キンバリープロセスは血塗られたダイヤモンドの真実を隠すための完全な作り話

ジュエリー業界において倫理的な採掘と取引を促進するための新しいシステムが必要

【2014年3月24日 デイヴィッド・ロード(ガーディアン)】

血塗られたダイヤモンドとそれらの背後にある痛ましい話は、10年以上前に比べると世間の関心は高まっています。しかし、いかに宝石が供給されているかという世間の考え方が変化した一方で、実際、ジュエリー業界はほとんど変化していません。紛争ダイヤモンドの取引を根絶するために作られた「システム(キンバリープロセス)」は、いまや真実を隠すための完全な作り話となっており、従来どおり不透明に機能し続けています。

キンバリープロセスは、2003年の国連決議に基づく認証制度であり、ダイヤモンド取引と紛争の資金源との関係を最初に暴いた一連の報告に続いて策定されました。

キンバリープロセスは、二つの問題点を含んでいます。第一に、その認証条件は狭く、対象が紛争ダイヤモンドの採掘と流通のみに絞られており、採掘労働者の健康、労働環境の安全、児童労働や公正な賃金といった、労働者搾取を取り巻く幅広い問題が対象となっていません。また、採掘のために故郷から立ち退かざるを得ない住民についても取り上げていません。

第二に、キンバリープロセスは個々の宝石ではなく、カットされて世界中に輸出される前のダイヤモンド原石のみに適用されます。特別な追跡システムがない限り、原石から加工された時点で追跡は終了となります。

もし消費者が英国の宝石店に行き、陳列されているダイヤモンドの原産地を尋ねたとしても、店員のほとんどはどの国の原産であるか、鉱山のみでも確認できる見込みはないでしょう。

キンバリープロセスは、その認証制度が機能しなくなっています。汚職と密輸がはびこり、ここ数年間にそのシステムは内部から崩壊し始めているのです。

鉱物業界と紛争との結びつきを公表した最初の組織の一つであるグローバルウィットネスは、当初からキンバリープロセスの公式な監視者でした。しかしキンバリープロセスが、ジンバブエのマランゲ鉱山で稼動する2つの企業によるダイヤモンド原石の輸出を認証した後、グローバルウィットネスはキンバリープロセスから退きました。2008年、ジンバブエ政府軍はマランゲ鉱山一帯の統制権を掌握し、その過程において約200名のダイヤモンド採掘労働者を殺害したと報告されています。

さらに、2009年パートナーシップ ・アフリカ・カナダのイアン・スマイリー氏の脱退に続き、キンバリープロセス構築の立役者であるマーティン・ラパポート氏も辞任しました。グローバルウィットネスの撤退理由となった、マランゲ産のダイヤモンドが市場に豊富に流通していることが、ラパポート氏の辞任の決定要因となりまた。

彼らの撤退と同時に、現状維持によりダイヤモンド業界から利益を得ることのできる、「システム」が成立しました。キンバリープロセスは、都合の良い偽装工作となったのです。

今年、欧州連合(EU)は、紛争地域からの鉱物の輸入を統制することを目的とした新しいシステムの原案を発表しました。しかし、原案の中にはダイヤモンドは含まれていません。立案者たちは、ダイヤモンドにはすでに信頼できる、保証されたシステムがあると思い込んでいるためでしょう。

NGOは、ダイヤモンド採掘をめぐる倫理的な問題を消費者に気づかせるために大きな役割を果たしています。しかし現実には、ダイヤモンド業界が変革せざるを得ないのは、業界が減益に直面した場合のみなのです。

それでは事態を前進させるために私たちには何ができるでしょうか? キンバリープロセスの信頼性が修正不可能なほど損なわれている一方で、ダイヤモンド業界に希望をもたらす成功した方策もどこかにあるでしょう。

英国フェアトレード財団の金(ゴールド)に関する規約は2012年から施行されており、採掘労働者が公正な価格、より安全な労働慣行、採掘地域へより多くの還元が得られるように後押ししています。おそらく同じような仕組みがダイヤモンド採掘者にも試せるのではないでしょうか?

いくつかのカナダのブランドで用いられている「経路追跡」モデルもまた実践的な解決法になりうるでしょう。北西カナダの極寒のツンドラでダイヤモンドを採掘する企業は、自社のダイヤモンドを包括的に追跡できるようにしています。カットし研磨された個々のダイヤモンドは、消費者が自ら検証できるための独自の追跡番号がレーザーで刻印され、それによって、消費者はサプライチェーンにおけるダイヤモンドの流通経路を追跡できるのです。

全てのダイヤモンド採掘者と産出地はこのシステムを模倣することができるでしょうか? 技術的処理の観点からこれは比較的容易です。問題は紛争ダイヤモンド、児童労働の問題、公正な賃金そして安全な労働状況等、全てを考慮するシステムを監視する信頼のおける第三者機関を設立することです。

英国フェアトレード財団あるいはダイヤモンド・ディベロップメント・イニシアティブのような組織は確かに管理者の役割を果たすには十分信頼できますが、紛争ダイヤモンドをめぐる全ての問題に取り組むための包括的なシステム作るためには、政府や私企業を含めた様々な組織からの支援を必要とするでしょう。

厳正な追跡システムが組み合わされたフェアトレードダイヤモンド規格は、確かにキンバリープロセスの2つの大きな問題点に対処するでしょう。それが今後実現されるかどうかは見守らなければなりませんが、それまでの間、紛争ダイヤモンドをめぐる偽装を明らかにするために、私たちにできる支援があります。

次の記念日や誕生日にジュエリーを購入する際、または恋人へプロポーズを計画している場合には、宝石店でそのダイヤモンドはどの鉱山から産出されたものなのか尋ねてみましょう。

※本記事は英国メディアガーディアン紙ホームページに掲載されたものを、DFPにて翻訳したものです。
原文:The Kimberley Process is a ‘perfect cover story’ for blood diamonds
URL: http://www.theguardian.com/sustainable-business/diamonds-blood-kimberley-process-mines-ethical
Courtesy of Guardian News & Media Ltd