ヨーロッパの紛争鉱物 ~死の貿易を助長するEUをとめろ~

【2016年11月3日(グローバル・ウィットネス)】

2016年6月、欧州連合(EU)は数年に渡る交渉の末に、鉱物の貿易と紛争、人権侵害とのつながりを断ち切るための新しい規制について、政治的な合意にこぎつけました。すでに類似した法律を定めている米国やアフリカの数ヵ国に遅れをとり、EUはようやく正しい方向に向かって歩み始めました。

長年、グローバル・ウィットネスと市民組織は、強固で拘束力のある法律を求めて運動を続けてきました。これで初めて、EUにある多くの企業に、責任を持って鉱物の輸入経路を明らかにすることが求められます。ようやくEUは改善に向けての重要な一歩を踏み出しましたが、これはまだ最初の一歩に過ぎません。

コロンビアやメキシコの丘陵や河川、または中央アフリカ共和国コンゴ民主共和国の採掘場などで行われる鉱物の採掘や貿易は、紛争や人権侵害と関連があるとされてきました。世界最大の市場であるEUは、世界的な鉱物の輸出入を担っており、この業界において善を促進する力を持つ可能性と責任のある立場にいます。

現在EUは、積極的に多くの企業へ知らせを送っており、これらの企業のサプライチェーンが、紛争や人権侵害に加担していないか確認するよう求める予定です。これらの企業は、いやいや従ったり抜け穴を見つけたりするのではなく、より透明性を重視し、責任を持って資源調達をするよう求められます。

とは言え、これまでもEUは、このように踏み込んだ活動をすることは可能であったでしょうし、そうすべきでした。残念ながら、EUの法律が監視できるのは一握りの鉱物(スズ、タンタル、タングステン、金)だけで、ダイヤモンドや、その他の貴重な鉱物などの高価な資源は、同様の方法でチェックされません。新しい法律では、EUに鉱物・原石を輸入している企業に、それらのサプライチェーンが武装グループの資金作りや人権侵害に加担していないかどうかをチェックすることだけを義務付けています。そのため、携帯電話や自動車などの部品や製品として同様の鉱物を持ち込む会社は、法をかいくぐることができてしまいます。

それでもEUは、すべてのEU内の企業が、私たちの生活になくてはならない資源の輸入経路を明らかにすることについて、より責任を感じているのだということを証明しなくてはなりません。EUは、EU外の企業の望ましい変革に対して、その商業的影響力を十分に発揮できていません。EUは責任を持って生産された製品のための市場であり、「あなたが言わなければ、私たちからは尋ねません。」というマントラ(真言)の元で作られた製品を持ち込むための市場ではないということを、明らかにすべきでした。この立場は、2015年に欧州議会が票決した内容に反しています。それは、EUに鉱物を持ち込む全ての企業に対して実施できる、強い拘束力のある紛争鉱物に関する法律でした。

その票決には、150の宗教家、国際投資家、中小企業、ビジネスリーダーが賛同しました。何十万ものヨーロッパ市民と共に、150以上の国際的な市民活動グループもこの変革のための呼びかけに加わりました。EUにおける最も名誉な人権に関する賞(サハロフ賞)を受賞したデニス・ムクウェゲ博士もまた、2015年にこの賞を受賞した際に、強い強制力のある法律の必要性について言及しました。

「資源調達に責任を持つという公約が、ヨーロッパに紛争鉱物を持ち込む可能性がある全てのビジネスに強制的に課せられるべきです。そうでなければ、現在議論となっている法令は、貿易を一掃するための世界的な試みをいつの間にか侵害してしまうことになります。」-デニス・ムクウェゲ博士、欧州連合における最も著名な人権に関する賞(サハロフ賞)の受賞者。

今後の流れ

全ての企業には、自分たちのサプライチェーンが、透明性、持続性、責任を持っているかどうかについての責務があることは言うまでもありません。究極的には、企業が自身を規制できるかどうかについての疑問は残るものの、EUは企業の大半が独自の協定の元、責任を持って振る舞うことを信じることに決めたということです。この信頼関係が本当に成就するかどうかは、企業や政策立案者にかかっています。

EUが企業に向けて送っている、法律がカバーできない複雑なメッセージを明らかにすること、そして、企業が責任を持って資源調達する動きは今後も期待され、求められているということを明らかにするため、断固とした態度で臨まなければなりません。これに応じない会社がビジネスを遂行し、不透明で無責任な鉱物貿易のせいで生活が脅かさせる人々がいるにもかかわらず、それを法律で改善することができなければ、別の決定が成されなければなりません。「仮に、これが事実起こっていることであれば、さらなる法的処置を取るし、これが本当に起こっている事実だと確信するため、我々はパートナーたちと活動していくことになるだろう」と、EUは宣言しました。

 

※本記事は英国のNGO「global witness」のホームページに掲載されたものを許諾の上、DFPが翻訳しました。
原文「CONFLICT MINERALS IN EUROPE Stop the EU supporting a Deadly Trade.」
https://www.globalwitness.org/en/campaigns/conflict-minerals/conflict-minerals-europe-brief/ (2017年5月31日閲覧)
冒頭写真:欧州議会本会議場