市民社会連合が、キンバリープロセス認証制度をボイコット 〜アラブ首長国連邦の次期議長国任命に“レッドカード”〜

【2015年11月17日 ズジア・ダニエルスキ、アラン・マーティン(パートナーシップ・アフリカ・カナダ)】

紛争ダイヤモンド原石の流通を抑制する目的で設立されたキンバリープロセス認証制度に参加する市民団体は、本日、アラブ首長国連邦が同認証制度の次期議長国として任命されることに反対の意を表明するため、2016年のキンバリープロセスへのボイコットを発表しました。キンバリープロセス市民社会連合(詳細後述)を構成する11の市民団体は、同国の制度運用基準の甘さや同連合との対立関係を理由に、議長国を務めるには同国の体質は限度を超えていると訴えています。

アンゴラで開催された会合で、市民社会連合代表のカメルーン人ジャフ・ナポレオン・バメンジョ氏は、「(アラブ首長国連邦が)不法な金やダイヤモンド取引の温床となっている以上、もはやドバイはタックスヘイブン(租税回避地)であると同時に ”エシックス(倫理)” ヘイブン(回避地)と化している」と指摘しました。

2003年に創設されたキンバリープロセス認証制度(紛争ダイヤモンド原石の流通を抑制するための認証制度)は、紛争ダイヤモンドが国際市場に流通することがないよう、各参加国の自国内における徹底した取締りを要求しています。また、ダイヤモンド原石を輸出する際は、それが紛争ダイヤモンドではないことを保証する証明書の添付が義務づけられています。同制度を効果的に運用するためにはダイヤモンド業界および市民社会双方の努力が必要不可欠であり、その努力が実って、かつてダイヤモンド流通量の25%を占めた紛争ダイヤモンドは減少に転じました。

一年毎のローテーション制によりキンバリープロセス認証制度の2016年の議長国にアラブ首長国連邦が選ばれました。ドバイ・マルチ・コモディティセンターの発表によると、ダイヤモンド取引において世界第3位を誇る同国の2014年のダイヤモンド取引額は約400億ドルにのぼります。

昨年、非営利団体パートナーシップ・アフリカ・カナダやアムネスティ・インターナショナル、国連中央アフリカ共和国専門家パネルをはじめとする団体は、同国の輸入規制の甘さにより中央アフリカ共和国などの紛争国から非合法なダイヤモンドが一般のサプライチェーンに流入しているとし、同国を繰り返し非難してきました。

また、ダイヤモンドが同国を通過する際に価値が適正に評価されていない点についても懸念の声が挙がっています。2014年の実態を例にとると、ドバイを経由して輸出されたダイヤモンドは元の価格の平均40%も高い価格で取引されています。「移転価格」と称する、操作された取引価格の是正を市民団体は幾度も呼びかけていますが、同国は沈黙を続け、開発のために巨額の財源を必要とするアフリカのダイヤモンド産出国から富を奪っています。

パートナーシップ・アフリカ・カナダの調査部長アラン・マーティンは次のように述べました。「我々はこれまでドバイに対し、健全な市場取引を害する慣習を改めるよう要求してきました。議長国となりキンバリープロセスのリーダーを務めるのであれば、それ相応の振舞いをする必要があるでしょう。また、ドバイは有害な取引慣習を改善し、ガバナンスの課題でもリーダーとして同認証制度を導いていくことが求められています。」

市民社会連合は、市民社会の代表としてこの問題に取り組むべく、議長国のローテーションがアラブ首長国連邦に回るタイミングを控えた昨年、同国の脆弱なガバナンスの向上、市民社会と対立する対応の改善、両者間の関係構築に向け努力を重ねてきました。しかし、その努力に反し、ここ数ヶ月の間に彼らはその努力が実らないであろうことを悟りました。

コートジボワールからの代表ミシェル・ヨボウエは次のように述べています。「我々市民社会連合は、これまで各国政府およびダイヤモンド業界と連携し、健全な、紛争ダイヤモンドを取り扱わない、トレーサビリティー(追跡可能性)の徹底したサプライチェーン構築という共通の目標実現に向け協働してきました。その長い歴史の中で、今回のような三者による協議を尊重しない議長国が現れるのは初めてのことです。

そのような状況の中、本日、あるキンバリープロセスのメンバーが、『キンバリープロセスにおける市民社会からの意見は、もはや尊重されていない』というメッセージを発信しました。」

市民社会連合は、今後も各国政府や当該地域への直接的な働きかけや、外部機関が開催するフォーラムなどを利用し、更なるサプライチェーンのガバナンス向上を目指し努力を続けていきます。

【キンバリープロセス市民社会連合について】

キンバリープロセスに参加する非営利団体が集まり2007年に結成された連合体で、同制度が適正に運用されるよう監視し違反行為に対しては参加国および産業界に直接働きかけ問題提起する役目を担っています。国際的あるいは地域を拠点とする11の団体で構成され、パートナーシップ・アフリカ・カナダがその調整役を担っています。

【パートナーシップ・アフリカ・カナダ(PAC)について】

天然資源をめぐるガバナンス向上のための革新的な手法を提案するグローバルリーダー。これまで約30年間にわたり複数のパートナーと協働し、キンバリープロセス設立をはじめとする政策対話およびキャパシティービルディング(能力開発)の促進に貢献してきました。また、PACはキンバリープロセスを手掛けたことにより2003年にノーベル平和賞にノミネートされた実績を持っています。

※本記事は非営利団体「パートナーシップ・アフリカ・カナダ」ホームページに掲載された記事の許諾を得てDFPにて翻訳したものです。
原文:「Civil Society Boycotts Conflict Diamonds Certification Scheme」(2016年2月27日閲覧)
http://pacweb.org/en/pac-media/press-releases/253-civil-society-boycotts-conflict-diamonds-certification-scheme

※冒頭写真:アフリカで採掘されたダイヤモンド原石(Public Domain)