【2018年12月6日 グローバル・ウィットネス】
グローバル・ウィットネスの新報告書によると、ジンバブエのダイヤモンド産業の管理は、エマソン・ムナンガグワ大統領の経済改革に関する試金石だといいます。
グローバル・ウィットネスのキャンペーンリーダーであるソフィア・ピクルス氏は、
「マランゲダイヤモンド産業に対する新政府の対応は、経済改革と腐敗防止に対する誓約が口先だけのものではないかどうかの明白な指標になる」
と述べています。
本報告書は、ジンバブエ政府やダイヤモンド産業の企業に対して、透明性のある諸対策を実行するよう呼び掛けており、それはダイヤモンド産業がジンバブエ国民の生活改善に必要不可欠です。
「ジンバブエのダイヤモンド業界にはびこる秘密主義は、悪党が足場を固めるために大きな役割を果たし、ジンバブエ国民に恩恵を与えるはずのダイヤモンドを無慈悲に搾取し、人権侵害の源になり続けてきた。同国の重要な産業であるダイヤモンド業界の望ましい管理は、経済にとって非常に重要なだけでなく、ジンバブエがムガベ政権後進む方向性の指標でもある。それは、ムナンガグワ大統領による腐敗への断固とした措置や経済ガバナンスの転換に関する主張の裏付けになる」
とピクルス氏は言います。
ムナンガグワ大統領は政権就任後、ジンバブエ経済の新時代を促進し、腐敗の改善に取り組むことを主張してきました。ロバート・ムガベ前大統領の失脚は、ここ20年近くにわたり、ジンバブエを特徴づけるようになった政策の一部に変化をもたらしています。
ムナンガグワ政権は、特に自国の国際的な孤立を終結し、外国投資を引き付け、酷い状況の経済を回復させるための措置を取っています。最近の傾向として、新規の民間投資家がマランゲダイヤモンド鉱山に投資しているので、過去の過ちが繰り返されないよう、同政権は今、ダイヤモンド業界の透明性を向上させ、管理を改善させるために行動することが不可欠です。
2000年台半ばにマランゲ鉱山でダイヤモンドが発見された当時、ジンバブエは、あらゆる面で、とりわけ経済面で危機に直面していました。しかし、マランゲダイヤモンドは、切望されていた活力を経済に吹き込むのではなく、人権侵害、腐敗および略奪との関連で広くよく知られるようになってしまいました。[i]
ピクルス氏は、
「ジンバブエのダイヤモンドほど、チャンスを失ってしまったものはない。世界的に意義のあるダイヤモンドの発見は、ジンバブエ国民が苦境に立たされている時に無駄遣いされてしまった」
と話しました。
前政権下、支配層はダイヤモンドを情け容赦なく搾取していました。ジンバブエ国民は、マランゲダイヤモンドからの恩恵を得ることはなく、何十億ドル相当ものダイヤモンドから得た利益の使途が不明のままです。
2008年、ジンバブエの治安部隊は、推定200人が死亡したマランゲで、無届け採掘労働者に対して残忍な弾圧を始め、キンバリープロセスの歴史において最大の危機をもたらしました。グローバル・ウィットネスは、後に政府からマランゲでの採掘許可を得た合弁事業会社を調査したところ、治安部隊の関与が広範囲にわたっていることが明らかになり、軍と中央情報局の両方がダイヤモンド採掘企業の持ち株を保持していることがわかりました。
ピクルス氏は、「ムガベ大統領の下、ジンバブエの治安部隊は大統領支持者であり、同政権を存続させる上で重要な役割を担っていた。治安部隊は、暴力的な軍事行動の資金源として使われた可能性のある天然資源にアクセスできた」と述べました。続けて「新政府は、ダイヤモンド業界を徹底的に改革することにより、この時代が終わるという明白なメッセージを送ることが重要だ」といいます。
グローバル・ウィットネスは、ジンバブエ政府に対して、透明性と責任を持ってダイヤモンド業界を管理するための以下の施策を講じるよう促しています。
・ダイヤモンド企業の全所有者および民間投資家を公表する。
・ダイヤモンド採掘関連の全収益の流れに関する情報の詳細を、会社、年度、収益源の種類ごとに公開する。
・民間投資家と交わした合弁事業計画を公開する。
・マランゲダイヤモンド鉱山と取引する企業がサプライチェーンのデュー・デリジェンスを行い、リスクを明らかにする。
・議会の監視から逃れているダイヤモンド企業を通じて、警備業界が予算外の資金を受けるリスクを防止する。
ジンバブエにおける20年に渡る危機の後、過去の過ちが繰り返されないようにすることが不可欠です。ダイヤモンド企業を公共の監視の目にさらすことで、悪党がダイヤモンド業界に浸透し業界を破壊することを難しくすれば、信用のある投資家が投資するようになり、新政権による改革に対する国際社会の信頼が生まれるでしょう。
ジンバブエのダイヤモンド産業は、岐路に立っています。ダイヤモンド産業が今後進む方向は、ムナンガグワ大統領率いる新政権がジンバブエの変革に真剣に取り組むかどうかの明確な指標になるのです。
[i] 2017年に、グローバル・ウィットネスは、「内部関係者による犯行:国家や治安部隊と、ダイヤモンドの10年にわたる喪失」を発表しました。本報告書は、ダイヤモンド業界にわたる秘密主義がいかに有害を広範囲に渡って促し、ジンバブエ国民が必要とするダイヤモンドの資金を奪っているかを詳述しています。
※本記事は、グローバル・ウィットネス「Global Witness」ホームページに掲載されたものを、グローバル・ウイットネスの許可を得て、DFPの責任の下、DFPにて翻訳し、編集したものです。
原文:「Marange diamond industry is the litmus test of Zimbabwe’s reform」
https://www.globalwitness.org/en/press-releases/marange-diamond-industry-is-the-litmus-test-of-zimbabwes-reform/(2019年5月18日閲覧)