【2015年5月27日 レイチェル・ジョリー(インデックス・オン・センサーシップ)】
国家の権力者に立ち向かうとき、彼らがあなたに向かってあらゆるものを投げてくるということはわかると思います。たとえ彼らが降参だと言っても、そのような言葉を信じるべきではありません。
アンゴラ人ジャーナリストのラファエル・マルケス・デ・モライス氏はここ数日間で、身をもってその教訓を学びました。アンゴラのダイヤモンド産業における殺害や拷問について報じたモライス氏は、9年の実刑判決と最大80万英ポンド(日本円にして約1億4千万円)の罰金となるかもしれない名誉棄損罪をめぐる裁判への出廷を何か月もの間待っていました。月日が経つにつれて、罪が追加され、モライス氏やその家族に対する圧力がますます大きくなりましたが、先週末、アンゴラの裁判所は彼の受けた全ての名誉棄損の訴えを棄却する予定だと発表しました。
モライス氏は支援者とともに、その「良い知らせ」を祝いました。しかし数日後、裁判所は急きょ判決を覆し、モライス氏に対して有罪を言い渡し、懲役を科すことを決めました。
この緊張感に満ちた物語には、いつかハリウッド映画に出来るほどの意外な展開とどんでん返しが含まれていますが、これは現実の出来事であり、当面モライス氏と家族は非常に大きな苦難を切り抜けなければなりません。
モライス氏は、以下のように述べました。「裁判所で耳にしたことを信じることができない。検察官は、私が言ってもいないことを「言った」ことにし、私が謝罪し、嘘を書いたことを認めたと言っている」。さらに曰く、「5月22日に証人尋問が行われる予定だったので、ルンダス地域から証人として8人の被害者を連れてきた。私を告訴した軍部の将官達は5月21日に証人尋問を受けるはずだったが、出廷しなかった。21日に私が法廷で述べたことは記録されており、周知されている。将官達や国が私に対する告訴を取り下げることが出来るようにと、私は手短に発言するよう求められた」そして「全ての当事者は尋問のための証人や新たな証言をこれ以上求めないことに同意した。アンゴラの法律に従うと、名誉棄損、誹謗中傷などに関する事例では、弁明が法廷で行われ、全ての当事者に納得のいくものであれば、告訴する理由はなくなる」と述べました。
モライス氏が、彼の著書「ブラッド・ダイヤモンド~アンゴラの腐敗と拷問」(日本語版未発表)の中で真実を公表する勇気がなければ、国の最も影響力のある軍司令官の多くが出資している産業である、アンゴラのダイヤモンド鉱山で行われている恐ろしい行為を、多くの人が知ることはなかったでしょう。軍部の将官達はその著書の内容を巡り、モライス氏に対して名誉棄損の訴訟を起こしています。
アンゴラの規制のないダイヤモンド産業と独立後に起こった27年間の内戦があいまって、国際的に懸念が広がっています。
モライス氏は、ダイヤモンド業界の関連する500件の拷問と100件の殺害の悲劇について報じ、その報道を他国に知らせるために、とても大きなリスクを負い、たった一人で立ち向かっています。今年、イギリスの非営利団体インデックス・オン・センサーシップの言論の自由賞受賞時、私はモライス氏に会いました。彼に会うと、非常に大きな希望によって突き動かされているということが分かります。彼は、自身の報道がルンダス地域の人々の苦しい状況を変えるために役に立つだろうと強く確信しているのです。
モライス氏のような非常に勇敢で献身的な人物に会うと、私たちの大半は彼が行っているほど困難で、自分自身に大きな影響を及ぼす決断をしていないと実感します。
モライス氏が今年の3月、私に著書について説明してくれた時、こう述べました。「私を収監することは出来るが、黙らせることは出来ない。」
軍部やその関係者らが彼を収監することも、黙らせることもしないことを願います。
※本記事は英国「ハフィントンポスト」に掲載され、インデックス・オン・センサーシップ(Index on Censorship)に転載された記事をDFPにて翻訳したものです。
原文:「They Can Lock Me Up, But They Don’t Get to Silence Me」
Photo: Maka Angola