リベリアにとって地方分権化はタイムリーだろうか

リベリアの15年間の内戦後、1847年7月26日の独立から1989年までの政府の不正や公金の横領がリベリアを残酷な戦争に導いたことは公然の秘密です。紛争問題の専門家たちは、苦難の末に獲得した現在の平和は、全てのリベリア人が強く守らなければならないと警告しています。専門家によれば、市民社会の危機の兆候は、1800年代から1985年まで遡り、長年にわたり現われていたと言います。それは、アメリカ合衆国の奴隷解放で自由になり、アフリカに戻ったコンゴ人(コンゴ河沿岸地域出身の奴隷)の、リベリア地域に住んでいた先住アフリカ人への長期にわたる差別であり、1979年の米騒乱、1980年のクーデター、1985年の総選挙から続いた市民の複雑な心理状況などで、1989年12月に起きたニンバ州の危機へと道を開いたのです。現在リベリアは、15年間の内戦に繋がった諸問題を緩和するために、開発パートナーと共に中央政府のいくつかの権限を地方政府に委譲する取り組みを行っています。1847年の独立以来、リベリアは国家の統治が極度に中央に集権化されており、ほとんど独裁国家のようだったのです。

リベリア統治の新しい計画を促進するために種々の政策が策定されました。「地方分権化政策」、「2009年公共財務管理法」、「貧困削減戦略」、「2030年ビジョン」などです。

一方、これらの新たな統治政策にも関わらず、政策を実施にあたる人たちが適切に教育されず、注意が行き届かない場合は、リベリアの問題を将来さらに悪化させるかも知れないと、諸々の専門家が警告を発し続けています。専門家たちは政策実務者の能力強化と情報の普及をあらゆる方法で行うべきであると強調しています。

地方分権化政策の開始に際して、中央政府は州政府の職員の能力を測ることから始めました。それぞれの州政府は20万米ドル(約2,400万円)を「州開発基金」として受け取ります。それに加えてマギビ州やニンバ州などは、これらの地域内で操業している企業から提供された「社会開発基金」の恩恵も受けます。例えば、マギビ州にあるリベリア・ファイアストーン社、サララゴム社、中国ユニオン社は会計年度ごとに合計で百万ドル以上(約1億2,000万円)を社会開発基金に提供します。

中央政府の権限の一部を地方行政機関に分権化するこのような努力にも関わらず、リベリアの15の州すべてにおいて、開発資金の不正流用を指摘する抗議が市民から寄せられています。州の職員が事業費用を過大に見積もる一方で、事業を完成させることができない、あるいは満足のいかない状態で終えている、と市民は警告し申し立てています。しかし、州の職員はそのような市民の申し立てを繰り返して否定しています。これらの市民の申し立てや職員の反論のほとんどについて、それらを確認するための監査が行われていますが、ラジオ局に寄せられる市民の見解によると、監査で明らかになったことは、度々覆い隠されているとのことです。

このような状態から考えて、リベリアが分権化を成功させるためには、人材、資金、物資といった主要な資源を管理する努力を見過ごしてはならないことを、専門家たちは主張しています。彼らは国家発展において人的資源の開発が最重要であると強調しています。州レベルの重要課題を扱うすべての専門的な仕事において、職員が十分に教育されなければ、現在起きている兆候から判断して、分権化によってリベリアはさらに多くの問題を抱え込むことになるかもしれないと専門家たちは警告しています。

現与党「統一党」が主導する政権のリーダーシップの下での地方分権化はタイムリーではないという政府への批判者がいる一方、「リベリア国民のための政治」を行う努力が行われてきたと考えるリベリア人もいます。州開発基金や社会開発基金に加えて、サーリーフ大統領はそのリーダーシップによって、市民が政府とともに「国づくり」に参加するよう促してきました。例えば、彼女は毎年の独立記念日の行事を州の多くの地域で執り行います。独立記念行事が行われる州の主要な開発事業の節目に独立記念日を祝うのです。たとえば、主要な道路の頻繁な修復や、市民のために電気や水が供給されるような事業などです。これらの開発事業は独立記念日の行事の後から、市民への供用が開始されることになります。一方で、開発事業の持続可能性や維持管理が州の新たなチャレンジになるのです。不幸なことにリベリア市民自身が、開発で作られた施設を破壊することもあります。マギビ、ニンバ、ロファ、ボンなどの州はそのような野蛮な行為の犠牲になりました。これらの州内の町に電力を供給するリベリア電力会社の電線が犯罪者によりすべて盗まれたのです。

これらのことにもかかわらず、リベリアは地方分権化の推進者になることができると私は信じています。そのために人材育成が急務です。

成熟した思考は革新をもたらし、革新は競争をもたらし、競争は他人よりも良く物事を成し遂げる方法を人びとに考えさせます。そのようにして、分権化が現実になった暁には、各州は市民のために最善の仕事をするよう競争するようになるでしょう。

写真:「社会開発基金」により設立されたマギニ州の集会所(撮影:サミュエル・G・コリンズ)