干ばつに襲われたジンバブエ ダイヤモンドに囲まれながらも飢える住民たち

【2016年2月8日 ジンバブエ、ムタレ ロイター通信】

マランゲのダイヤモンド鉱山の近くに住む63歳のシレット・ムサゴさんは、ジンバブエ東部の宝石に恵まれた地域において、鉱業がいかに地元の人々の生活改善に失敗したかということに対する怒りを隠すことができません。彼女のところから遠くの方に、企業がダイヤモンドを探し当てるため漂砂鉱床*を掘り起こし、赤い土埃を空にまき散らす様子がうかがえます。

彼女は嘆きます。「ダイヤモンドによる利益で生計を立て暮らしていけるという望みは、どこへやら。そして、この深刻な干ばつ…。私たちが生き続けていくには、もう、神に祈るしかないのです。ダイヤモンド鉱山の近くで暮らしている私たちが、飢えに苦しんでいるなんて…。」

ムサゴさんによると、雨不足のために作物の収穫が十分でなく、住民の中には一日一食の食事にさえもありつけず、バオバブのような野生植物の果実をとって飢えを凌いでいる人もいるということです。

頻繁に訪れる干ばつの中、マランゲの住民は、ダイヤモンド産業界が灌漑設備の再開発に、投資することを切望していました。

国の法律は採掘企業に対し、地元の地域開発支援について定めています。もともとマランゲは乾燥しやすい気候であるものの、ジンバブエの広範な地域に干ばつをもたらした最近のエルニーニョ現象の影響により、さらに悪化の一途をたどっています。

政府は同国の農村部のほとんどの地域について災害事態を宣言し、人口の約4分の1にあたる244万人の人々に対する食糧支援を求めました。

マランゲやその周辺の灌漑設備のほとんどは数十年前に整備されましたが、零細農家に老朽化する設備の維持や交換のための資金などなく、灌漑設備はもはや、うまく機能しなくなってしまっているのです。

「たった数個のダイヤモンド原石で私たちの生活は変わるはずなのに、誰もこの現状を理解しようとしないのです」とムサゴさんは憤ります。80,000人以上が暮らすマランゲの他の多くの住民も、彼女と同じ不満を抱えています。

マルヴェーン・ムディワさんは、深刻な干ばつにより、村の住民たちはこの一年をどうやって生き延びていったらいいのかと途方に暮れている、といいます。

地元の支援団体である「マランゲ開発基金」を率いている彼女は、呼びかけます。「でも、想像してみてください‐私たちはダイヤモンドに囲まれているのです!政府は採掘企業に対し、マランゲで飢えに苦しむ人々を支援するよう命じなければならない」と。

不透明なマネジメント 

専門家によれば、マランゲは世界でも有数の漂砂ダイヤモンド鉱床とみなされているものの、その資源は急激に枯渇しつつあるといいます。

ジンバブエ鉱業開発公社によれば、2013年には世界のダイヤモンド原石の供給量の13%にあたる約1,700万カラットが産出されたと見積もられており、2015年については公表されていませんが、2012年と2014年には1,200万カラットを産出したとされています。

ロバート・ムガベ大統領のもと、2012年にジムンヤ‐マランゲ地域財産共有基金(Zimunya-Marange Community Share Ownership Trust)が設立されたことにより、マランゲで操業するダイヤモンド採掘企業5社は、地元の住民を支援するため、5年間、それぞれ1,000万米ドルを拠出することを約束しました。

それから4年が過ぎましたが、拠出されたのは、たった40万米ドルです。

そのような政策の基本方針は、2010年に設けられた規制によるものです。それによれば、企業活動により天然資源を奪われている地域社会は、その利益の一部を保証されなければならないとしています。

マランゲでダイヤモンド採掘をしているのは、アンジン・インベストメンツ社(Anjin Investments)、ダイヤモンド・マイニング・コーポレーション社(Diamond Mining Corporation)、ジンアン・マイニング社(Jinan Mining)、マランゲ・リソーシーズ社(Marange Resources)、ムバダ・ダイヤモンズ社(Mbada Diamonds)の5社です。

