リベリア金鉱山の崩落事故

ダイヤモンド・フォー・ピースからのお知らせ

ダイヤモンド・フォー・ピースは、シカゴ・レスポンシブル・ジュエリー・カンファレンス(CRJC)と共同で本事故の遺族への支援を行う予定です。募金活動も行いますので、ご協力・ご支援いただけましたら幸いです。詳細が決まり次第、本ウェブサイト、Facebookページ、メールマガジンでお知らせします。


以下は当団体のリベリア人スタッフによる記事です。

2019年の2月10日、悲惨な事故が起きました。リベリア共和国ニンバ州のカルティ金鉱山(Kartee Gold Mine)が崩落し、採掘労働者が生き埋めになってしまったのです。

手掘りダイヤモンドと金の採掘産業は、何万人ものリベリア人の生計と、その子どもの教育を支えています。 しかし、多くの採掘労働者が採掘権を持たずに、違法な採掘に従事しているのも事実です。少なくとも40人の犠牲者を出してしまった今回の事故は、違法な金の採掘により過度に深く掘り下げられた結果、鉱山が崩壊したと考えられています。

カルティ金鉱山はニンバ州タペタ近くにあります
(e-maps.comよりDFP作成)

現地のニュー・ドーン新聞が収集した情報によれば、カルティ金鉱山は事件が起きるずっと前から「死の落とし穴」とささやかれていました。地元当局の報告によれば、このような危険性のために以前、閉鎖を試みたと言います。

しかし、貧困が広がっている地域では、依然として多くの採掘労働者が、死の危険を冒してでも、違法な採掘に従事し続けています。地元当局からの鉱山労働者への退去指示も無視されてきました。報道によれば、違法採掘労働者は、鉱山で短銃を発砲し、州の治安部隊がこの地域に配備されることを防いだとのことでした。(ニュー・ドーン新聞2019年2月13日より)

採掘労働者たちが素手で生存者と遺体を探す様子
(ニュー・ドーン新聞2019年2月13日より)

事故の後、この地域の伝統的な長老たちは、状況を収拾しさらなる死を防ぐため、その地域に悪魔として伝わる伝統的な仮面の踊り手を配置し、事態の鎮静化を図りました。(ニュー・ドーン新聞2019年2月13日より)

この踊る仮面の悪魔は、伝統的な法執行者として、地域の問題を処理するための権限をリベリア中央政府によって与えられています。リベリアには「ポロ」と言う特定の部族の男性によって構成される結社があり、この悪魔はその儀式に登場することで広く知られています。そして、法律と秩序を回復するために危険で無法な時代にしばしば登場するのです。

この仮面の悪魔は、地域の問題と部族の問題について認められている規範に従って調査を行い、審判を下します。人々は、その判断を信じ言うことやすること以上に、悪魔の反応を恐れています。仮面の悪魔は、強硬で直面するのはとても危険だからです。悪魔はたとえ何をしても法で裁かれることはなく、それどころか悪魔の故郷と考えられている伝統的な結社の中でのみ裁かれることが可能なのです。実際、その結社の問題に立ち入ることができるのは結社のメンバーだけです。仮面の悪魔と問題を抱えているとき、メンバーでない人々は、他の場所で救済を求めることができないため、この悪魔のとの問に起こったことを忘れるしかないのです。これらのことから、人々はこの悪魔と問題が起きないように努力をします。

崩落事故後、それを取り上げたラジオ番組に電話し、40人の犠牲者に遺憾の意を表明し、お悔やみを伝えるリスナーもいました。国内で採掘権を持たず違法に操業しているすべての採掘現場を閉鎖することを中央政府に勧告すると聞いた人たちもいました。しかし、違法採掘現場を閉鎖することは正しい解決策ではないと考える人もおり、むしろ、鉱山労働者が政府の規制に従ってきちんと採掘作業を行うことができるシステムを整備するよう政府に求めるべきだとの声もあります。

崩壊事故の遺族を支援するため、政府と地元の人道組織にも要請がありました。多くの労働者が金鉱山に殺到し採掘権を持たずに違法採掘を行ったことが事故原因と確認されて以来、ある政治家は、すべての違法採掘現場を閉鎖することを勧めています。採掘権を入手せず勝手に採掘する違法採掘の問題は、採掘労働者の命への脅威となり、同時に政府の税収を奪っているため、政治家はリベリア政府が違法採掘について「緊急事態宣言」をする必要性を訴えています。違法採掘は国家の大きな課題であり、速やかに政府が採掘労働者に対して適切な処遇をしなければなりません。彼らに起こる、別の悲劇を待っている余裕は無いのです。

事故の後、地元のラジオ局は繰り返しそのニュースを報道しました。2019年2月12日火曜日の早朝、このニュースを初めて聞いた私の妻は、ショックと悲しみに満ちていました。彼女は鉱山に行ったことがないので、なぜそのような事故が起きたのか、そしてなぜ採掘労働者達が自分の身を危険にさらさなければならなかったのか、疑問に思い始めました。 一方、私はいろいろな鉱山を何度も訪れていたため、その知らせを聞いてすぐに、採掘労働者のおかれた状況が思い浮かびました。採掘労働者たちは、日々の糧を得る中で死んでいったのです。私たちは、違法な採掘と犠牲者への哀悼で複雑な気持ちでしたが、犠牲者が違法な採掘に関わっていたかどうかではなく、失われた命の重さを考え、こういうことが再び起こらないよう、行動を起こす必要があると考えています。

この事故は、ダイヤモンド・フォー・ピースのリベリア法人のあるマギビ州のカカタにおいても、あらゆる街角やフォーラムセンターなどで人々の会話に上りました。

人々はこの事故について、さまざまな見解を持っており、中には、犠牲者は自分たちの命を軽視していたと考える人もいました。また、貧困は想像以上に人々の行動に影響を与えることがあり、仕方ないと考える人もいました。危険な採掘に関わったことがあるが、今生きていて幸運だと言う人もいました。しかし、さまざまな意見に関係なく、誰もが悲しみを感じ、崩落事故について悔やんでいました。

政府と、Arcelor Mitta Liberia、Abi Jourdi Super Market、Bea Mountain Gold Mining Company、Fouta Corporationなどの民間企業が、この崩落事故への緊急対応として、事故のあった鉱山地域の住民と遺族に救援物資を寄付しました。リベリア大統領ジョージ・ウェアは2019年2月18日に国として喪に服すことを決め、事故の犠牲者を悼む日としました。鉱山の崩壊は、すべてのリベリア人の心に傷を残しています。大統領は全国民に、犠牲者たちを追悼しその遺族のことを思い誠意を尽くそうと呼びかけました。

貧困は、多くの無謀な行動を生み出します。自分たちが生き残る手段を見つけるため、人々は自分の命に気を配りません。貧困のために、命の危険を冒すこともあるのです。崩落事故が、違法な採掘の結果として起こったのは事実ですが、人々は極度の困窮状態にあり、彼らの行動は生計を立てるための結果だったと考えています。

 

冒頭写真:崩落事故の起きる前のカルティ金鉱山(『INQUIRER Newspaper』2019年2月14日より)