恐怖はいかに生活に影響を与えるか? ~本当にあった身の上話~

執筆:DFPリベリアスタッフ

リベリアの内戦が始まったのは、1989年でした。市民は戦火を避けるために、避難場所を探し家から逃れました。コリー氏とその妻、6人の子ども達は、リベリアの地方都市の一つであるカカタに避難場所を見つけました。カカタは、チャールズ・テイラー(当時は反政府武装組織のリーダー、後に大統領となる)の率いる武装勢力にすでに占領されており、戦闘は市内では抑えられていました。しかし、至る所で銃声が聞こえるので、誰もが何かがいつでも起こりうると恐れており、人々は常に警戒していました。

カカタでのある夜、コリー家の息子の一人ミラーが狭い部屋の中から押し出され、家の外に出てしまいました。母親はミラーを追いましたが、同じく息子を守るために外に出てきたコリー氏は、母親が外に出たことに気づいていませんでした。辺りは非常に暗かったので、ほとんど何も見えませんでした。母親が布で首まですっぽり覆い、家の中に入ろうとした時、コリー氏は家の玄関に立ち、「お前は誰だ?」と叫びました。コリー氏の声は、恐怖で震えていました。その声を聞いた母親は、抑えられない恐怖の中、少しでも早く家に入ろうとドアを目がけて一直線に走りました。母親は、コリー氏が、彼女の後ろに何か恐ろしいものを見たのではないかと思ったのです。しかし、驚くべきことに夫にとって、彼女こそがその恐ろしいものだったのです。

母親が戸口に着いた時、コリー氏は力の限り、母親が家に入ってくることに抵抗しました。彼らは互いに泣き叫んでいました。母親が家の中に入ろうともがいている時に、コリー氏は力強くドアの前に立って母親が家に入ることを阻止していました。コリー氏は、「お前は中に入って子ども達を殺したいんだろう?そうはさせない。まずは俺を殺すことだ!」と言いました。すると母親は、「どうして私にこんなことをするの?中に入れてちょうだい!」と叫び続けました。彼らは動転していました。恐怖があまりにも大きかったため、お互いの声すら認識できなかったのです。

騒ぎの音が家中に伝わり、その内容は違って解釈されました。家中の人々は泣き叫び始めました。「どうか私たちを殺さないで!」「あぁ、神様私達を憐れんでください。助けてください」近隣の人々もその泣き声を聞きつけて家から逃げ出し、「私たちが次に殺される家族なのだろう」と言いました。かなりの間、騒ぎが続いた後、夫と妻はようやくお互いが分かりました。

おかしいでしょう?皆思わず笑ってしまいました。

冒頭写真:この恐怖の話をするリベリアの男性(DFPリベリア撮影)