【2015年6月24日 ニコラス・クリストフ(ニューヨーク・タイムズ)】
ここにビデオレポート*がありますが、同じようなものを制作することは二度と出来ないでしょう。アンゴラ共和国は産油国であり、並外れて腐敗が蔓延した国であり、世界の中で最も子供が死に至る危険性のある場所でもあります。
アンゴラはそのような国ですから、当然、ジャーナリストを歓迎しません。私がアンゴラで取材するためのジャーナリストビザを取得するまでには約5年を要しました。そして、取材内容を報道した後に再度ジャーナリストビザを取得できるかどうかについては現政権の支配が続く限りは疑わしいと思っています。そのような状況ですから、私たちは国の腐敗について描いた今回のビデオ制作に出来る限り多くの時間と労力を投入しました。
私にとって最も胸を締めつけられる思いがする瞬間は、辺鄙な片田舎の村で医師や歯科医師なしで暮らしている人々を見るときです。高速道路で自動車を何時間も走らせたあと舗装されていない道路を二度ほど通り現地の人々が暮らす村へ向かいました。そこで見た痛ましい光景とは、治療を受けられずにいる病気の子供たち、学校に通うことのできない子供たち、10人もの子どもを亡くした母親——アンゴラが石油とダイヤモンドにより豊かな国であることを考えれば、この現実には悲しみより怒りを覚えます。更に、既に知られているように、西欧諸国は億万長者の娘を持つアンゴラ大統領に取り入ろうとしているのです。
そのような状況を思えば、村人たちの置かれている環境を村人たち自身の言葉で語ってもらう機会を持つ責任を感じるというものでしょう。だから、私たちはビデオレポートを制作したのです。このビデオによって、権力者らが石油で得た富を自分らのためのポルシェやシャンパンばかりにつぎ込むのではなく、一般のアンゴラ国民の保健医療や子どもの教育に当てるよう圧力をかけることが出来るかもしれません。
私はこのドキュメンタリーに出演していますが制作したのはアダム・B・エリック氏です。私は「ニューヨーク・タイムズ」のベテラン通信員である彼とイランやバーレーンを旅したことがあります。
どうか、私たちのビデオレポートとコラムを通じ、子供たちを死に追いやっているのは貧困ばかりが原因なのではなく政治腐敗とそれを容認する世界にあるのだという事実を知って頂き、それを拡散することによって、多くの人に知ってもらいたいのです。
*ビデオレポートは、都合により現時点ではここに掲載できませんので、ご了承ください。
※本記事は「ニューヨーク・タイムズ」ウェブサイトに掲載されたものをDFPにて翻訳したものです。
原文: Corruption Is Killing Children in Angola
http://www.nytimes.com/2015/06/24/opinion/nicholas-kristof-corruption-is-killing-children-in-angola.html?rref=collection%2Fcolumn%2Fnicholas-kristof
写真:Maka Angola