村人が合意することを一つの条件としました。ウィズア村の採掘関係者は、それに合意し、下述のように活動を進捗させています。
採掘権保有者たちの進捗状況
ウィズアの手掘りダイヤモンド採掘権保有者は、借入をする機会を得たり、ダイヤモンドの公正な販売価格を実現するための団体交渉力を上げることなど、組合で協力して働くことで現在の状況を改善できると信じています。彼らは、組合を通して、それぞれの採掘権保有者が各自の努力を結集し、共通の課題に協力して取り組むことが出来ると理解しています。DFPと協力するよりもずっと前から、彼らは組合を組織することを望んできましたが、能力向上研修を受ける機会がなく、組合を組織するための多くの書類作成、政府への組合申請費用の支払いなど、様々な困難に直面しています。
DFPが介入するための行動を起こしたことが、手掘りダイヤモンド採掘権保有者の組合化に向けて、よいきっかけとなりました。ウィズアの人々はDFPに出会って以来、少しずつ前進し続けています。彼らは会合で手掘りダイヤモンド採掘組合を組織する必要性を話し合い、役員を選出し、登録費や会費を集め始めました。彼らは定例会を開くことを決め、会合を始め、自分達が直面している問題やその解決策を検討し始めました。これまでのところ、28人の手掘りダイヤモンド採掘者が、登録費を支払い始め、組合員はさらに増える見込みです。彼らは、自らが定める規則に則って組合を運営しようとしており、組合規則の最初の草稿も既に完成しています。
議事録等の記録を残すことは、手掘りダイヤモンド採掘者にとって最も大きな困難の一つです。多くの組合員は読み書きができません。読み書きができる組合員の多くは、記録の作成をしたがりませんでした。その結果、彼らは契約内容や取引記録を書き残さないために、採掘事業の一部またはすべての費用を負担する投資家に容易に搾取されてしまうのです。しかし、DFPの介入により、彼らは記録を残すことを習慣にしようと努力し始めました。彼らは、登録した組合員の名前や、支払いの記録、そのほかの財務記録を書くための帳簿を購入しました。また、彼らはその中に、会合の簡易な議事録も記すよう努力しています。
採掘労働者の進捗状況
組合の下部組織員となる採掘労働者たちも、議長を長とする採掘労働者グループを組織しました。サプライチェーンの最川上にいる採掘労働者は最も搾取されやすく、労働と生活環境の改善に向けた変化を最も望んでいます。他の採掘労働者と共に集団で取り組むことが、彼らの直面する課題を解決するための助けになると、彼らは信じています。彼らはこれまでに50名のメンバーを集め、活動の手引きとなる規則の最初の草案を考え、メンバー登録費と会費額について同意し、定例会の日程を定めて会合を開き、共に働く方法について議論を重ねています。
結論
ウィズアの採掘権保有者と採掘労働者は、自らを組織化し皆で協力して働く動機があり、やる気になっています。組織化に関し少しずつ前進しているものの、それをさらに後押しするためには、埋めなければならない溝があります。特に組合を運営する基本的能力が不足していると、採掘権保有者も採掘労働者も認識しています。チームワーク、ガバナンス、財務管理、民主的で持続的な組織運営のための研修等により、能力を向上させる必要があります。彼らはそれをDFPに期待しており、研修等を受けることを心待ちにしています。
冒頭写真:ウィズア村の採掘権保有者達の会合の様子(DFP撮影)