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高価な宝石であり、富の象徴でもあるダイヤモンド。
しかし、その裏では、ダイヤモンド採掘に携わる零細採掘労働者の多くが低賃金労働による貧困や人権侵害に苦しんでいます。その数はアフリカを中心に世界に推定1300万人とも言われています[i]。労働者が養う家族・親戚を平均5名と仮定すると、影響をうけている人口は5千万人以上になります。

零細採掘労働者による採掘の様子(撮影:DFP、2014、リベリア)

ダイヤモンド採掘における人権侵害は児童労働、借金を背負いそれを返済するための債務労働、強制労働、採掘現場での虐待行為、暴力や性的暴力など様々です。

アフリカ各地で激しい内戦が起こっていた1980~90年代、ダイヤモンドを武器購入の資金源としていた反政府軍により、採掘現場におけるこれらの人権侵害行為は惨状を極めました。2002年に、紛争の資金源となるダイヤモンドの原石の輸出を禁止する「キンバリー・プロセス」が国連にて採択されたことにより、状況は改善されたとされていますが、現在もなお、採掘現場における人権侵害は行われています[ii]

国際的な人権NGO団体であるヒューマン・ライツ・ウォッチが2009年に発表したジンバブエのマランゲダイヤモンド鉱山での調査報告[iii]によると、ダイヤモンドの違法採掘と密輸を止めるために派遣されたはずのジンバブエ国軍自らが、違法採掘と密輸から利益を得、住民たちに虐待を行っていたことが、明らかになりました。住民らは、無報酬で採掘をさせられ、それに反抗する住民への暴力が行われていました。また、採掘地域に住む女性たちへの性的暴力や、児童労働の実態も報告されています。

また、天然資源にまつわる紛争と汚職、環境破壊と人権侵害を防ぐための調査とキャンペーンを行っている国際NGOグローバル・ウィットネスによると、マランゲダイヤモンド鉱山の利益が独裁政治を行うムガベ政権の資金となっており、国民への人権侵害を加速化させると警告しています[iv]。マランゲ鉱山での採掘から輸出までには多国籍企業も関わっています。

この様な人権侵害行為はジンバブエに限らず、内戦終了後の不安定な政権下にある国や、ダイヤモンド採掘・輸出に関す法律・制度が未整備な国、政治が腐敗した国では多く見られるのが現状です。しかしながら、「キンバリー・プロセス」では、制度上上記のような問題を規制できません。国際社会が一丸となり、この様な鉱山からのダイヤモンドの輸出・売買を禁止する新たな取り組みや制度を作り、その取り組みを機能させない限り、ダイヤモンドに関わる人権侵害をなくすことはできないのです。

零細採掘労働者による採掘の様子(撮影:村上千恵、2012、シエラレオネ)

【注意】

当会がダイヤモンドにまつわる課題を啓発しているのは、課題を正しく認識することが解決への第一歩であると考えているからです。当会は天然ダイヤモンドの市場からの排除や消費者のみなさんにボイコット・購買拒否を呼びかけてはおりません。あくまでもこれらの課題の解決をめざして活動していますので、ご理解のほどお願いいたします。

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[i] Louis Goreux, 2001, “Conflict Diamonds,” The World Bank,  
http://www.worldbank.org/afr/wps/wp13.pdf

[ii] 「キンバリー・プロセス」の詳細については「紛争ダイヤモンド」の章を参照。

[iii] Human Rights Watch, 2009, “Diamonds in the Rough: Human Rights Abuses in the Marange Diamond Fields of Zimbabwe,”
http://www.hrw.org/sites/default/files/reports/zimbabwe0609web.pdf

 http://www.hrw.org/ja/news/2010/05/21-0(2015年3月15日閲覧)

[iv] Global Witness, 2012, “Diamonds: A Good Deal doe Zimbabwe?”
http://www.globalwitness.org/sites/default/files/library/A_GOOD_DEAL_FOR_ZIMBABWE.pdf(2015年4月15日閲覧)