ジャーナリストへの起訴取り消しを求めるアンゴラ大統領への公開書簡に関する声明

2015年6月14日

アンゴラのジャーナリスト、ラファエル・マルケス・デ・モライス氏への告訴取り消しを求め、欧米の著名人及び日本の特定非営利活動法人ダイヤモンド・フォー・ピースが署名した公開書簡の件について、当法人は以下のとおり声明を発表します。

アンゴラのジャーナリストであるラファエル・マルケス・デ・モライス氏は2009年から2011年にかけ、アンゴラの主要ダイヤモンド採掘地域における人権侵害の事実を明らかにするため、聞き取りを主とする現地調査を実施しました。アンゴラ当局による調査結果やメモの押収等の嫌がらせを乗り越え、2011年にポルトガルで書籍『ブラッド・ダイヤモンド~アンゴラの腐敗と拷問』(日本語版未発表)を出版しました。同書籍の中で、モライス氏はダイヤモンド採掘地域における500件の拷問と100件以上の殺人事件を明らかにし、それらは腐敗した政府高官たちによる組織的犯行であると述べています。

同書籍出版後、モライス氏は拷問や殺人の責任者として考えられる9名の将官と警備会社経営陣をアンゴラ国内で提訴し、政府による詳細な調査を求めました。しかしアンゴラの司法長官は、同件の処理を延期しています。

一方、被告とされた将官及び企業経営者たちは、モライス氏及び出版社を名誉毀損等の罪で、まずポルトガルにおいて提訴しました。ポルトガルの裁判所は証拠不十分として同件を棄却しています。この結果を不服とする原告たちは場所を変え、次にアンゴラの裁判所でモライス氏を名誉毀損等9つの罪で提訴しました。モライス氏は裁判で証人を呼ぶことも証拠を提示することも許されず、懲役6か月執行猶予2年の判決を2015年5月28日に言い渡されました(モライス氏は上訴予定)。

この不公平な判決を受け、言論の自由を促進する活動を実施している非営利団体インデックス・オン・センサーシップ(本部イギリス)が、アンゴラ大統領宛にモライス氏への告訴を取り下げるよう求める公開書簡を企画し、欧米の著名人や企業・団体等70以上の署名を集め、6月4日に在ロンドンのアンゴラ大使館に届けました。日本からは、ダイヤモンドに関わる課題の啓発や、貧困に苦しむ零細ダイヤモンド採掘労働者を支援する当法人がオンライン署名をしています。(公開書簡の内容は、こちらをご覧ください。)

今回の件に関する当法人の主張は以下のとおりです:

1) ポルトガルの裁判所で証拠不十分として一度棄却されていることから、アンゴラでの裁判は不要であると考えます。アンゴラ政府は直ちにモライス氏への提訴及び有罪判決を取り消すべきです。

2)アンゴラの裁判は、被告であるモライス氏が証拠を提示できず、証人を呼ぶことも許可されないまま有罪判決が下された、不公平な裁判です。もしこのまま裁判が継続される場合、公平公正な裁判が行われることをアンゴラ大統領は保証すべきであると考えます。

世界人権規約には、第十四条「1 すべての者は、裁判所の前に平等とする。すべての者は、その刑事上の罪の決定又は民事上の権利及び義務の争いについての決定のため、法律で設置された、権限のある、独立の、かつ、公平な裁判所による公正な公開審理を受ける権利を有する。[i]」との条文があり、アンゴラ政府は1992年に同規約に加入[ii]していることから、同規約の定めを守る必要があります。

3)今回の公開書簡により、国際社会がアンゴラのダイヤモンド採掘地域における人権侵害、言論の自由、出版の自由の動向を注視していることを、アンゴラ大統領及び政府は認識すべきです。公開書簡の内容をアンゴラ大統領が無視する場合、国際社会はさらなる手を打つでしょう。

4)モライス氏は書籍『ブラッド・ダイヤモンド』の中で、主に2009年から2011年の間に起こった殺人や拷問事例を明らかにしました[iii]。紛争ダイヤモンド原石の流通を予防する目的で設立されたキンバリープロセス認証制度は、アンゴラ産のダイヤモンドを2004年から認証しています[iv]。つまり、2009年から2011年の間に殺人や拷問を経て採掘されたダイヤモンドが、正規の流通ルートでダイヤモンド市場に流通していることを意味します。日本は世界第4位のダイヤモンド消費国であり、今回の件も他人事ではありません。日本の消費者及びダイヤモンド関連企業は、ダイヤモンド産出国で起こっている人権侵害等の問題やキンバリープロセスの限界を知り、改善のための手立てを講じるべきであると考えます。

当法人は、すべてのダイヤモンドが人道・環境配慮の上、採掘・カット・製造されることが当たり前の社会をめざし、2014年に活動を開始しました。

この目的の達成のため、今後もダイヤモンドに関する問題等について、積極的に発信して参る予定です。

2015年6月14日

特定非営利活動法人ダイヤモンド・フォー・ピース
代表理事 村上千恵

写真:裁判を受けるモライス氏(Maka Angola)

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[i] 外務省、2015年3月、「市民的及び政治的権利に関する国際規約(B規約)」
http://www.mofa.go.jp/mofaj/gaiko/kiyaku/2c_004.html(2015年6月14日閲覧)
[ii] 外務省、2015年3月、「市民的及び政治的権利に関する国際規約」
http://www.mofa.go.jp/mofaj/gaiko/kiyaku/2c_001_1.html(2015年6月14日閲覧)
[iii] モライス氏が書籍の中で詳細を明らかにしたのは、証拠として十分な情報を入手できた件のみであり、人権侵害が2009年から2011年の間にだけ行われたという意味ではありません。モライス氏は書籍の中で、アンゴラの暴力と腐敗の歴史は1912年にさかのぼり、書籍の中で明らかにした事件は氷山の一角であると述べています。
[iv] キンバリープロセス、”Angola”
http://www.kimberleyprocess.com/en/angola (2015年6月14日閲覧)

<関連記事>
* ジャーナリストへの起訴を取り下げることを要請するアンゴラ大統領への公開書簡に、スティーブ・マックイーン等が署名(2015年6月2日 インデックス・オン・センサーシップ)
* アンゴラ人ジャーナリストに懲役2年執行猶予6か月の判決ー共同書簡:ラファエル・マルケス・デ・モライス氏への不当起訴について(2015年5月28日 ヴィッキー・ベイカー インデックス・オン・センサーシップ)
* 「私を収監することは出来るが、黙らせることは出来ない」(2015年5月27日 レイチェル・ジョリー インデックス・オン・センサーシップ)
* アンゴラのダイヤモンド採掘における人権侵害vol.1  (2015年3月23日 ガーディアン)
* アンゴラのダイヤモンド採掘における人権侵害vol.2 (2015年3月25日 ガーディアン)

 

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