リベリアの民主主義への道

執筆:ダイヤモンド・フォー・ピース・リベリア スタッフ

リベリアの政権交代、それはリベリア人にとって何を意味するのか

リベリアでは、過去74年の間に選出された大統領はいても、次の大統領への民主的な政権交代が行われることはありませんでした。しかし、リベリア人がそのことについてどのように感じているかについて語るのは、重要なことです。

第24代リベリア共和国大統領の政権下で政治的不安の時代は終焉を迎え、選挙は、ジョージ・マンネハ・ウェア平和大使の勝利に終わりました。平和大使とは、前大統領が国の平和維持のために創設した職務です。多くのリベリア人にとって、政権交代は生まれて初めて見る光景でした。過去の大統領が死亡したり、殺されたり、辞任することを余儀なくされたりという時代が、ついに終わったのです。平和的でない政権交代は、多くの点でリベリア人を不安にさせてきましたが、今回の政権交代によって、国の民主主義格差を埋めることができました。リベリア人にとって幸せなのは、平和的な政権交代だけでなく、人々によって圧倒的に支持されている人物に交代したということです。この平和的政権交代を多くのリベリア人が、リベリアが必要とする変化の始まりとして考えています。紛争が勃発してから14年間で50万人を超える人々が命を奪われました。連続して二期(12年間)大統領を務めたエレン・ジョンソン・サーリーフ前大統領の平和的な統治によって、人々はこのひどい経験を徐々に思い出さなくなりました。リベリア人を満たし、平和の回復をもたらしたこの喜びは、長い間目撃されることのなかった民主的政権交代によってさらに強固なものとなったのです。

なぜ人々は投票したのか

リベリアでは、一般的に政治は興味深いと言われています。これは、人々が個人的な利点や恩恵を与えてくれると思う権力者に投票するということに理由があります。そしてこの哲学は、選挙における人々の投票の仕方と票の数に如実に表れています。リーダーというのは、無欲で彼らが導く市民の共通利益のために働き、人々の声に耳を傾け、それに応じて行動すべきですが、リーダーの大半はこれに当てはまらないと人々は思っています。ほとんどのリーダーたちは利己的で貪欲であり、彼らは自分の利益のために法律を制定し、人々に損をさせることで、自分自身の富を築こうとするのです。選挙の間、候補者らは多くの素晴らしい約束をしますが、ひとたび権力を得れば、約束は反故にされてしまいます。彼らは自分自身の約束を守ってくれない人々に投票するため長い待ち行列に立つのは時間の無駄だと、投票意欲を失くしてしまいました。投票した人の多くは、個人的な関心事に基づいて投票を行うだけです。しかし、意欲的な人が発揮する価値に期待して投票する人もいます。

終わったばかりの選挙において、人々の投票方法に影響を与えたもう一つの要因は、リベリアに住む人々のグループの問題です。リベリアに住む人々には二つのグループがあります。コンゴ人と先住民族です。コンゴ人というのは、アメリカの奴隷解放宣言により解放された人々のことを言います。解放された奴隷たちがリベリアに到着したとき既に定住していたのが先住民族であるのに対し、解放後に定住した人々がコンゴ人なのです。

政党支持者たちが政治集会でお祝いする様子

リベリアに住む民族グループについて話すことはあまり好ましいことではありません。なぜなら、リベリア内で二つのグループが対立して存在することが事実だからです。両者を一体とした統一政策にもかかわらず、多くの先住民は依然として疎外感を感じています。歴史的に国家の創設以来、コンゴ人は国家のガバナンス構造において支配的でした。先住民族はサミュエル・ドゥ(Samuel Doe)の後任として一度大統領を務めただけであり、実際には銃の投票(軍事権力の奪取)によって行われたものです。ずいぶん前には、先住民は議会で働くことができず、国営大学を含む特定の学校に通うことはできませんでした。しかし、今ではすべてが変わり、政府の戦略的立場で働けたり、自分たちが選んだ学校に通う権利を持っています。多くの先住民族は、そろそろ大統領のレベルで自分たちがリードする機会が与えられるべきときがやって来たと思っているのです。

