ダイヤモンド採掘産業には、採掘権保有者・採掘労働者・ブローカー(仲買人)・サポーター(資金提供者)・輸出業者など、様々な利害関係者が関わっています。
採掘権保有者とは、政府からクラスCという手掘り採掘の免許を得て、採掘権をもつ者をいいます。彼らは採掘労働者を集め仕事をさせますが、給与は支払いません。ダイヤモンドが見つかったら利益を半分ずつ分け合うことを条件とするのです。
採掘労働者とは採掘権保有者の下で労働する者をいい、ダイヤモンドが見つかるとその利益の何割かをもらいます。
ブローカー(仲買人)とは、政府からブローカーの免許を得て、採掘権保有者から合法的にダイヤモンド原石を買うことができる者です。関係を強めるため、ときに採掘権保有者に対し資金援助をします。
サポーター(資金提供者)とは、採掘にかかるコストの一部を支援する者で、採掘権保有者・採掘労働者と口頭で契約を交わします。採掘権保有者・採掘労働者は、ダイヤモンドを発見した際、コストを負担してもらった見返りに、サポーターにダイヤモンドを売らなければなりません。サポーターの多くはブローカーライセンスを持っていませんが、そうします。その後サポーターは、ダイヤモンドが産出された地域の採掘権保有者が任命するライセンスを持つブローカーにダイヤモンドを売ることを強いられます。
ディーラーとは、ダイヤモンド原石をブローカーから買い輸出する、ディーラーライセンスを持った輸出業者です。彼らは自身が支援するブローカーを通して、採掘権保有者・サポーター・採掘労働者からダイヤモンド原石を購入します。
多くの場合、採掘権保有者は鉱山で採掘活動をする資金力がなくスポンサーを募ります。資金を提供するのは先に述べたサポーターですが、ブローカーも支援します。前者は採掘労働者に1日2回の食事を与えるというかたちでコストを負担します。そのかわり、採掘権保有者はサポーターにダイヤモンド原石を売らなければなりませんが、採掘活動にかかったコストを考慮した上でサポーターに利益がでるようしなければなりません。このようなシステムの下、手掘りダイヤモンド採掘労働者たちは働き、なんとか生計を立てています。彼らは何十年もこのような条件で労働を続けてきましたが、次のような点で不満を持っています。
不公平なダイヤモンドの価格
採掘権保有者と採掘労働者は、バイヤー(サポーター/ブローカー)のダイヤモンド原石購入価格が不当であると主張し続けています。しかし、採掘にかかる費用をバイヤーに依存しているため彼らの価格を交渉する力は乏しく、やむなく現状を受け入れているのです。採掘権保有者は、サポーターに依存し続けることでダイヤモンド原石が安く買い叩かれていると考えています。
一方、採掘労働者は、採掘権保有者はサポーターと共謀し、ダイヤモンド原石が産出されたとしても公平に利益を配分しないと考えており、採掘権保有者がほとんどの利益を得ていると考えています。採掘労働には貢献していないのに、利益のおいしいところを持っていくと言います。たとえば、採掘権保有者は採掘のために、ジグ(選鉱用の器具)・選鉱に使用するザル・機械・シェイカーヘッド(器具)といった道具を用意する必要があります。たいてい、そのうちの3つは提供されるのですが、機械は与えられません。また、現在採掘労働者グループへの利益配分は50%ですが、この配分は60%が妥当だと考えています。
採掘労働者の報酬から10%差し引かれる採掘機械使用料
採掘権保有者が機械を用意することができないため、多くの場合サポーターがそれを支援し、その分として採掘権保有者と採掘労働者への配分から10%を差し引きます。採掘労働者は採掘権保有者が機械を用意すべきで、採掘権保有者の配分から10%を差し引くべきと主張します。
ジェネラル・ブローカーの問題
リベリア政府(土地・鉱山・エネルギー省)の規制に従えば、採掘したダイヤモンド原石はライセンスを持つブローカーに売らなければなりません。キンバリー・プロセスを遵守するためです。ブローカーは時に鉱山運営を支援しますが、ブローカーライセンスを持たないサポーターも数多く存在します。彼らは資金援助するかわりにダイヤモンドを安価で採掘権保有者から購入し、その後採掘権保有者が任命する「ジェネラル・ブローカー」と言われるブローカーにダイヤモンドを販売します。ベレクパラムのこのジェネラル・ブローカー問題は特有で、ほかのダイヤモンド採掘地域では見られません。
このケースでは、採掘権保有者は二重に利益を得ます。まず、サポーターに売る際に売上の50%を受け取ります。さらに、その後ジェネラル・ブローカーに売る際にも20%を受け取るのです。
サポーターはジェネラル・ブローカーに売ることを強いられ、ほかの選択肢がありません。彼らはジェネラル・ブローカーほど、価格交渉をすることができません。採掘権保有者や鉱山労働者にダイヤモンド採掘のための資金提供をしているからです。多くの場合、ジェネラル・ブローカーはサポーターに、ある一定の額より高い金額でダイヤモンドを買わないよう耳打ちします。ジェネラル・ブローカーはそれより高い金額で購入する気がないため、それに従わなければサポーターにとって不利になります。そして、その不利益は採掘労働者に影響します。しかし、採掘権保有者はサポーターがブローカーに売る際に売上の20%を受け取ることができるのです。このような状況に採掘労働者は堪えかね、多くは金採掘に移っていっているのが現状です。
冒頭写真:砂利を洗って原石を探す採掘労働者たち(DFP所有)