調査団体グローバル・ウィットネス(Global Witness)の2012年の報告書によれば、この5社の所有権はあいまいで不透明です。

グローバル・ウィットネスによれば、ムバダ・ダイヤモンズ社の資金の一部が、ムガベ大統領の元個人付きパイロットとされる人物に関係のある企業へ渡ったとき、アンジン・インベストメンツ社の経営陣が、政府軍や警察から呼び出されたと言われています。

2008年、政府が違法なダイヤモンド採掘労働者や密輸業者に対する取り締まりを開始し、死者が200人にも上った際には、マランゲは国際的なニュースに大きく取り上げられました。2009年に公式の採掘が始まったあとも、採掘現場に潜り込むところで捕らえられた違法な採掘労働者に対する暴力の報告が続きました。

2014年、政府は業界の透明性や説明責任を向上させる取り組みとして、ジンバブエの全ダイヤモンド採掘企業をジンバブエ合併ダイヤモンド社(Zimbabwe Consolidated Diamond Company)という1つの組織に統合することを発表しました。合併は今年完了するものと見込まれています。

政府は新会社の50%の株式を保有し、残りの半分は民間のダイヤモンド採掘企業の間で分配されます。

アンジン・インベストメンツ社の役員であるムンヤラジ・マチャチャ氏は、トムソン・ロイター財団に対し、ジムンヤ‐マランゲ基金に関する問題はジンバブエの鉱業相ウォルター・チダクワが担当していると伝えています。

彼は「私達は国会の前に集まり、ダイヤモンド採掘企業として問題をはっきりさせました」と述べています。

昨年、国会の委員会において、採掘企業はジムンヤ‐マランゲ基金に5000万米ドルを拠出すると誓約したことはないと主張しました。彼らの主張によれば、この合意は口頭によるもので、書面による契約書はないということです。

破られた約束

ダイヤモンドの専門家であるジェームス・ムプフミ氏は、採掘企業は「現地化」並びに経済自立化法の抜け穴をうまく利用していると指摘しています。

ムタレに拠点をおく独立研究開発センター長である彼はこう続けます。「採掘企業が同基金に拠出する義務はありません。支出しないことを選択することもできるのです。ルールは不明確でいくら拠出するかは、企業次第で決められることなのです。」

しかし、国営テレビで放送された国会の質疑応答セッションの中で、鉱業相は、ダイヤモンド採掘企業の合併が同基金の運用に支障をきたすことはないと述べています。統合された新会社は各々の採掘企業の資産と負債を引き継ぎ、約束を守らなければならないと彼は説明しました。

彼は「今回の合併プロセスによって、同基金設立の際に確認された約束が破棄されることはないことを、住民のみなさまに保証したい」と伝えました。

ムプフミ氏は、マランゲで営業する採掘企業に対する独立した監査の実施と所有権の全面開示のために、採掘活動の一時停止を求めています。

彼は「ジムンヤ‐マランゲ基金のような、透明性と説明責任を保証し、利益を引き出すしくみをもつ政策は、これまでダイヤモンド業界において制定されたことはありません」と主張しています。

※本記事は米国メディア「Voice of America」ホームページに掲載された記事をDFPにて翻訳したものです。

原文:「Surrounded by Diamonds, Villagers Go Hungry in Drought-hit Zimbabwe」(2016年7月11日閲覧)
http://www.voanews.com/content/zimbabwe-diamonds/3181760.html

*漂砂鉱床とは、地上に噴出した火山床の中に含まれていたダイヤモンドが、風化・浸蝕により河川とともに流出、流域の砂れき中に堆積し、河床や鉱床を作り、また一度海に流出したものが、再び海岸に打ち寄せられて、海岸沖積層にダイヤモンド鉱床となったもの。詳細は、以下をご参照くだい。
http://diamondsforpeace.org/environmental-destruction/

冒頭写真(イメージ):食糧配給を待つジンバブエの人々(Getty Images)

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