なぜ多くのリベリア人はジョージ・ウェア氏を選んだのか

  1. ジョージ・ウェア大統領は、平和的な人物 – リベリア人同士が内戦をしていた時、彼は内戦の平和的解決に重要な役割を果たしました。
  2. 彼の愛国心 –2005年の大統領選で、彼が選挙を勝つとだろうと信じられていましたが、彼の学歴について不正があったと言われ票を失いました。勝つと信じていた多くの支持者たちは、結果に反対し暴動を起こし、一時的に市民は不安に包まれましたが、平和のために彼は暴動を抑えました。
  3. リベリアの最悪の時代、彼はウェストポイントのスラムに住む貧しい少年として母親に育てられました。彼のサッカーキャリアだけが彼を輝かせました。この幼少期の経験によって、彼は一般的なリベリア人の苦しみを正確に理解し、感じられるのです。
  4. 彼は先住民族であり、リベリア人によって圧倒的に支持されています。
  5. 多くの人々は、過去の世代が国を破綻させている。それ故に世代交代を選ぶ必要があり、交代する大統領はジョージ・ウェア氏だと信じています。一党制を避け、民主的な統治ができるように努めている人々もいます。
選挙の日に投票を待つ列に並ぶリベリアの人々

修士号を取得したにもかかわらず、ジョージ・ウェア大統領の教養問題は深刻な批判の対象となっています。彼のスピーチは、たとえ事前に書かれていたものだとしても、しばしば多くの誤りがあるのです。批評家たちは、彼には大統領の資質がないのではと疑っており、サッカー場での成功は、彼の低い教養を賢くさせることはなく、大統領の任務に影響を及ぼすことはできません。しかし、そういうことは彼の支持者にとって重要ではなく、圧倒的な票が投じられました。一般的なリベリア人との話の中に、過去のリーダーたちにどれほど失望しているのかという話題が出ます。 あるグループは言います、「高学歴のリーダーたちが国を破綻させた」と。

選挙期間中に、「あなたはもう本を知っている、あなたはあなたのために投票する本を知らない」というスローガンを唱えました。これは、学歴が良いかどうかに関わりなく、ジョージ・ウェア氏に投票してほしいということです。彼の支持者たちは、批評家たちの心配を全く無視してこのスローガンを唱えました。 ウェア氏は、選挙期間のスピーチの中で、「教育そのものがこの国を発展させるならば、リベリアは多くの天然資源を持ち、先進国になっただろう。しかし、教育は重要だが、最も必要とされるのは自分の国に対する愛とそれを発展させる情熱だ」と述べました。彼の支持者たちは、信じています。彼が高等教育を受けていなくても、国を発展させ、すべてのリベリア人にとってふさわしい暮らしを送ってもらいたいという情熱を、彼が持っていると。

ジョージ・ウェア大統領に何を期待するのか

期待は高いです。為替レートが135リベリアドル=1米ドルと非常に高騰した現在の経済状況(注:1年で3割近くリベリアドル安になっています)では、市場のすべての商品の価格が上昇しています。人々は新しい政府ができるだけ早く救援政策を実施するだろうと期待していますし、彼の政党名「民主的変化の連合」に表れているように、大統領が政治家になって以来語ってきた変化の起こることを熱望しています。特に期待が高いのは、雇用や商品価格など、激しい紛争により腐敗してしまった問題についてです。

選挙が終わって

歴史的な大統領選は終わりました。リベリア人は運命共同体として、一人ひとりが選挙全体で起こったことのすべてを覚えているべきです。すべての政治や個人の違いを超えて、国家の共通の利益のために皆が結びつかなければなりません。権力闘争の間、自分の信頼を得るために他人を傷つけ、あらゆる種類のことを言い、行いました。民主的なプロセスの終わりに、競争の勝者は違いを超えて、人々のリーダーとなります。リベリア人は今、できる限りの支援をリーダーのためにすることで、国をより良くしていかなければならないのです。

 

冒頭写真:「市民が集まり、政治集会で大統領候補の支持を表す様子」