【2020年3月4日 キンバリープロセス市民社会連合ホームページ】
キンバリープロセス市民社会連合は2019年 11 月 3 日、ニューヨークで、「紛争を助長するダイヤモンドの役割に関する国連総会決議」が採択された際に各国政府や業界の代表者を前に講演し、紛争予防と開発促進へのキンバリープロセスの貢献について疑問を呈しました。
はたして紛争予防のツールになっているのか?
ニューヨークで開催された国連決議採択のイベントで、ジンバブエ人の市民社会連合代表ムカシリ・シバンダ(Mukasiri Sibanda)氏は、キンバリープロセスについて、自画自賛をやめ、長年指摘されてきた弱点を直視すべきだと訴えました。
国連決議では、キンバリープロセスは「紛争予防のための効果的な多国間ツール」とされているが、「キンバリープロセスが実際に紛争の発生を防いだことがあるだろうか」とシバンダ氏は疑問を呈しました。「キンバリープロセスには、大規模な暴力行為の拡大阻止はおろか、その初期兆候に素早く対応するための自由に使える手段がありません。さらに悪いことに、キンバリープロセスでいうところの『被害』とは、ダイヤモンドが政府と戦う反政府勢力の資金源になっている状況を指しているに過ぎず、人権侵害、拷問、非人道・屈辱的な扱い、環境悪化、経済犯罪など、他のすべての悪事を見過ごしているのです。」
「ニューデリーで2019年に開催されたキンバリープロセスの総会をもって終了した 3 年間の改革期間において、キンバリープロセスによる紛争ダイヤモンドの時代遅れの定義の刷新に参加国が合意しなかったのは、非常に残念です」と、キンバリープロセス市民社会連合のジンバブエ拠点のコーディネーター、シャミソ・ムティシ(Shamiso Mtisi)氏 は付け加えました。
持続可能な開発の促進に貢献しているのか?
キンバリープロセスは、持続可能な開発を積極的に推進していると繰り返し主張していますが、本当にそうでしょうか。「多くの国では、ダイヤモンドは確かに雇用を創出し、経済発展に貢献していますが、その開発の可能性は決して十分に発揮されていません。一体、キンバリープロセスは持続可能な開発のどこに貢献しているのでしょうか?世界中の何百もの国や業界の代表者による終わりのない会議に飲み込まれた莫大な資金が、どのように採掘地域に恩恵をもたらしているのでしょうか?」とムカシリ・シバンダ氏は問いかけます。
「私たちはこの質問を採掘地域に問いかけるべきですが、採掘地域はどこにあるのでしょうか?彼らはこれらの会議から遠く離れた場所にいます。私たちが関わっている採掘地域でキンバリープロセスの話をしても、ほとんどの場合、ぽかんとした顔で見られます。キンバリープロセスの話を聞いたことがある人は大抵、その制度の良い点をあまり思い付かないのです。草の根レベルでは、キンバリープロセスによる禁輸措置を経験した国において、この仕組みがよく知られているということが象徴的ではないでしょうか。採掘地域はキンバリープロセスにより禁輸措置を受けたから知っているのであって、利点があるから知っているわけではないのです。」
大きな可能性
「ダイヤモンドセクターに関わる全ての国と業界、市民社会が一堂に会するキンバリープロセスには、大いなる可能性があります。このユニークな構造ゆえにキンバリープロセスは、紛争を防ぎ、開発を促進するダイヤモンド管理制度を構築するのに最適なのです」と、ベルギーに拠点を置くキンバリープロセス市民社会連合のメンバーであるインターナショナル・ピース・インフォメーション・サービス(IPIS)の研究員ハンス・メルケト(Hans Merket)氏は説明します。「残念ながら私たちは、キンバリープロセスで費やされた時間と労力の大半が、ダイヤモンド採掘の影響を受ける地域には何ら関係がない手続き上のことに無駄に使われていることに気づいています」と述べました。
「市民社会の参加は、キンバリープロセスを成り立たせるためには不可欠です。市民社会連合は、ダイヤモンド採掘の影響を受ける地域が恩恵を受けられるよう、制度の改革を求めてきました。改革が失敗したのは、ダイヤモンド採掘と取引の恩恵を最大化し、被害を最小化する点において、キンバリープロセス自体の責任感が欠如しているからです。市民社会連合として、私たちはもはや、採掘地域の現実やニーズとかけ離れているこの偏狭な理屈を正当化できません」とムティシ氏は強調しました。市民社会連合はそれでもキンバリープロセスに留まることを決めましたが、今後徐々に、国や地域レベル、そして他の国際的な取り組みを通じて活動していくでしょう。特に、ダイヤモンド採掘の利益の再分配、暴力の削減、採掘地域の土地権利の保護という、3つのテーマに重きを置いて活動していく予定です。「私たちは、ダイヤモンド採掘の影響を受けている地域の権利を守るという使命を達成するために、キンバリープロセスによる多くの制約にとらわれることなく活動を続けていきます。」
お問い合わせ先
キンバリープロセス市民社会連合コーディネーター(ジンバブエ環境法協会)
シャミソ・ムティシ +263 7 742 169 56
冒頭写真:国際連合総会会議場(Wikimedia Commonsより)