特定非営利活動法人ダイヤモンド・フォー・ピース(DFP)は2023年10月18日、ウェビナー「欧米ジュエラーの先進事例から学ぶ 宝飾業界の責任ある原材料調達最前線」を開催しました。スリランカおよびタンザニアで責任ある色石調達を行うスチュアート・プール氏をゲストに迎え、宝飾業界や国際協力業界の方々を中心に33名の方に参加いただきました。
ウェビナーの録画はこちらからご覧いただけます:
はじめに当会の山岸から、責任ある原材料調達が重視されるようになった背景について、気候変動や経済格差の拡大等を受けて企業の人権に対する責任が問われるようになった流れを紹介しました。人権や環境を尊重するための指針として国連の「ビジネスと人権に関する指導原則」を例に挙げながら、企業活動において具体的にどのような義務や責任が生じるのかを概説しました。特に人権・環境の点から企業活動が与える影響やリスクを調査するデューデリジェンス(適正評価)の重要性について述べ、サプライチェーン全体において人権・環境リスクを特定し軽減策を講じる必要性について説明しました。例えばダイヤモンドのサプライチェーン上では、環境破壊や暴力、貧困、紛争の資金源につながるなどのリスクを評価し、対策を講じ、対策の効果を評価するサイクルを回していくことが求められます。
次に、自身も色石鉱山と研磨工房をスリランカで運営し、英国で責任ある宝飾品原料の採掘・調達を広める団体であるフェア・ラグジュアリーの共同創業者であるプール氏による動画講義を行いました。ミレニアル世代を中心に、購入するものに対して消費者がより多くの情報を求める傾向が強まっている点について触れ、宝飾業界もより高い透明性を保つ必要があると指摘。原石が鉱山まで追跡可能であるということにとどまらず、採掘者が公正な賃金を受け取っているか、採掘の環境が安全か、児童労働がないかなど、宝飾原料の責任ある調達を行う上で考慮すべき点について紹介しました。スリランカやタンザニアの鉱山を例に、色石採掘の80%を占める小規模手掘り採掘では特に採掘者や研磨職人への影響を考慮する重要性があると強調しました。最後に、宝飾業界におけるブロックチェーンの活用例についても紹介し、改ざんできないデジタル台帳であるブロックチェーン技術は、原石が宝石となり消費者の手元に届くまでのサプライチェーンを把握する上で、高い透明性を確保できる手段として期待されています。
Q&Aでは、プール氏が携わるタンザニアでの色石採掘プロジェクトMoyo Gems(モヨ・ジェムズ)や、色石採掘の大半が小規模手掘り採掘で行われている理由について、またブロックチェーンの使用を普及させる上での課題等についての質問が寄せられました。
最後にDFP代表の村上から、DFPの活動地であるリベリアでの責任ある手掘り採掘に向けた取り組みについて概説しました。採掘者が採掘免許を取得し法令遵守した上で行う、環境への悪影響を最小限にする、知識を向上させて採掘の精度を上げるとともに搾取されないようにする等、採掘者の生活を底上げし周辺環境にも配慮するための活動を紹介しました。
DFPでは、引き続き広く多くの皆さまにダイヤモンドを取り巻く課題や解決への取り組みを知っていただくために、関連テーマでウェビナーを開催する予定です。